金峰山(きんぷさん)とは

金峰山は標高2,599m、奥秩父山系の西に位置し、古から奥秩父の最高峰とされてきましたが、実際には北奥千丈岳に2m 及ばず、奥秩父第2位の高峰と言えます。とはいえ、信州側や甲州側からはっきりとその姿をとらえることが出来きます。

金峰山が奥秩父の主峰であり、笛吹川や千曲川などの水源を有する豊かな水の恵みもたらす耕作の守護神として信仰の対象になっていたことは疑う余地がありません。

山頂付近は高山植物の群落が広がり、展望にも恵まれた金峰山を深田久弥は日本百名山の一つに選定しています。

金峰山の特徴

金峰山は奥秩父の盟主で、江戸時代まで修験道の中心的霊山でした。中央のぴょこんと飛び出しているのがシンボルの五丈石です。 山頂部の稜線上は展望抜群です。

冬季は瑞牆山荘から登るルートが一般的です。砂払いの頭を超えると森林限界を抜け、強風にさらされることもあります。千代ノ吹上では、谷側の傾斜は緩いとはいえ12本歯アイゼンとピッケルを持って行くのが理想的です。

金峰山山頂の五丈石(五丈岩、御像石、蔵石)

金峰山の象徴はその山頂にある五丈石(五丈岩、御像石、蔵石)です。蔵王権現が踏みつける盤石に由来したと考えられている 五丈石は、高さ約20mほどの花崗岩で、特に登攀用具を必要とすることなくクライミングすることで、そのてっぺんに立つことが出来ます。

五丈石を神と仰ぐ磐座信仰・巨石信仰

五丈石のすぐ近くから修験者が奉納したと考えられる直径1cmほどの水晶の数珠玉、土馬、陶磁器、金銅円盤、古銭、鉄製釘などの遺物が発見されています。

これらは9世紀から13世紀の物と推察され、平安時代の初期には既に信仰の山として開山されていたようです。このことからも五丈石を磐座とする山岳信仰があったことは間違い無いありません。出土品は山梨県立博物館に展示されています。

※その他、日本に於ける山上の巨石を磐座とした山は、八ヶ岳の権現岳、丹沢大山、赤城山、乗鞍岳などに見られます。
※磐座(いわくら)とは、古神道における、岩に対する信仰のこと。あるいは、信仰の対象となる岩そのもののこと。

土馬

9世紀から13世紀の物と推察される長さ10cm程の小さな土馬です。土馬は、干ばつなどの災いを背中に乗せて払い去る役割があるとされるものです。

金峰山は笛吹川などの源流にあたり、五丈岩の上面には「甲斐派美かいはび」という常に水をたたえた凹みがあると言われています。耕作の守護神として水霊信仰の聖地となっていたのでしょう。
山梨県立博物館常設展示案内から転載

金峰山の呼び名

金峰山の呼び名は山梨県では「きんぷさん」、長野県側では「きんぽうさん」と言われています。古くは「金風山(きんぷうさん)」と呼ばれたらしいが、江戸時代に「金峰」の名前が定着したようです。

金峰山の登山最適時期

アズマシャクナゲ

金峰山の登山最適時期は、5月下旬から6月中旬です。ルート上にはアズマシャクナゲが多く自生し、5月下旬から6月中旬にかけて、花のトンネルを作るのが最大の魅力です。

しかし、山頂付近の北面には残雪が6月上旬までありますから、軽アイゼンを携帯することをお勧めします。

金峰山登山口の駐車場とアクセス

アクセスの詳細は下記を参照してください。

金峰山
金峰山のアクセスと駐車場
金峰山のアクセスと駐車場

金峰山の山小屋

金峰山
金峰山小屋
金峰山小屋
金峰山
大弛小屋
大弛小屋

金峰山の地図

金峰山の登山コース概要

① 金峰山-千代の吹上コース

千代の吹上
千代の吹上

登山口となる瑞牆山荘へは、韮崎駅と瑞牆山荘間を期間限定で登山バスが走り、本数も多く便利です。また、マイカーの場合にも瑞牆山荘周辺に120台ほどの駐車場があり、公衆トイレも完備していますから女性も安心です。

登山道は瑞牆山荘正面から始まり、広葉樹林帯の中をジグザグに登ると富士見平小屋に到着します。 富士見平小屋の少し手前にある水場は水量豊富で、周辺はキャンプ地にも指定されています。

