安達太良山とは
安達太良山(あだたらやま)連峰は、福島県のほぼ中央部で二本松市の西側が位置し、南北に北から鬼面山(標高1,482m) 、箕輪山(標高1,728m) 、鉄山(標高1,709m)、 篭山(標高1,548m) 、矢筈森(標高1,673m)m 、安達太良山(標高1,700m) 、船明神山(標高1,667m)、薬師岳(標高1,322m) 、和尚山(標高1,602m)、 前ヶ岳(標1,340m)の順に、約9kmに渡ってピークが連なっています。
吾妻連峰や磐梯山と相接する火山群で、現在、気象庁が発表する噴火警戒レベル1の活火山です。
安達太良山の遠望は穏やかに見えますが、山頂部は岩稜で覆われ荒々しさがある山です。日本百名山の一つということもあって福島県内では磐梯山と並んで最も登山者の多い山です。
火山のため、周辺には湯量豊富な温泉が湧き、中でも安達太良山山腹の「くろがね温泉」は、乳白色の温泉が湧く山小屋として人気を集めています。
最高峰は箕輪山の標高1,728mですが、主峰とされるのは標高1,700mの安達太良山で、その山頂部の岩稜が、乳首の様な形をしているため別名「乳首山(ちちくびやま)」とも呼ばれています。
- 1. 沼ノ平爆裂火口
- 2. 安達太良山の地図
- 3. 安達太良山のアクセス
- 4. 安達太良山の山小屋
- 5. 安達太良山の登山コース概要
- 5.1. ① あだたら高原スキー場コース
- 5.2. ② 奥岳登山口コース
- 5.3. ③ 横向登山口から箕輪山コース
- 6. 安達太良山の他の登山コース
- 6.1.1. 塩沢温泉登山口
- 6.1.2. 沼尻登山口
- 7. 安達太良山の日帰り登山は出来る?
- 8. 安達太良山の登山口近くの温泉
- 8.1. 野地温泉ホテル
- 8.1.1. アクセス
- 8.1.2. 日帰り入浴
- 8.2. 磐梯西村屋
- 8.2.1. アクセス
- 8.2.2. 日帰り入浴
- 8.3. あだたらの宿扇や
- 8.3.1. アクセス
- 9. 安達太良山の名前の由来
- 10. 安達太良山の天気の特徴
- 11. 各種情報
- 11.1.1. 安達太良山登山ツアー
- 11.1.2. お問い合わせ
- 11.1.3. 登山届提出
- 11.1.4. 登山地図のスマホアプリ
- 11.1.5. 噴火速報アプリ
- 12. 安達太良山山頂周辺の気温
- 13. 安達太良山へ登るための装備と服装
- 14. 服装や装備品のチェックリスト
- 15. 安達太良山の火山の変遷
- 16. 高村光太郎の詩集「智恵子抄」
- 17. 安達太良山の開山の歴史
- 17.1. 相応寺と円東寺の安達太良修験
- 17.2. 安達太良大明神
沼ノ平爆裂火口
安達太良本峰の西側には沼ノ平爆裂火口があり,その広さは直径1,2km、深さ150mに及んでいます。 鉄山、矢筈森、障子岩などの外輪山に囲まれた沼ノ平は、江戸時代前期まで山上湖であったが、何度かにわたり決壊を繰り返し、現在の様な荒涼とした地形になったようです。
安達太良山の地図
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安達太良山のアクセス
安達太良山の山小屋
安達太良山の登山コース概要
① あだたら高原スキー場コース
標高960m地点にあるあだたら高原スキー場のゴンドラ・あだたらエクスプレス(往復2,000円)は標高差380mを6分で薬師岳とを結んでいます。 あだたら山ロープウェイのゴンドラは、4月下旬から11月中旬に観光客用に運行されています(冬季は使用出来ませんので要注意です。冬季には、あだたら高原スキー場のリフトを乗り継ぎ、五葉松平のすぐ下まで登ることは可能です。)。
スキーシーズンには12月末から2月末の全日と3月の金・土・日・月曜日に JR郡山駅からシャトルバスの運行があります。
山頂駅と安達太良山本峰の「乳首」までは、標高差360mと僅か1時間ほどで着いてしまうハイキングコースです。 そのため軽装で登る登山者が多くみられます。ゴンドラリフトを使用しない場合にはあだたら高原スキー場の中を登り、五葉松平から緩く南下すれば薬師岳見晴らし台です。
