大菩薩嶺(だいぼさつれい)とは

大菩薩嶺は山梨県北西部に位置する日本百名山の一つに数えられた標高2,057mで、大菩薩連嶺の最高峰です。関東からは中央高速道路やJR中央線でのアクセスが大変良好です。

残念ながら大菩薩嶺山頂は樹林帯の中にあり展望がありません。しかし、雷岩と大菩薩峠の間は、富士山や南アルプスを眺める明るい草尾根の山稜で、初夏から初秋にかけてレンゲツツジ、シモツケ、ヤナギラン、マツムシソウ、ハコネギクなどの亜高山帯に咲く花が美しいです。

大菩薩峠

大菩薩嶺山頂近くの雷岩と大菩薩峠間の稜線が大変展望がよくこのコースの醍醐味です。 上日川峠から大菩薩嶺、大菩薩峠と巡って上日川峠に戻る周回コースが一般で難所は無く、コースタイムも3時間20分と短い為、登山初心者向きハイキングコースと言えます。

また、上日川峠から大菩薩峠・大菩薩嶺の周回コースではあまりにあっけないので、丸川峠を経由するルートか、石丸峠を経て上日川峠へ戻るルートがお薦めです。

青梅往還

大菩薩峠は大菩薩嶺山頂から稜線を南に約2キロ下った標高1,898mの鞍部にあります。旧峠は現在の賽の河原の位置にあったようです。江戸時代には甲州から大菩薩峠を越え、武州多摩郡の青梅を経由して江戸とを結ぶ重要な道、青梅往還がありました。

青梅往還は甲州裏街道とも呼ばれ、大菩薩峠の難所越えがあるにもかかわらず、関所がなかったことで、貧者、渡世人、犯罪者などにとって都合が良く、それなりに賑わっていたようで、甲州街道の補完的な役割を果たしていました。

中里介山の小説「大菩薩峠」

大菩薩峠の名前は介山の小説によって多くの人々に知られています。「大菩薩峠は江戸を西に距る三十里、甲州裏街道が甲斐国東山梨郡萩原村に入って、その最も高く最も険しきところ・・・」と冒頭の一節に出てきます。全20巻の大作で、それでも未完とのことです。

話の内容は読み進むにつれて次第に大菩薩峠からずれて行きます。机竜之介という剣士が主人公で、幕末の江戸や京都が舞台になっています。仏教思想に基づいて人間界の業を描こうとしたものです。

大菩薩嶺登山口の駐車場とアクセス

マイカーでのアクセス

中央高速の勝沼ICまたは大月ICから1時間ほど車を走らせれば、 登山口となる標高1,580mの上日川峠(かみにちかわとうげ)へ到着です。登山口には約120台駐車可能な無料駐車場や公衆トイレが完備しています。

塩山廻りの場合、勝沼IC~裂石間の市街地を20分位、裂石~上日川峠の山道(県道7m道路)を25分位です。 大和廻りの場合、勝沼ICまたは大月ICから国道20号を15分位、山道(県道9m道路)を35分位で上日川峠に着きます。

冬季には上日川峠に通じる県道が閉鎖されてしまいます(12月中旬~4月初旬)。その為、登山口は裂石(大菩薩峠登山口)から少し上がった所となります。駐車スペースにはひがし荘の上に15台、ゲート前に15台の合計30台台ほどが駐車可能です。

路線バスなどアクセスの詳細は下記を参照してください。

大菩薩嶺
大菩薩嶺のアクセスと駐車場
大菩薩嶺のアクセスと駐車場

大菩薩嶺の地図

大菩薩嶺の登山コース概要

① 大菩薩嶺-上日川峠から大菩薩峠コース

大菩薩峠
大菩薩峠

標高1580mの上日川峠(かみにちかわとうげ)まで車道が通じていて、JR塩山駅から裂石に路線バスがあり、期間限定で裂石(大菩薩峠登山口)⇔上日川峠間を乗り合いタクシーが運行されます。 また、甲斐大和駅⇔上日川峠間には定期バスが走ります。
マイカーの場合には上日川峠に、120台ほどの駐車が可能な無料駐車場に車を止め出発です。

上日川峠にあるロッジ長兵衛の脇から登山道がスタートします。
無料駐車場脇のトイレを右に見送り、樹林帯の中に入ります。上日川峠登山口から25分ほど登ると標高1,700mの地点にある福ちゃん荘に到着します。
(上日川峠から福ちゃん荘まで、車道が登山道と並走し、タクシーは入ることができます。※福ちゃん荘で昼食を取れば福ちゃん荘の駐車場にマイカーを停める事が出来ます。)