富士見平小屋正面で瑞牆山方面への道を左に見送り、針葉樹林帯の中を飯盛山の山頂を右に巻く様に登ると、大日小屋に到着します。大日小屋は素泊まりのみで、玄関近くに水場があります。また、テント場もあります。

大日小屋から針葉樹林帯の中を30分ほど登ると左手に大日岩が見えてきます。大日岩の基部は、八丁平方面を示す指導標とベンチが設置され、休憩に適した平坦地です。

大日岩のピークまでは登ることは困難ですが、そのわずか下までは登ることが可能で、そこから金峰山の全景を眺める事が出来ます。同時に反対側に目をやると瑞牆山があり、その先には悠々と連なる八ヶ岳を眺望出来ます。

大日岩を後にし、砂払ノ頭を抜けると、いよいよこのルートのクライマックスである千代ノ吹上です。千代ノ吹上の右手側は深く切れ落ち、荒々しい岩陵が、大変美しいい景観を作っています。

千代ノ吹上から複数の小ピークが金峰山山頂まで続き、深く切れ落ちた崖のすぐ脇を通過していきます。昭文社の登山地図には危険マークがありますが、登山道の幅は十分あり、崖側に滑落する危険はありません。登山初心者でも簡単にこなせる場所です。

小ピークを左に巻く様に進み、金峰山小屋方面の示す指導標が立つ辺りまで来ると、金峰山山頂にある五丈岩が大きくなってきます。

金峰山山頂と五丈岩との鞍部は平たん地で、絶好の休憩スポットで多くの登山者で賑わっています。金峰山からは360度の展望があり、百名山の瑞牆山の岩稜の先には八ヶ岳が聳え、遠くは南アルプス、富士山などの眺望をほしいままにする事が出来ます。

コースタイム

  • 登山:瑞牆山荘⇒金峰山 4時間10分
  • 下山:金峰山⇒瑞牆山荘 3時間5分

難易度 2/10

体力  3/10  日帰り

② 金峰山-大弛峠コース

金峰山
金峰山へ

大弛峠は車が上がる峠の中で日本最高の標高(2,365m)があり、金峰山山頂までのコースとしては最も標高差が小さく、簡単に登頂できるルートです。

大弛峠までの公共交通機関はなくJR塩山駅からタクシーかマイカーでのアクセスでしたが、近年、株式会社栄和交通がJR塩山駅と大弛峠間を走るバスの運行を開始しました。また、川上村から通じる川上牧丘林道は、幅も狭く悪路のため四輪駆動車が無難です。

大弛峠の駐車場は数十台の駐車スペースがありますが、シーズン中や土日などには林道沿いに数百メートルに渡り、縦列駐車の列が出来ることも稀ではありません。 また、駐車場の脇に公衆トイレが完備されていますので、女性も安心です。
※冬季はクリスタルラインから大弛峠に至る車道が閉鎖されます。詳細はこちら

大弛峠からは針葉樹林帯の登りとなり、朝日峠をへて大ナギに出ると一気に展望が開けます。大ナギは岩稜の短い稜線で、天気が良ければ南側には富士山から南アルプス、北側には兜岩の先に浅間山が見える絶好の撮影ポイントです。

大ナギから少し登った所が朝日岳の山頂です。山頂からの眺望は南方面と、金峰山が良く見えますが、北側の眺望はありません。朝日岳から岩場を下り、樹林帯の中へと入ります。その後、鉄山の北を巻く様に登り、樹林帯を抜けハイマツ帯に入ると傾斜が増し、金峰山の山頂から伸びる稜線に飛び出します。

稜線からの眺望は素晴らしく、ほぼ360度の展望が山頂まで続きます。右下方向に見える岩稜は、日本百名山の瑞牆山で、その先には八ヶ岳、そして進行方向には富士山から右手に連なる南アルプスの山々などが一望できます。

コースタイム

  • 登山:大弛峠⇒金峰山 2時間30分
  • 下山:金峰山⇒大弛峠 2時間5分

難易度 1/10

体力  1/10 日帰り

③ 金峰山-金峰山荘から廻り目平コース

廻り目平キャンプ場
廻り目平キャンプ場

長野県佐久郡川上村廻り目平の廻り目平キャンプ場(金峰山荘)のゲートをくぐり、大駐車場に車を停めます。
冬季は金峰山荘は閉鎖され、金峰山荘脇の駐車場(約10台)に駐車できます。 また、廻り目平キャンプ場内にはシャワー施設(一回3分100円)、水洗トイレが完備しています。