山頂駅から5分ほどで薬師岳みはらし台に着きます。薬師岳みはらし台からは、ごつごつした安達太良山山頂部が低木帯の先に姿を見せています。 しばらくの区間は木道が整備され、とても歩きやすくなっています。木道が終わるとシャクナゲの混じる低木帯を登ります。仙女平(表登山口)分岐を左に見送り、ゆっくり高度を上げて行きます。安達太良山の本峰「乳首」はすぐ先に見えてきます。山頂部直下は簡単な鎖場となっていますが、登山初心者でも難なくこなせる所です。
山頂は360度の展望で、西方向の磐梯山が良く見えます。山頂から牛の背を矢筈森へ向かいます。アップダウンの少ない稜線は、次第に草木が何一つ生えていない荒涼とした地形となり、矢筈森に到着します。矢筈森から西側に広がる爆裂火口の沼ノ平は、安達太良山の代名詞とも呼べる景観です。
ここからピストンだけではいささか物足らないので、峰の辻を経由し、くろがね小屋の温泉に入り、下山するコースがお勧めです。
コースタイム
- 登山:薬師岳→安達太良山→矢筈森 1時間30分
- 下山:矢筈森→安達太良山→薬師岳 合計:1時間10分
難易度 1/10
体力 1/10 日帰り
② 奥岳登山口コース
5月のゴールデンウィークが終わった7日に奥岳登山口から登りました。くろがね小屋に一泊して8日に山頂を目指しましたが、強風とガスの為、あと山頂まで20分の所(峰の辻)で断念し、下山となりました。登山両日共に強風の為、あだたらエクスプレス(ゴンドラ)は運休していました。本来なら、あだたらやまロープウェイは4月下旬から11月中旬に運行されます。
あだたら高原スキー場駐車場の大駐車にマイカーを停め出発です。 以前は登山口に奥岳温泉があったようですが、東日本大震災により閉鎖となっていました。 しばらく林道歩き、橋を渡ってすぐに 旧道(登山道)と馬車道(ジグザグにゆっくりと登ります)分岐に到着です。馬車道は四輪駆動車なら走れるほどの道です。 樹林帯を抜けると登山道に残雪が出てきましたが、アイゼンを必要とするほどではありません。
勢至平には、くろがね小屋方面と峰の辻に向かうルートが分岐があり、そのまま直進し、くろがね小屋方面へ向かいます。谷の北側をトラバースするように進む辺りからさらに残雪が多くなってきました。
くろがね小屋温泉はカール状の地形の下部にあり、鉄山、馬ノ背を見上げる位置にあります。くろがね小屋の温泉は真っ白い硫黄の温泉で、内風呂のみで男女別です。入浴のみの利用も出来ます。 また、150mほどの所に金明水があります。
くろがね小屋から峰の辻へは約40分の行程です。小ピークの左肩の部分を抜けると、安達太良山の本峰「乳首」が見えてきます。残雪のトラバース地点で、念のため軽アイゼンを装着しましたが、谷側の斜度は緩くピッケルの必要ないようです。
峰の辻から望む安達太良山を後にして、籠山の北西側を通過して下ります。林の中にはまだ多くの残雪がありましたが、下山とともにV字形に削られた登山道には、雪解け水が流れ落ち、ドロドロにぬかるんだ登山道は、大変歩きにくい状態になっています。勢至平分岐からはあだたら高原スキー場まで歩きやすい登山道です。
コースタイム
- 登山:あだたら高原スキー場→安達太良山 2時間30分
- 下山:安達太良山→あだたら高原スキー場 2時間
難易度 1/10
体力 1/10 日帰り
③ 横向登山口から箕輪山コース
標高1050m地点の横向登山口に駐車スペース約3台があります。その少し下流の箕輪スキー場近く国道115号横に約100台の駐車場もあります。 登山口には公共交通機関は無い為マイカーのアクセスのみです。
ただし、箕輪スキー場/ホテルプルミエール箕輪が完全予約制の無料シャトルバスを通年運行しています。冬季と夏季は便数と運行時間が異なりますが、福島駅西口⇔箕輪間及び猪苗代駅⇔箕輪間を走っています。
箕輪スキー場は、スキーシーズンのみ営業されています。リフトに乗ればコースタイムは3分の2ほどに短縮されます。
