那須岳とは

那須岳は栃木県の北部に位置し、那須火山群に属しています。その名を冠する山は無く、茶臼岳、朝日岳、三本槍岳、南月山、黒尾谷岳などの山々を総称して「那須岳」と呼んでいます。那須連山あるいは那須連峰と呼ぶ場合もあります。狭義の意味では茶臼岳を呼ぶこともあります。

朝日岳の山頂は鋭角的に尖がっていて、その周囲の岩稜が大変美しい景観を作り出しています。
三本槍岳はその名の通りではなく、山頂は丸く穏やかな山容を呈しています。

那須岳は紅葉が美しく、特に茶臼岳の西側の姥ヶ平周辺は紅葉の名所となっています。また、三斗小屋温泉から三本槍岳へ登る稜線から見る紅葉や朝日岳山頂からの紅葉も大変美しいものです。

茶臼岳の無限ノ地獄

茶臼岳の無限ノ地獄
無限ノ地獄

標高1915mの茶臼岳の山頂部に出来た中央火口丘を数分でお鉢巡りする事ができ、その一角に那須神社の小さな祠が祀られています。旧火口の西側にある爆裂火口は「無限ノ地獄」と呼ばれ、今でも火山ガスを噴出しています。

那須岳の火山の変遷

約60万年前

火山の歴史は約60万年前に甲子山と旭岳(赤崩山)周辺で起こり、次第に南下し三本槍岳、朝日岳、南月山へと移っていきました。

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約3万年前に茶臼岳が火山活動開始

那須岳の中核をなす茶臼岳、朝日岳、三本槍岳の三峰は、複式の成層火山です。その中で茶臼岳は、約3万年前から火山活動が始まり、現在でも噴煙を上げる活火山です。

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明治14年(西暦1881年)

茶臼岳は明治14年(西暦1881年)の噴火を最後に大きな噴火はしていません。

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3

那須岳の地図

那須岳の山小屋

那須岳
煙草屋旅館
三斗小屋温泉 煙草屋旅館

那須岳のアクセス

那須岳
那須岳のアクセスと駐車場
那須岳のアクセスと駐車場

那須岳の登山コース概要

茶臼岳から朝日岳・三本槍岳縦走コース

朝日岳から茶臼岳
朝日岳から茶臼岳

那須ロープウェイ山頂駅から茶臼岳・朝日岳・三本槍岳と巡り、大峠から三斗小屋温泉へ至るコースを紹介します。

那須ロープウェイ山頂駅を出発し、牛ヶ首方面を左に見送り、茶臼岳山頂を目指します。 ザレた登山道を真っ直ぐ登り、大岩を右から巻いて進むと茶臼岳山頂の鳥居が見えてきます。 鳥居をくぐると那須嶽神社の祠が祀られた茶臼岳山頂です。山頂からはもちろん大展望が広がり、那須高原から関東平野一円、日光連山(男体山、日光白根山)や南会津の山々、筑波山も遠望出来ます。
※茶臼山だけに登る場合には1時間あれば那須ロープウェイ山頂駅に戻ることが出来るハイキングコースと言えます。

茶臼岳山頂から外輪山を5分ほどで一周し、峰の茶屋跡避難小屋の建つ鞍部へ、茶臼岳の北面をゆっくり下りて行きます。 約20分で峰の茶屋跡避難小屋に到着です。 峰の茶屋跡避難小屋からは峰の茶屋登山口へ向かう登山道が右手に分岐します。
峰の茶屋跡避難小屋は15人ほどが休めるスペースがありますが、宿泊禁止となっています。

峰の茶屋跡避難小屋から朝日岳へ向かいます。 正面のピークは右から巻きます。 巻き終わると鎖が設置された岩場の登りです。 鎖場の傾斜は緩く、高度感も無く登山初心者でも難なく登ることが可能です。
鎖場を越えると左側にトラバースします。
トラバースの岩壁には安全の為、鎖が設置されていますが、谷側の傾斜は緩く、高度感も無いので通過は難しくありません。
トラバースを終えると、朝日岳の肩への登りです。 朝日岳山頂は鋭角的に尖り、狭い山頂からは360度の展望が広がります。

朝日岳山頂から朝日の肩を経て、隠居倉への分岐点である小ピークの能見曽根東端へ登ります。 能見曽根東端で方向を右に90度変え、三本槍岳方面へ向け広い稜線を進みます。
標高1,900m地点の小ピークからなだらかに下って行き、その後一気に清水平へ向け下ります。 清水平には木道が整備され、小休止に便利なベンチが設置されています。
北温泉・赤面山分岐を右に見送り、ハイマツ帯を進むと、三本槍岳への登りとなります。 三本槍岳は丸い山容をして、特に目立つ特徴はありませんが、那須岳の最高峰で標高1,917mあります。

三本槍岳から稜線に沿って大峠へ向けゆっくりと下っていきます。 稜線上は展望が開け、紅葉で赤や黄色に染まった山肌は、大変見事です。

大峠分岐から笹の中を下り、樹林帯へと入っていきます。 笹の中を下り、樹林帯へと入っていきます。 峠沢、中の沢、赤岩沢と三つの沢を渡り、樹林帯を進むと、三斗小屋温泉の大黒屋前に出ます。

コースタイム

  • 登山:那須ロープウェイ山頂駅⇒三斗小屋温泉 煙草屋旅館 5時間40分
  • 下山:三斗小屋温泉 煙草屋旅館⇒那須ロープウェイ山頂駅 5時間50分

難易度 2/10

体力  2/10  一泊

② 紅葉の那須岳-三斗小屋温泉コース

峰の辻から安達太良山

那須ロープウェイ山頂駅を降りると茶臼岳の南側の鉢巻き道を西に進みます。 アップダウンはさほどなく約20分で牛ヶ首の分岐に着きます。 牛ヶ首から一気に高度を下げ、紅葉の名所である姥ヶ平に下りたちます。