公共交通機関を使う場合には、金峰山荘の下流の川端下(かわはげ)まで川上村営バス(1日6~7本)が来ています。
金峰山荘と川端下間は徒歩で1時間以上かかる為、JR小海線信濃川上駅からタクシー(約8,600円 30分)を使うのも良いでしょう。

終点の川端下で川上村営バスを降り、集落の中を抜けて車道を辿ると大弛峠へ通じる川上牧丘林道が左手方向に分岐します。分岐から20分ほど歩くと右手側に小川山からの稜線が伸びてきて、ロッククライミングのメッカとして知られる屋根岩岩峰群が目に飛び込んできます。

ちょうどその取り付き辺りに廻目平があり、そこは金峰山荘が建ち、駐車場と広いキャンプ場が整備され、アウトドアを楽しむ人々で賑わう場所です。

5月下旬で廻り目平キャンプ場近くのアズマシャクナゲは満開でした。しかし、標高が増すとアズマシャクナゲの花はまだつぼみで、開花は6月上旬でしょう。

千曲川源流を目指し、金峰山荘から出発です。廻り目平キャンプ場を左手に見て、林道を進みます。林道は西股沢に沿って八丁平分岐(砂防堤)まで続いています。

八丁平分岐(砂防堤)の所に金峰山小屋の車が駐車してありました。( 廻り目平キャンプ場奥にゲートがあり一般車は入れません。)八丁平分岐(砂防堤)は平坦地で休憩の最適地となっています。

八丁平分岐(砂防堤)から八丁平方面の指導標を右に見送り、砂洗川を渡って尾根道に入ります。
沢沿いの登山道が崩落した箇所を迂回するために、アズマシャクナゲの群生の中に新たに登山道が付けられています。

崩落地の先の最終水場を過ぎると、アズマシャクナゲと針葉樹林帯とが交互に入れ替わる樹相の中を金峰山小屋まで登ります。樹林帯の為、5月下旬まで残雪があります。この時期は、所々に凍結した箇所があるため軽アイゼンを持参した方が無難です。

金峰山小屋に到着すると展望が開け、金峰山山頂に立つ五丈石が見えてきます。 ハイマツ帯の中を20分ほど登ると山頂です。

コースタイム

  • 登山:金峰山荘⇒金峰山 3時間30分
  • 下山:金峰山⇒金峰山荘 2時間30分

難易度 1/10

体力  3/10  日帰り

④ 金峰山-表参道コース

隻手廻し岩と遠景に五丈岩
隻手廻し岩と遠景に五丈岩

明治時代になって廃仏毀釈が起こるまでは神様と仏様を一緒に祀る神仏習合の信仰形態でした。深山に分け入り修行する修験道も仏教の一派として、明治5年に明治新政府により修験禁止令が出されたことで、修験道は禁止されます。

江戸時代までの金峰山は、全国各地から集まる多くの修験者によって登拝される霊山でした。甲州側からは9筋の登拝路があり、表参道の拠点として金桜神社が鎮座し、周辺には大きな門前町が形成されていました。現在でも金桜神社を訊ねると、門前町のあった場所に数件の宿坊がかつての姿を留めています。

金桜神社から奥御岳林道が黒平町の山林の中に通じ、甲府市森林浴広場まで一般車が入ることが出来ます。 水晶峠を経由して金峰山へ登る表参道(古道)ルートは、ロングコースになるため、今回は、川上牧丘林道沿いの「アコウ平」の駐車スペースに車を止め、ショートカットコースを辿ります。

昭文社の「山と高原地図」では破線扱いのルートになっていますが、約15m置きに赤札が付けられて、ルートを外す心配はまずありません。ただし、金峰山山頂からアコウ平へ下山ルートとして使う場合には、三薙沢のKK分岐が要注意箇所です。登山者の中にはKK分岐の指導標を見落とし、三薙沢をそのまま下り、水晶峠へ向かってしまうことも考えられます。