横向登山口を出発し、箕輪スキー場に沿ってブナ林の中を登ります。樹林帯を抜け背の高い笹の中を進み、灌木帯へと入ります。リフト終点辺りからの登山道は、雪解け水や雨水により深く浸食され荒れています。しかし、通行には支障なく、不明瞭な所もありません。低木帯になると展望が開け、約30分ほどで箕輪山山頂です。箕輪山は安達太良山連峰の最高峰(標高1,728m)です。
山頂からは北の方角に山頂が丸い吾妻山、西方向には磐梯山と2座の百名山が手に取るようです。
前夜泊として横向温泉の「下の湯滝川屋旅館」、「森の旅亭 マウント磐梯」、箕輪スキー場に併設された「プルミエール箕輪」などがあります。
コースタイム
- 登山:横向登山口→箕輪山 2時間00分
- 下山:箕輪山→横向登山口 1時間15分
難易度 1/10
体力 1/10 日帰り
安達太良山の他の登山コース
塩沢温泉登山口
二本松市塩沢スキー場を登山口として湯川渓谷を遡上するルートは、屏風岩近くが絶壁となって滑落の危険があり要注意ですが、三階滝、八幡滝、想恋ノ滝、霧降ノ滝などの滝が次々と現れ、登山者を飽きさせません。
沼尻登山口
沼尻登山口からは白糸の滝や障子ヶ岩、体内岩、沼尻元湯源泉など変化に富んだ周回コースを設定出来ます。
安達太良山の日帰り登山は出来る?
あだたら高原スキー場のロープウェイを使うと安達太良山ピストンで2時間ほどです。ロープウェイを使わなくても奥岳登山口コース周回で5時間弱です。従って、標準的な登山者なら十分日帰り可能です。
安達太良山の登山口近くの温泉
安達太良山は活火山のため、 周辺にたくさんの温泉が湧いています。 代表的なものに中ノ沢温泉、 野地温泉、 岳温泉などです。 湯量豊富なため、ほとんどが 源泉かけ流しになっています。
野地温泉ホテル
「千寿の湯」「鬼面の湯」など6つの趣の異なる湯殿が楽しめて、露天風呂が充実しています。温泉には一切手を加えない100%源泉かけ流し温泉です。
泉質は単純硫黄泉(硫化水素型) 効能はアトピー性皮膚炎、慢性湿疹、抹消循環障害など。
野地温泉登山口にあります。約100台の無料駐車場完備。
アクセス
路線バスはなくマイカーかタクシーでのアクセスです。宿泊すればJR福島駅から無料送迎があり。
日帰り入浴
- 日帰り入浴:【受付開始】10時40分〜 【受付終了】13時
※入浴は受付終了一時間後まで。 - 料金:大人800 / 子供400円
- ※土日祝日の日帰入浴は中止
磐梯西村屋
100%源泉かけ流し温泉です。毎分約13,400リットルの湧出量を誇る源泉は、強酸性の硫黄泉。
露天風呂、檜風呂などに注がれる白い不透明な硫酸塩硫化水素(硫黄泉)の湯は57℃と源泉温度が高いので、温度調節の為に加水してます。
沼尻登山口の近くです。
アクセス
JR猪苗代→中ノ沢温泉 (バス/30分)
日帰り入浴
- 日帰り入浴(10時~15時)
- 料金:大人700 / 子供300円
- 個室休憩:お一人様2,350円(消費税・入湯税込)
あだたらの宿扇や
安達太良山と並びそびえる鉄山の南直下、くろがね小屋の付近の豊富な湧泉地帯から湧き出る天然の温泉を引き湯しています。
pH2.48の酸性泉は、殺菌効果抗生物質が無かった時代、貴重な医療効果をもたらしました。また、美肌効果も期待できる”美人の湯” として知られています。
アクセス
JR二本松駅⇔岳温泉 (バス/25分) 宿泊の場合、二本松駅より無料送迎あり。
安達太良山の名前の由来
峰々を兄弟になぞらえて、安達郡の最高峰を意味する「安達の太郎」が訛って「安達太良」となったとする説や活火山であるこの山が噴煙を上げる姿が昔の製鉄法の溶鉱炉・鞴(ふいご)を意味する「タタラ」にちなんでいるなどとする諸説があります。
安達太良山の天気の特徴
夏の安達太良山は晴天の確率がやや低い
年間気候は比較的涼しくて、特に冬季は寒くなります。雪が多く降り、寒波が来ると非常に厳しい寒さになることもあります。
夏は山頂付近でも摂氏20度前後になることがあります。1日あたり降水量は6月6.9mm、7月9mm、8月9.2mm、9月8.5mmです。
各種情報
