燧ヶ岳とは

燧ヶ岳は至仏山と共に尾瀬のシンボルと呼ぶにふさわしく、円錐形の独立峰で、俎嵓(まないたぐら標高2,346m)、柴安嵓(しばやすぐら標高2,356m) の二峰で双耳峰を形成しています。二峰に加えて、ミノブナ岳・アカナグレ岳・御池岳などが前衛峰として、その周りを取り囲んでいます。

 西側の尾瀬ヶ原湿原から仰ぎ見る姿、南東麓の尾瀬沼の水面に写り込む雄姿は、日本百名山の名に恥じない秀峰と言えるでしょう。

俎嵓には二等三角点があり、360度の展望が得られます。一方、東北以北の最高峰である柴安嵓は俎嵓より10m標高が高く主峰とされていますが、山頂部は広く俎嵓より眺望が劣ります。

尾瀬沼に映る燧ヶ岳の投影が絶好の撮影ポイントになっています。その北側に広がる大江湿原は、7月下旬頃になるとニッコウキスゲのオレンジ色の花で埋まります。

燧ヶ岳のアクセス

マイカー規制

尾瀬の登山口となる鳩待峠や大清水へはマイカー規制が行われます。アクセスの詳細は下記を参照してください。

尾瀬
尾瀬のアクセスと駐車場
尾瀬のアクセスと駐車場

燧ヶ岳の山小屋

尾瀬
御池ロッジ-尾瀬
御池ロッジ-尾瀬
尾瀬
温泉小屋
温泉小屋-尾瀬
尾瀬
至仏山荘-尾瀬
至仏山荘-尾瀬

燧ヶ岳の魅力

広沢田代、熊沢田代の池塘

燧ヶ岳の御池コースは、広沢田代、熊沢田代などがあり、雪解けとともに水芭蕉、ワタスゲやモウセンゴケ、キンコウカなどの高山植物が花を咲かせます。

尾瀬ヶ原から望む燧ヶ岳

尾瀬ヶ原の中に真っすぐに伸びた木道の先にどっしりと構えた燧ヶ岳。また、風が無ければ池塘に逆さ燧ヶ岳が見れるかもしれません。

燧ヶ岳の火山活動の歴史

約5~10万年前

尾瀬国立公園内の尾瀬沼の北、尾瀬ヶ原の東に位置する燧ヶ岳は、5~10万年前の火山活動によって形成されたものです。

STEP
1

1万年以上前

尾瀬沼や尾瀬ヶ原は1万年以上前の燧ヶ岳の噴火によって只見川上流がせき止められて出来上がったものだと言われています。

STEP
2

約500年前

火山活動は最近でも繰り返して起こっており、御池岳には約500年前に出来たと推測される溶岩ドームがあります。

STEP
3

燧ヶ岳の地図

燧ヶ岳の登山コース概要

燧ヶ岳-御池登山口コース

熊沢田代から燧ヶ岳
熊沢田代から燧ヶ岳

御池は、尾瀬の登山口の中でマイカーが入る唯一の場所です。御池駐車場は、除雪が完了する4月末ころから利用可能ですが、シーズン中は御池駐車場が一杯になることも多く、七入駐車場(880台)に車を停め、シャトルバスまたは路線バスで御池またはその先の沼山峠に向かいます。

※御池~沼山峠間は通年一般車通行禁止です。(沼山峠は、鳩待峠に次いで利用者が多い所で、尾瀬沼の湖畔から始まる長英新道の起点になっている所です。)

御池にはバス乗り場があり、その奥に1日1,000円の御池駐車場約450台が完備し、 山の駅御池にはトイレ完備、土産店、バスの乗車券発売所が併設されています。

尾瀬御池ロッジに宿泊した場合には、登山している間、ロッジの駐車場に停めておくことができます。

御池登山口からのルートは、広沢田代・熊沢田代などの湿原を抱え変化に富んでいますが、沢筋には7月中旬まで雪渓が残っている為、登山初心者は7月下旬になってからの方が無難でしょう。残雪期の6月中旬までは、熊沢田代の上部で赤札の数が少ない区間があり、ルートファインディングに手こづるかもしれません。

御池駐車場を通り抜け、登山口に入ります。木道を進むと直ぐに燧ヶ岳分岐があります。6月5日時点で直ぐに残雪が現れます。 日の当たる所には雪はありませんが、樹林帯にはまだ多くの残雪があり、比較的傾斜のきつい雪の斜面を登り続けます。

展望が開けると広沢田代です。広沢田代の先にある標高1,986mピークを右から巻くように進み、樹林帯へと入ります。傾斜は30度を越える雪面もあり、最低軽アイゼンは使用した方が良いでしょう。僅かな区間平坦地を通過し、ダケカンバが美しいややきつい雪面を登り上げると熊沢田代です。 熊沢田代の湿原の規模は広沢田代とほぼ同程度ですが、池塘の数は少なく高山植物の数も少ない様です。熊沢田代から望む雪形の残る燧ヶ岳の俎嵓(まないたぐら標高2,346m)は絶景です。