御室小屋は、かつて修験者が宿泊した所で、江戸時代には番所が作られ、入山料の徴収を行っていたようです。現在では廃屋となり見る影もありませんが、小屋の背後には金峰山の神体である五丈岩がはっきりと見て取れ、小屋を建てる場所として偶然にここを選んだとは思えません。

御室小屋のすぐ上から鶏冠岩の一枚岩の鎖場になりますが、ケイオウ谷側が切れ落ちているとはいえ、傾斜は緩く難易度は高くありません。このルートには隻手廻しの巨岩、鶏冠岩、勝手明神の祠、胎内くぐりなどがあり、修験道の行場として最適だったのではないでしょうか。

森林限界を超え、大きな石がゴロゴロした所を登り上げると、金峰山の神体である五丈岩(御像石)の南面の石垣が築かれた平坦地に飛び出します。現在、二基の石灯籠と石祠(金峰山神社)が祀られているのみですが、甲斐国志によると御像石の南面には蔵王権現を祀った方八尺の正殿と方三間の拝殿が建てられ、役小角が奉納したと伝えられる鉄杖と剣、唐銅(からかね)の経筒、薙鎌(なぎかま)などの神宝が納められていたといいます。

山頂から南方面を望むと富士山がよく見えます。又、瑞牆山の先には八ケ岳、南西方面に高山を連ねるのは南アルプス、北西方面には北アルプスの峰々が小さく見えます。

6月1日から11月31日までの間の土日祝日に限り株式会社栄和交通バスがJR塩山駅と大弛峠間を一日3往復走ります。事前に予約する必要がありますが、アコウ平での乗車・降車は可能です。アコウ平を登山口として金峰山から朝日岳を経由して大弛峠へ下る、或いはその反対のコース設定も可能です。

コースタイム

  • 登山:川上牧丘林道アコウ平駐車スペース⇒金峰山 2時間40分
  • 下山:金峰山⇒川上牧丘林道アコウ平駐車スペース 2時間20分

難易度 3/10

体力  2/10  日帰り

金峰山-冬季千代の吹上コース

千代の吹上
千代の吹上

増富温泉から登山口となる瑞牆山荘までの車道は、降雪後すぐに除雪される様ですが、アイスバーになっている箇所が多く、4WDでスタッドレスタイヤでもやや滑りました。
瑞牆山荘近くの無料駐車場には2月の土曜日で、約15台の駐車があり、山中で約15人ほどとすれ違いました。

このルートの核心は、砂払いの頭から千代の吹上の通過です。核心とはいえ、ピッケルが必要なほどではなく、トレースを辿れば問題なく通過できます。

登山口地点の積雪は約10cm程で、富士見平小屋辺りまでアイスバーンになっている箇所が多く、アイゼンが必要です。

富士見平小屋近くの水場は、凍結していて使用出来ませんが、トイレは使用可能です。富士見平小屋前のテント場には2張りのテントが設営されていました。

富士見平小屋から針葉樹林帯の中をゆっくりと高度を上げていきます。 大日小屋は毛布が常備され、冬季にも避難小屋として使用できます。近くの水場は使用できません。

大日小屋から次第に傾斜が増し、大日岩に至ります。 大日岩分岐を過ぎた辺りで積雪は70cmくらいです。アズマシャクナゲの群落の中から左手側に金峰山の象徴である五丈石が見えて来ます。その後、単調な樹林帯の登りが砂払いの頭まで続きます。

砂払いの頭に飛び出すと、大きく展望が開けます。砂払いの頭から右側が切れ落ちた稜線を登りますが、登山道の幅は十分有り、特に危険ではありません。しばらくすると千代の吹上から続く小ピークの先に金峰山山頂の五丈石が見えてきます。

千代の吹上は右側が崖になっているので慎重に進みます。トレースがしっかりあったので、特に難しいということなく通過できました。その後、小ピークの左をトラバースする様に登ります。左側への滑落が懸念されますが、特にピッケルが必要なほどの傾斜ではないと思います。 この辺りで、積雪は1mを越えています。稜線のため強風時は大変でしょうが、この日は快晴・無風で快適に金峰山に到着です。

コースタイム

  • 登山:瑞牆山荘⇒金峰山 4時間30分
  • 下山:金峰山⇒瑞牆山荘 2時間50分

難易度 2/10

体力  3/10  日帰り

金峰山の日帰り登山は出来る?