安達太良山登山ツアー
- 安達太良山|登山・トレッキングツアー
お問い合わせ
登山届提出
登山地図のスマホアプリ
- 山と高原地図のスマホアプリ
昭文社から販売されています。山と高原地図ホーダイ - 登山地図ナビアプリ 定額(500円/月 or 4800円/年)で61エリアの「山と高原地図」が使い放題。山と高原地図[地図単品購入版]地図1エリア 650円。
噴火速報アプリ
- 噴火速報アラート(スマートフォンアプリ)日本気象株式会社が提供
- Yahoo!防災速報 Yahoo!Japan が提供
安達太良山山頂周辺の気温
最高気温 | 平均気温 | 最低気温 | |
1月 | -3.0 | -7.6 | -11.9 |
2月 | -2.2 | -7.1 | -11.6 |
3月 | 1.6 | -4.0 | -9.0 |
4月 | 8.5 | 2.3 | -3.7 |
5月 | 13.5 | 7.4 | 1.8 |
6月 | 16.4 | 11.0 | 6.5 |
7月 | 19.5 | 14.5 | 10.8 |
8月 | 21.4 | 16.1 | 12.2 |
9月 | 16.6 | 11.8 | 7.7 |
10月 | 11.0 | 5.6 | 0.9 |
11月 | 5.3 | -0.1 | -5.1 |
12月 | 0.0 | -4.8 | -9.3 |
安達太良山へ登るための装備と服装
軽アイゼン | 12本歯アイゼン | ピッケル | サングラス | ツェルト | |
1月 | ◎ | △ | △ | ◎ | ○ |
2月 | ◎ | △ | △ | ◎ | ○ |
3月 | ◎ | △ | △ | ○ | ○ |
4月 | ○ | △ | × | ○ | ○ |
5月 | △ | × | × | △ | △ |
6月 | × | × | × | △ | △ |
7月 | × | × | × | △ | × |
8月 | × | × | × | △ | × |
9月 | × | × | × | △ | × |
10月 | × | × | × | △ | △ |
11月 | × | × | × | △ | ○ |
12月 | ○ | △ | △ | ○ | ○ |
服装や装備品のチェックリスト
登山地図 | 必須 登山地図を忘れると道迷いの原因に!安達太良山は山頂周辺で多くの分岐があります。 登山地図を持って行かないと別の登山口に降りてしまうリスクや命の危険さえあります。 |
レインウェア | 必須 山の天候は急変します。天気予報で晴が出ていてもレインウェアは必須です。 また、防寒着としても使えます。セパレートタイプの通気性と防水性を兼ね備えたゴアテックスがベストです。 |
帽子 | 必須 安達太良山はロープウェイを降りると直射日光が強烈に降り注ぎます。日よけ用のつばが広く軽いものをお奨めします。寒さが厳しいときは、耳を覆うニット製、冬山ではフルフェイスタイプをお奨めします。 |
日焼け止め | 必須 安達太良山は1.700mですが、 山頂周辺の稜線では日光を遮る木々が一切ありません。森林限界を超えると紫外線が強いので必帯です。 |
飲料水 | 必須 天気の良い日は少し多めに持って行きましょう。 水場はくろがね小屋の下に金明水と峰ノ辻にあります。共に水量が太い水場です。 登山行程に合わせて水の量を調整するとよいでしょう。 |
ヘッドランプ | 必須 アクシデントで暗くなってからの行動を強いられた場合には必携です。また、暗い内から山頂まで登り、御来光を拝むためにも必要です。 |
行動食 | 必須 登山のコースタイムはさほど長くありません。パン・ナッツ類・野菜ジュース、飲むヨーグルトなど立ち休憩で食べられるものがお薦めです。 |
パックカバー | 必須 ザックが濡れないようにするためのザックカバーは雨に日には絶対必要です。ザックカバーも雨衣と同様に防水性が衰えてきます。時折、防水スプレーをするなどのメンテナンスが必要です。 |
救急薬品 | 必須 切り傷、擦り傷にカットバン、絆創膏を持っていくと良いでしょう。虫刺され薬品も。トクホンのような筋肉痛に効く貼り薬もあると助かります。 |