福ちゃん荘前にある大菩薩嶺と大菩薩峠への分岐を左に進路をとります。 大菩薩嶺へは唐松尾根を登り、しばらく樹林帯の中の単調な登りが続きます。
樹林帯を抜けると展望が開け、辺りは草原が広がり、大菩薩嶺から大菩薩峠へ連なる稜線が見えてきます。山頂まではもう少しで、振り返と大菩薩湖が見えています。 大菩薩嶺山頂近くの雷岩を過ぎ、樹林帯の中の平坦な道を5分ほど行った所が、大菩薩嶺山頂です。しかし、展望はありません。 大菩薩嶺山頂から雷岩まで戻り、大菩薩峠に向け視界の開けた稜線上を下っていきます。 この辺りがこのコースの最も良いところです。

雷岩の先に、富士見新道方面への分岐があります。富士見新道ルートは荒れていて登山には不向きです。また増水時には下流の川を渡るのが困難です。 賽ノ河原にある避難小屋を過ぎると、間もなくして大菩薩峠にある介山荘に着きます。介山荘は公衆トイレがあり、お土産や昼食などのサービスがあります。介山荘からは車も通れる広い道を下り、富士見山荘を左に見送ると福ちゃん荘に戻ります。

コースタイム

  • 一周:上日川峠⇒大菩薩嶺⇒大菩薩峠⇒上日川峠 3時間20分

難易度 1/10

体力  1/10  日帰り

② 冬の大菩薩嶺コース

冬の大菩薩峠
冬の大菩薩峠

冬季の大菩薩嶺のルートは雪山登山初心者向けで、ピッケルの必要な場所はありません。 登山道はアイスバーンになっている箇所が多く、6本歯以上のアイゼンがお勧めです。

冬季は上日川峠へ通じる二つの県道(県道大菩薩嶺塩山停車場線、県道上日川峠嵯峨塩線)が共に通行止めになる為、登山口は裂石(大菩薩峠登山口)となります。 裂石のバス停には冬季でも塩山駅から路線バスが有ります。

裂石のバス停で、青梅街道から分岐して右に行く車道に入ります。少し入ると武田信玄ゆかりの名刹・雲峰寺の参道を左手に分け、人家を過ぎて山腹を15分ほど登った所に15台ほどの駐車場と、さらに10分ほど登った丸川峠分岐のゲート前に15台ほどの駐車場があります。

丸川峠分岐駐車場にマイカーを停め、ゲートを抜け車道を進みます。ゲートから千石茶屋まで約15分です。冬季は千石茶屋は営業していません。千石茶屋から林道を進み、登山道へ入ります。千石茶屋から上日川峠まで難所は無く、約1時間30分の行程です。

上日川峠には通年営業のロッジ長兵荘が建ち、近くには冬季でも使用できる公衆トイレがあり、女性も安心です。

上日川峠から通年営業の福ちゃん荘まで林道を歩きます。福ちゃん荘の近くには公衆トイレがあり、冬季も使用できます。

福ちゃん荘から林道を進むと大菩薩峠が見えてきます。富士見山荘を右手に見送り、樹林帯の登りになります。比較的なだらかな登りが大菩薩峠まで続きます。

標高1,900mの大菩薩峠には通年営業の介山荘が建ち、近くには公衆トイレ がありますが、冬季は使用できません。

大菩薩峠から大菩薩嶺に伸びる稜線は、完全に展望が開け、このルート上で最も楽しい所です。しかし、冬季には冬型が強まると、強風が吹き荒れ体感温度が著しく低下します。 冬山登山初心者向けコースですが、防寒対策はしっかりする必要があります。

雷岩を越えると樹林帯へ入ります。雷岩から約10分で大菩薩嶺の山頂です。山頂からの展望は無い為、少し休憩して丸川峠に下山します。丸川峠へ下る登山道は北面のため、多くの雪が残りますが、難所はありません。

丸川峠には丸川荘が建ち、冬季も営業している日があります。丸川峠から急坂を下れば、登山口の駐車場に戻ります。

コースタイム

  • 一周: 裂石(大菩薩峠登山口)⇒大菩薩峠⇒大菩薩嶺⇒丸川峠⇒裂石(大菩薩峠登山口) 6時間30分

難易度 1/10

体力  2/10 日帰り

大菩薩嶺の日帰り登山は出来る?