金峰山へ最短で登れるのが大弛峠コースです。往復のコースタイムは4時間35分です。従って余裕で日帰りが出来ます。また、瑞牆山荘を登山口とする千代の吹上コースであっても往復のコースタイムは7時間15分です。同様に健脚者でなくても十分日帰り可能です。

金峰山の登山口近くの温泉

武田信玄の隠し湯と知られる川浦温泉山県館です。川浦温泉山県館は甲州の 笛吹川の上流に佇む一軒宿です。源泉はアルカリ単純泉で、加温加水一切無し源泉100%かけ流し温泉です。

川浦温泉山県館

  • 温泉の特徴:泉温43.6℃ 泉質PH9.5 アルカリ性単純泉、 効能は、 神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺、関節のこわばり、うちみ、くじき、慢性消化器病、痔疾、冷え性、病後回復期、疲労回復、健康増進など。

日帰り入浴

料金:大人 1,500円(税込) / 子供 800円(税込)

入浴時間:11:00~15:00(※14:00受付終了) / 年中無休
(混雑時は日帰り入浴の営業を中止する場合あり)

金峰山の天気

山の天気予報は難しい
山の天気予報は難しい

お薦めの天気予報

テレビで流れる天気予報やネットで得られる無料の天気予報は、一般的に平地を対象としたものです。 そのため、晴れの天気予報が出ていても、山ではガスってしまうことはよくあることです。 

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各種情報

金峰山登山ツアー

  • 金峰山|登山・トレッキングツアー

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登山地図のスマホアプリ

  • 山と高原地図のスマホアプリ
    昭文社から販売されています。山と高原地図ホーダイ - 登山地図ナビアプリ 定額(500円/月 or 4800円/年)で61エリアの「山と高原地図」が使い放題。山と高原地図[地図単品購入版]地図1エリア 650円。

金峰山周辺の気温

最高気温平均気温最低気温
1月-3.9-10.1-15.1
2月-2.5-8.7-13.9
3月1.4-4.9-10.3
4月7.91.0-4.8
5月12.25.50.2
6月14.99.04.5
7月18.412.68.5
8月20.013.69.4
9月15.59.75.6
10月9.33.4-1.1
11月3.8-2.6-7.6
12月-1.4-7.8-12.8

金峰山登山のための装備と服装

軽アイゼン12本歯アイゼンピッケルサングラスツェルト
1月
2月
3月
4月
5月×××
6月××××
7月××××
8月××××
9月××××
10月××××
11月×××
12月
必須:◎ あった方が良い:○ あったら良い:△ 必要ない:× 

金峰山信仰

金峰山と名の付く山は日本に数多く存在します。役行者が開いたとされる、奈良県吉野町の金峯山(きんぷせん)が修験道発祥の地です。金峰山神社の縁起によると吉野の金峯山と同様に、甲斐金峰山も文武天皇の代(西暦697年から707年)役行者(小角)が蔵王権現を迎え祀ったことに始まるとされます。

蔵王権現は、役行者の祈りに応じて現れた尊像。日本独自の混淆宗教である修験道の本尊で、吉野の金峯山寺本堂(蔵王堂)に安置されています。

しかし、役行者が開山したとするのは伝説に過ぎず、明確な資料は残っていません。「甲斐国志」や「金峰山縁起」などによると、山岳修験の霊場となったのは鎌倉時代の可能性が高いからです。

吉野に朝廷が置かれた時代には、大和の金峯山に登ることが出来なかった全国の修験者がこぞって訪れたといいます。

江戸時代になると金峰山への登山道は、信州側の長野県南佐久郡からの北口があり、甲州側からは東口・南口・西口の各三筋の合計9筋ありました。万力・西保・杣口の各村からの道筋を東口、吉沢・亀沢、塚原から を南口、穂坂、江草・小尾からを西口と呼んでいました。

数多くある登拝路で最も多くの修験者を集めたのは、南口の吉沢から御岳の金桜神社に出るルートでした。各登拝路には番所が設けられ入山料を納める必要がありました。入山料を納めてまで、登りたいという山伏が多くいたということでしょう。