熊沢田代を越え、深い樹林帯へと入ります。この先、悪天候時にはルート確認が困難になる所が数か所ほどあります。今回の登山では、赤札が少なく、ルート探しに30分ほど費やした箇所がありました。 ハイマツ間の雪の斜面を見上げると、ずっと先の左側のハイマツに一つだけ赤札が付いているのを確認し、ルートが正しいことでほっとしました。

赤札が付いている所からトラバースします。ここで下山者に会い、トレースを頼りに進みます。トラバースを終えると俎嵓(まないたぐら標高2,346m)まで僅かです。

俎嵓(まないたぐら標高2,346m)からは360度の展望があり、南西方向の至仏山、北東方向の会津駒ヶ岳、眼下には尾瀬沼が広がります。

俎嵓から最高点の(しばやすぐら標高2,356m)へ向かいます。 山頂下の45度はあろうかと思われる雪の斜面が核心部で、最低でも軽アイゼンは付けた方が良いでしょう。

山頂下の雪の斜面を登ると山頂に飛び出します。燧ヶ岳最高点の柴安嵓(しばやすぐら標高2,356m)からは俎嵓ほどの眺望はありません。

コースタイム

  • 登山:御池登山口→燧ヶ岳 3時間20分
  • 下山:燧ヶ岳→御池登山口 2時間30分

難易度 2/10 積雪期

体力  2/10  日帰り

燧ヶ岳-見晴新道コース

右手に双耳峰の一つ俎嵓
右手に双耳峰の一つ俎嵓

登山口となる見晴は、尾瀬ヶ原の一角にあり、尾瀬沼(見晴新道)、山ノ鼻、三条の滝、八木沢道の各方面から道が合流する十字路になっています。交通の要所ということもあって6軒の山小屋(燧小屋、原の小屋、尾瀬小屋、弥四郎小屋、第二長蔵小屋、桧枝岐小屋)が集中しています。

小屋の周囲には数多くのテーブルや椅子が置かれ、立派な公衆トイレが完備されています。尾瀬を散策するハイカーの憩いの場となっています。無料休憩所には尾瀬保護財団員が常駐して、尾瀬に関する情報を提供しているので活用してみるのも面白いと思います。

見晴十字路から木道を進み燧ケ岳分岐で尾瀬沼を右に分け、見晴新道に入ります。ブナの大木の中を40分ほど進んだ所で、沢に沿っての登りになります。6月上旬で、よく日の当たる所では残雪が消えている箇所もありますが、概ね樹林帯の中の沢には残雪があり、単調な登りが2時間30分ほど続きます。従って、余り面白いルートとは言えないでしょう。

展望が開けると同時に残雪はほとんどなくなります。右手方向に双耳峰の一つ俎嵓(まないたぐら標高2,346m)が見えてきた辺りかるザレた斜面の登りです。廃道となった赤田代へ下る温泉小屋道が左手に分岐しますが、下山時に迷い込まない様に注意が必要です。

ハイマツ帯を抜ければ山頂が見えてきます。 燧ケ岳山頂の(柴安嵓)は、平坦な山頂で、多くの登山者が休憩できるスペースがありますが、隣にあるもう一つのピーク俎嵓(まないたぐら標高2,346m)ほどの眺望はありません。

コースタイム

  • 登山:見晴→燧ヶ岳 3時間20分
  • 下山:燧ヶ岳→見晴 2時間20分

難易度 1/10

体力  2/10 1泊

燧ヶ岳の4コース

長英新道コース

尾瀬沼ビジターセンターを起点とし、ノブチ岳を経由して俎嵓へ至るルートです。比較的長い行程ですがなだらかな為、登山初心者向きと言えるでしょう。ぬかるみが多いのでスパッツを付けると良いでしょう。

御池コース

登山口まで車が入る唯一のルートで、広沢田代・熊沢田代などの湿原を抱え、俎嵓へ至ります。沢筋には7月中旬まで雪渓が残っている為、登山初心者は7月下旬になってからの方が無難でしょう。残雪の状況にもよりますが、熊沢田代の上部で赤札の数が少ない区間があり、ルートファインディングに手こずる場合があります。

見晴新道コース

見晴を起点とし、樹林帯の沢筋を登るルートです。残雪期でも道間違いの危険は少ないのですが、展望が開けるまで2時間以上の退屈な登りが続きます。

ナデッ窪コース

沼尻休憩所から登るルートで、最短ですが難路です。

燧ヶ岳の日帰り登山は出来る?