上日川峠登山口から大菩薩嶺に登り大菩薩峠経由で上日川峠に戻る周回コースのコースタイムは3時間20分です。また、裂石登山口(大菩薩峠登山口)から大菩薩峠、大菩薩嶺、丸川峠を経由して周回し裂石登山口(大菩薩峠登山口)へ戻るルートであってもコースタイムは6時間30分です。

従って、どちらのコースであっても余裕で日帰りが出来ます。

大菩薩嶺の登山口近くの温泉

武田信玄の隠し湯と知られる川浦温泉山県館です。川浦温泉山県館は甲州の 笛吹川の上流に佇む一軒宿です。源泉はアルカリ単純泉で、加温加水一切無し源泉100%かけ流し温泉です。

川浦温泉山県館

  • 温泉の特徴:泉温43.6℃ 泉質PH9.5 アルカリ性単純泉、 効能は、 神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺、関節のこわばり、うちみ、くじき、慢性消化器病、痔疾、冷え性、病後回復期、疲労回復、健康増進など。

日帰り入浴

料金:大人 1,500円(税込) / 子供 800円(税込)

入浴時間:11:00~15:00(※14:00受付終了) / 年中無休
(混雑時は日帰り入浴の営業を中止する場合あり)

大菩薩嶺の天気

山の天気予報は難しい
山の天気予報は難しい

お薦めの天気予報

テレビで流れる天気予報やネットで得られる無料の天気予報は、一般的に平地を対象としたものです。 そのため、晴れの天気予報が出ていても、山ではガスってしまうことはよくあることです。 

そこで、おすすめなのがtenki.jpの有料バージョン(+more)です。これは、月間100円と安いですが、高層天気の予報のため精度が高いです。また、山の天気予報(月額300円)を併用すると更に精度が高まります。

各種情報

大菩薩嶺登山ツアー

  • 大菩薩嶺|登山・トレッキングツアー

お問い合わせ

登山届提出

  • 山梨県警察 お問い合わせ:山梨県警察本部地域課
    住所:〒400-8586 甲府市丸の内1-6-1
    電話番号:055(221)0110(代表)郵送、電子メール、ファックスなので提出可能です。

登山地図のスマホアプリ

  • 山と高原地図のスマホアプリ
    昭文社から販売されています。山と高原地図ホーダイ - 登山地図ナビアプリ 定額(500円/月 or 4800円/年)で61エリアの「山と高原地図」が使い放題。山と高原地図[地図単品購入版]地図1エリア 650円。

大菩薩嶺周辺の気温

最高気温平均気温最低気温
1月-0.9-7.1-12.1
2月0.5-5.7-10.9
3月4.4-1.9-7.3
4月10.94.0-1.8
5月15.28.53.2
6月17.912.07.5
7月21.415.611.5
8月23.016.612.4
9月18.512.78.6
10月12.36.42.1
11月6.8046-4.6
12月1.6-4.8-9.8

大菩薩嶺登山のための装備と服装

軽アイゼン12本歯アイゼンピッケルサングラスツェルト
1月×
2月×
3月×
4月××
5月××××
6月××××
7月××××
8月××××
9月××××
10月××××
11月××××
12月×
必須:◎ あった方が良い:○ あったら良い:△ 必要ない:× 

武田家滅亡の地

大菩薩嶺の北に聳える鶏冠山の北東に流れる沢に金山がありました。武田信玄の時代最盛期を迎え、大きな鉱山の街が作られていた。おいらん淵・女郎ゴーなどの地名に見るように、何軒もの女郎屋敷が軒を並べていました。

信玄の息子勝頼の代で武田家は滅亡する事になります。滅亡の要因として信玄の時代にほぼ金は堀り尽くされ、資金力の不足もその一つと考えられています。

勝頼は天正10年(西暦1582年)3月に居城新府城に火を放ち、一族と共に日川渓谷上流の天目山を目指し落ち延びようとしたが、追撃軍に追いつかれ、激戦の末自刃しました。

武田の守護神は八幡大菩薩です。天目山は背後に大菩薩嶺が控える地であることから最後の望みを託しこの地を目指したのでしょう。

勝頼は自刃の際、武田家家宝の鎧を2人の家臣に託しましあた。家宝を託された2人は、日川を遡り大菩薩峠から、登山口となる裂石に建つ雲峰寺へ奉納しました。

雲峰寺は奈良時代に行基菩薩によって建立され、信玄の父信虎によって再建された寺で、国の重要文化財に指定されています。

参照;名山の日本史