ティッシュペーパー | 必須 登山中いきなりしたくなってしまった場合など、止血用などの万が一の時のために必帯です。 |
防寒着 | 必須 薄手のフリース,セーター、軽いダウンジャケット。 安達太良山山頂では、7~8月でも最低気温が11度近くまで下がることがあります。 軽くて保温性の高いものを選びます。ゴアテックスのレインウェアを その上に着ると更に保温性が高まります。 |
手袋 | あったら良い |
耳栓 | 不要 |
カメラ | あったら良い 360度の大パノラマや高山植物、紅葉など山旅の思い出にぜひどうぞ。ウエストポーチに収納出来る大きさであることが望ましいです。 |
ビニール袋 | あったら良い ごみ入れとして、使用前の下着入れ、使用後の下着入れとして3~5個あると便利です。 |
保険証(コピー) | あったら良い 事故や遭難時に必要です。 |
サブザック | 不要 |
シュラフカバー | 不要 |
安達太良山の火山の変遷
明治33年(西暦1900年)の大爆発
明治33年(西暦1900年)に起こった大爆発により沼ノ平に代表されるように山頂一帯は火山特有の荒涼とした景観が作られ、同処にあった硫黄精錬所が吹っ飛び77名の死者を出しました。
1997年9月15日沼ノ平火口の硫化水素ガス
1997年9月15日沼ノ平火口付近で硫化水素ガスにより死者4名を出したことにより、2013年現在、沼ノ平の中央を通る登山ルートと鉄山とくろがね小屋とを結ぶ登山ルートが立ち入り禁止となっています。
高村光太郎の詩集「智恵子抄」
安達太良山といえば、高村光太郎の詩集「智恵子抄」の中にある「樹下の二人」が連想されます。「あれが阿多多羅山(あたたらやま) あの光るのが阿武隈川(あぶくまがわ)」 で始まる詩は、光太郎が福島県二本松市の造り酒屋の娘として生まれた智恵子の実家に帰省した時に詠まれたものです。これにより、広くその名が知られるようになるのです。
安達太良山の開山の歴史
相応寺と円東寺の安達太良修験
安達太良山の山岳修験の歴史は、山上寺院だった相応寺と円東寺、そして安達太良神社が関係しています。 二寺院とも僧・徳一の開山と伝わり、薬師如来を本尊とし、安達太良山遍明院を山号とする相応寺は、大同二年(西暦807年)の創建で前ヶ岳の山頂にあったと言います。現在は、安達太良山の南東方向にある福島県安達郡大玉村玉ノ井字南町に鎮座しています。同じく西暦807年の創建で、相応寺の北院として安達太良山光明院を山号とする円東寺は、安達太良山中の北猿鼻にあったと言います。現在は、安達太良町渋川二本柳にあります。
※僧・徳一
会津仏教文化の華を開かせた高僧で、磐梯山・恵日寺や筑波山・筑波山神社などを創建した人物として知られています。
大玉村の安達太良温泉に表登山口があります。「表」と言うからには古くからの歴史ある登山道と言うことが出来ます。相応寺を拠点として、安達太良修験の道場となっていたからです。杉田川に沿って登ると、一周1時間の遠藤ヶ滝遊歩道があります。遠藤ヶ滝で水垢離(みずごり)を済ませた禅定者は、修験者の導きで安達太良山へ登拝したのでしょう。 この滝は、源平時代の文覚上人(遠藤盛遠)が滝に打たれ荒行を修めた行場であったという伝説を持ちます。これら二つの寺院が基点となり岳山駆(安達太良山駆)が行われたと考えられ、磐梯吾妻修験の入峰とも深く関わりがあったようです。
安達太良大明神
福島県本宮市の菅森山にある安達太良神社も前述の相応寺や円東寺と共に安達太良修験道と関わっていたものと想像されますが、明治初年の神仏分離令と廃仏毀釈によりその真実はよく分かっていません。安達太良神社は、かつて安達太良大明神と呼ばれ、久安二年(西暦1146年)の創建で、安達太良山の峰に鎮座していた甑明神、矢筈森明神、剣山明神、船明神と、大名倉山に鎮座していた宇奈明神を合祀して安達郡総鎮守となったといいます。御祭神は高皇産霊神、神皇産霊神、飯豊別神、飯津比売神、禰宜大刀自神、宇名己呂別神です。
参考文献:名山の文化史