最短で至仏山に登るには鳩待峠を登山口とする ルートです。 往復のコースタイムは 3時間40分ほどなので日帰りは 十分可能です。また、 鳩待峠から山ノ鼻を経由して至仏山を周回するコースタイムは4時間30分ほどなので、 やはり日帰り可能です。

燧ヶ岳の登山口近くの温泉

燧ヶ岳の南西に位置する湯の小屋温泉 や 宝川温泉などは 湯量豊富でたくさんの露天風呂を楽しむことができます。湯の小屋温泉はロングコースですが至仏山を経由して尾瀬に入れます。御池近くには小豆温泉があります。

小豆温泉 花木の宿

 露天風呂は二つあり「木の湯 露天風呂」と「石の湯 露天風呂」。離れ(別棟)には部屋付き露天風呂があります。

泉質は単純温泉(低張性弱アルカリ性高温泉)、62.1℃、300リットル/分の湯量です。

食事は南会津の四季折々の旬の素材を生かした懐石料理です。

4名以上で会津鉄道の会津高原尾瀬口駅から送迎あり。

登山口の御池まで車で26分。

アクセス

会津高原尾瀬口駅~駒ヶ岳登山口~御池~沼山峠。花木の宿前下車。

湯めぐりテーマパーク 龍洞

湯めぐりテーマパーク 龍洞

湯の小屋温泉の湯めぐりテーマパーク 龍洞は、 18種の露天風呂が貸切で、空いていれば24時間無料で時間無制限で入れます。

18個もの露天風呂があるので、どこかは必ず空いています。一人、あるいは家族だけでプライベート空間が作れ大変リラックスできます。

すべて100%源泉かけ流し天然温泉です。

湯めぐりスタンプラリーがあり、18箇所全部制覇すると記念品が貰えます。

アクセス

水上駅より路線バス。1,550円 湯の小屋バス停(終点)下車、徒歩2分。

マイカー規制期間以外は鳩待峠まで車で行けます。マイカー規制期間は奥利根ゆけむり街道経由で尾瀬戸倉に車を停めてシャトルバスで尾瀬に入ります。

日帰り入浴

  • 平日:10:00~18:00 受付(最終退室時間19:30)
    土日祝:10:00~14:00時(最終退室15:00)
    ※混雑状況によって入場制限の可能性もあり
    ※受付から4時間以内の利用
  • 料金:大人 2,200円 子供(小学生以下) 1,100円

燧ヶ岳の天気の特徴

6月上旬の燧ヶ岳
6月上旬の燧ヶ岳

夏の燧ヶ岳は晴天の確率がやや低い

春(4月 - 6月) :この季節は雪解けの時期で、特に6月にはまだ2mほどの雪が残っている可能性があります。 気温は5~15度程度で、天気は変わりやすく、雨や曇りの日が多いです。

夏(7月~9月)の尾瀬は降水量が比較的多く、雨が頻繁に降ることがあります。霧やもやが発生しやすい状況になります。

尾瀬の1か月の降水量は5月101.8mm、6月139.8mm、7月173.8mm、8月190.8mm、9月204.8mm、10月157.3mmです。

山の天気予報は難しい
山の天気予報は難しい

お薦めの天気予報

テレビで流れる天気予報やネットで得られる無料の天気予報は、一般的に平地を対象としたものです。 そのため、晴れの天気予報が出ていても、山ではガスってしまうことはよくあることです。 

そこで、おすすめなのがtenki.jpの有料バージョン(+more)です。これは、月間100円と安いですが、高層天気の予報のため精度が高いです。また、山の天気予報(月額300円)を併用すると更に精度が高まります。

各種情報

燧ヶ岳登山ツアー

お問い合わせ

登山届提出

登山地図のスマホアプリ

  • 山と高原地図のスマホアプリ
    昭文社から販売されています。山と高原地図ホーダイ - 登山地図ナビアプリ 定額(500円/月 or 4800円/年)で61エリアの「山と高原地図」が使い放題。山と高原地図[地図単品購入版]地図1エリア 650円。

燧ヶ岳周辺の気温

最高気温平均気温最低気温
1月-7.9-11.7-15.7
2月-7.2-11.5-15.9
3月-3.5-8.3-12.8
4月3.9-2.4-7.4
5月10.53.7-2.4
6月13.97.92.7
7月17.311.57.0
8月18.712.47.8
9月13.88.24.0
10月7.71.8-2.8
11月1.8-3.8-8.1
12月-4.3-8.7-12.7

燧ヶ岳登山のための装備と服装

軽アイゼン12本歯アイゼンピッケルサングラスツェルト
1月×
2月×
3月×
4月×
5月×
6月×
7月××××
8月××××
9月××××
10月××××
11月××
12月×
必須:◎ あった方が良い:○ あったら良い:△ 必要ない:× 