役行者像蔵王権現立像

役行者

役行者(えんのぎょうじゃ)は、名前を小角(おずの/おずぬ)といい、奈良時代(西暦634年)に生まれ、修験道の基礎を作ったとされる人です。

修験道とは、日本古来の山岳信仰に、神道や仏教などが影響して成立しました。深山で命がけの修行をし、超能力にも似た霊力、験力を身につけようとするものです。
円楽寺蔵の複製 山梨県立博物館常設展示案内から転載

蔵王権現

蔵王権現は、役小角が、長い山岳修行の末、吉野の金峯山で感得したという伝承があります。修験道の総本山である金峯山寺の蔵王堂に蔵王権現像(重要文化財)3体が祀られています。怒りの表情をして、髪は逆立ち、右手を振り上げ、片足で立つ姿をしています。

「権現」の意味する所は「臨時に現れる」「仮に現れる」と訳せ、仏が臨時に神の姿となって現れることです。
山梨県指定文化財 山梨県立博物館常設展示案内から転載

金桜神社と金峰山の歴史

甲州側から金峰山へ登る主要登拝路は前述のとおり九筋あり、御岳の金桜神社を通る登拝路が表参道としてメインであった様です。そして、金桜神社のある御岳村周辺には門前町が形成され、数多くの御師屋敷や二百ほどの宿坊があったとのことです。

この古道を現在でも辿ることが出来ます。金桜神社からゲートがある甲府市森林浴広場まで舗装された奥御岳林道が通じています。そこから水晶峠を経て、廃屋となった御室小屋を越え、五丈岩のある山頂を目指すルートです。

「甲斐国志」にその道筋が詳しく記載されています。金桜神社から山頂まで五里五十町(約25km)とあり、かなりの長丁場でした。その為、途中の御室には宿泊施設や番所がありました。番所では入山料を徴収していました。

御室から山頂までの五十町(約5.5km)の急坂の区間に、鶏冠岩、胎内くぐり、片手回しの巨岩などの難所があり、修験道の霊場として最適ではなかったのでしょうか。

しかし、明治元年に明治新政府が発した神仏分離令に伴い廃仏毀釈が起こりました。これは日本における最大の宗教弾圧で、仏教の一派とされた修験道も明治5年の修験禁止令により禁止されました。 そして、隆盛を極めた金桜神社と共に門前町は、その役割を終えることになります。

金桜神社

甲府市御岳町の金桜神社は金峰山山頂に本宮があり、金峰山信仰の中心的な神社でした。名工、左甚五郎の作といわれる「昇り竜・下り竜」が本殿にあります。

門前町の面影

松田屋
松田屋

御岳町には現在でも門前町の面影が残る歴史ある宿坊を見ることができます。 松田屋と書かれた宿坊が道路沿いに建っています。

智聖上人開山伝説と杣口の金桜神社

「金峰山縁起」(山梨県立図書館蔵)によると、智聖上人が西暦851年(仁寿元年)に東山梨群牧丘町杣口の地に大和国から米沢山大禅寺の鎮守社として金桜神社を勧請し、金峰山を開山したと記されています。杣口を通り金峰山へ至るルートは、甲州側の東口(現在の大弛峠へ通じるルート)として栄えました。

杣口の金桜神社奥社

県道210号線から赤い鳥居をくぐり鬱蒼と茂る杉林の中を約300m登ると鎮座しています。大国主命、小彦名命を祭神とし、蔵王権現と小守勝手の両祠を併祀しています。昭和44年12月、明治維新100年記念として奥宮本殿が再建されました。

杣口の金桜神社里宮

県道210号線の杣口バス停から上流約1300mの地点に鎮座しています。西暦1582年(天正10年)織田信長軍の兵火に遭い、二本松にあった社殿などを消失し、西暦1712年(正徳2年)に現在の地に移転しました。
杣口の金桜神社の例祭に、5年に一度、山梨市指定無形民俗文化財の杣口打囃子が行われます。

甲斐武田家と金峰山

川上村秋山の川端下・梓山に甲斐の武田家と縁が深い金峰山神社があります。金峰山神社は、金峰山を背景に建てられていて、かつて蔵王権現を祀る里宮であったが、現在は大己貴命が祀られています。この神社では祭日になると武田信玄が寄進したという金銀の大幟をたてます。川上村の梓山と川端下に金山があり、武田信玄の軍資金の一部になっていたとされています。

参考:名山の文化史 山梨県立博物館