服装や装備品のチェックリスト

登山地図必須 燧ヶ岳は登山口が複数あるため道迷いの危険性があります。登山地図を持って行かないと命のリスクもあります。
レインウェア必須 山の天候は急変します。天気予報で晴が出ていてもレインウェアは必須です。
また、防寒着としても使えます。セパレートタイプの通気性と防水性を兼ね備えたゴアテックスがベストです。
帽子必須 燧ヶ岳の御池コースなら45分ほど登ると展望が開け直射日光が強烈に降り注ぎます。日よけ用のつばが広く軽いものをお奨めします。寒さが厳しいときは、耳を覆うニット製、冬山ではフルフェイスタイプをお奨めします。
日焼け止め必須 標高2,356mの燧ヶ岳ですが、 燧ヶ岳では樹林帯を歩く区間が短く森林限界を超えると紫外線が強いので必帯です。
飲料水必須 天気の良い日は少し多めに持って行きましょう。
燧ヶ岳には水場はありません。各登山口の山小屋で確保していきましょう。
ヘッドランプ必須 アクシデントで暗くなってからの行動を強いられた場合には必携です。また、暗い内から山頂まで登り、御来光を拝むためにも必要です。
行動食必須 登山のコースタイムはさほど長くありません。パン・ナッツ類・野菜ジュース、飲むヨーグルトなど立ち休憩で食べられるものがお薦めです。
パックカバー必須 ザックが濡れないようにするためのザックカバーは雨に日には絶対必要です。ザックカバーも雨衣と同様に防水性が衰えてきます。時折、防水スプレーをするなどのメンテナンスが必要です。
救急薬品必須 切り傷、擦り傷にカットバン、絆創膏を持っていくと良いでしょう。虫刺され薬品も。トクホンのような筋肉痛に効く貼り薬もあると助かります。
ティッシュペーパー必須 登山中いきなりしたくなってしまった場合など、止血用などの万が一の時のために必帯です。
防寒着必須 薄手のフリース,セーター、軽いダウンジャケット。
燧ヶ岳では、7~8月でも最低気温が7度近くまで下がることがあります。
軽くて保温性の高いものを選びます。ゴアテックスのレインウェアを
その上に着ると更に保温性が高まります。
手袋あったら良い
耳栓あったら良い 山小屋に宿泊する場合、尾瀬の山小屋は基本個室ですが、単独の場合混雑すると相部屋になります。耳栓があると他人のイビキの音に悩まされません。
カメラあったら良い 360度の大パノラマや高山植物、紅葉など山旅の思い出にぜひどうぞ。ウエストポーチに収納出来る大きさであることが望ましいです。
ビニール袋あったら良い ごみ入れとして、使用前の下着入れ、使用後の下着入れとして4~5個あると便利です。
保険証(コピー)あったら良い 事故や遭難時に必要です。
サブザック不要
シュラフカバー不要

名前の由来

「ひうち」は「火打ち」を意味し、全国各地に存在する「火打」と同様、まさに活火山であることから転訛したと考えられています。

また、他の説として深田久弥は「日本百名山」の中で「燧という名前は、俎嵓北東面に鍛冶鋏の形をした残雪が現れるから」だと言います。

また、日本山岳会の「新日本山岳誌」では「檜枝岐村から火打鋏の白い雪形を望むことが出来る。」と記されています。つまり、雪形が名前の由来になったと言うのです。

開山の歴史

尾瀬を横切る道は中世以前から人と物資が行き交っていたと言わています。しかし、燧ヶ岳を霊山として修験者が山駆けをしたり、禅定者が列をなして登拝するといったことは無く、あくまでも燧ヶ岳の北麓の檜枝岐村の人々による素朴な信仰であった様です。

「檜枝岐村史」に次のような一節があります。吹雪のある寒い夜、火種を絶やして困っている杣人の家に老人が一夜の宿色を求めて訪ねてきます。杣人は「火がなく寒いですが、それでもよければどうぞお入りください。」と老人を家に招き入れます。老人は「赤い石」を杣人に授け、火を起こすように促します。暖炉に火が灯ると、いつの間にか老人はいなくなります。村人たちは、「赤い石」を火打石(燧石)と呼び、老人を燧大権現様として山上に祀ったと言います。

名前の由来ともなった逸話ですが、実際に俎嵓山頂には燧大権現を祀った祠が建てられています。これは尾瀬の開山者として有名な平野長蔵が19歳の時、西暦1889年(明治22年)に山上に祀ったものです。平野長蔵は、燧ヶ岳に登山道を作ると共に尾瀬の最古の山小屋・長蔵小屋を開き、尾瀬に一生を捧げた人物です。まさに燧ヶ岳の開山は、平野長蔵によるものと言うことが出来るでしょう。

参考文献:名山の民俗史