10月の中旬に、ここから振り返ると噴煙を上げた茶臼岳の山腹に紅葉の絨毯が広がり、それは大変見事です。また、姥ヶ平にはひょうたん池があり、湖面に映った茶臼岳と紅葉が絶妙なコントラストを描き出します。

姥ヶ平から樹林帯の中に入り、ゆっくりと高度を下げて行くと三斗小屋温泉に到着します。三斗小屋温泉には煙草屋旅館と大黒屋旅館の二軒の山小屋があります。煙草屋旅館には露天風呂があり、日帰り入浴ができますが、大黒屋旅館は行っていません。風情あふれる山小屋に宿泊して、源泉かけ流しの温泉を満喫してください。

三斗小屋温泉は、関東平野と奥州白河とを結ぶ会津中街道に湧く温泉として栄えていました。1868年(明治元年)に起こった戊辰戦争では、旧幕府軍の大鳥圭介らがこの温泉の西、徒歩で約1時間強の場所にある三斗小屋宿を拠点として、明治政府軍と幾度と無く戦ったため、大きな打撃を受けました。その後、火災にも会い、昭和32年に24戸あった村は廃村となります。

コースタイム

  • 登山:那須ロープウェイ山頂駅⇒三斗小屋温泉 1時間40分
  • 下山:三斗小屋温泉⇒那須ロープウェイ山頂駅 1時間50分

難易度 1/10

体力  1/10 日帰り

③ 冬季-那須岳(茶臼岳)コース

 冬季-那須岳(茶臼岳)コース
峰の茶屋跡避難小屋から茶臼岳

冬季の登山口は大丸駐車場で、ここから先はゲートが閉まり一般車は入れません。大丸駐車場には冬季でも使用できる公衆トイレが有ります。

冬季は営業していない那須ロープウェイの横を抜け、明礬沢に沿って那須岳(茶臼岳)の北側をトラバースする様に、なだらかな登りが、茶臼岳と朝日岳の鞍部に建つ峰の茶屋跡避難小屋まで続きます。

峰の茶屋跡避難小屋からはやや傾斜が増して、茶臼岳の東側から巻くように登ると山頂です。

冬季は強風で知られる那須岳ですが、コースタイムは登山口となる大丸駐車場と茶臼岳往復で3時間30分ほどと短く、難所は無い為、気象条件さえよければ、冬山初心者向きルートと言えます。 3月7日時点で、峰の茶屋から山頂にかけての積雪量は30cmほどで、登山道は所々、岩が露出してアイゼンを履いたままでは歩きにくい状態になっていました。 一方、路面は凍結している箇所が多く、アイゼンを脱ぐわけにもいきません。 この日に限っては、ピッケルは必ずしも必要ないと感じました。

峠の茶屋から約15分登った樹林帯の中、標高1550m地点の明礬沢林道で2009/04/02に雪崩による事故が発生しましたので、冬季登山は気温が緩む時期の雪崩には注意が必要です。

コースタイム

  • 登山:大丸無料駐車場⇒茶臼岳 2時間00分
  • 下山:茶臼岳⇒大丸無料駐車場 1時間30分

難易度 1/10

体力  1/10 日帰り

那須岳周辺ハイキング

八幡ツツジ群落

八幡ツツジ群落

環境省指定「かおり風景百選」の一つ。認定名称は「那須八幡のツツジ」。23haに20万本のヤマツツジやレンゲツツジが圧倒的なツツジ群落つ作っています。

那須岳とツツジのコラボ

那須岳とツツジのコラボ

例年、5月下旬から6月初旬にかけて見頃を迎えます。背景の那須岳とのコラボが美しい。八幡自然研究路の回収は約2.5km でゆっくりと歩いても 1時間以内のハイキングコースです。 もちろん ツツジ だけを見に行くなら 駐車場から30分もあれば十分です。

つつじ吊橋

つつじ吊橋

八幡自然研究路に掛けられた吊り橋。八幡ツツジ群落の近くです。橋長130m、高さ38m。ツツジ以外の季節でも四季折々の那須連山の絶景を一望できます。苦戸川に掛けられた吊橋で八幡ツツジ群落とさ殺生石とを結んでいます。橋の構造は大変堅固で、体重70kgの人が560人乗っても耐えられるものです。

八幡ツツジ群落とつつじ吊橋の地図

那須岳の日帰り登山は出来る?

那須ロープウェイ山頂駅から茶臼岳山頂までは僅か40分ほどのコースタイムなので、観光客でも日帰り可能です。また、那須ロープウェイを使わず峰の茶屋駐車場から茶臼岳山頂までは1時間30分ほどです。同様に日帰り出来ます。

また、三斗小屋温泉を周回するコースでも7時間30分ほどなので日帰り出来ます。

那須岳の登山口近くの温泉

周辺には良質の温泉が湧きだし、那須温泉郷、那須湯本温泉(鹿の湯)、新甲子温泉、大丸、北、弁天、高雄、板室などとともに、歩かなければ行きつけない三斗小屋温泉があり、登山の拠点としても大変魅了的な露天風呂付の山小屋でもあります。各温泉は江戸時代には既に湯治客で賑わっていました。

那須温泉 大丸温泉旅館

那須温泉 大丸温泉旅館

裏山の自家源泉より、湯量豊富なメタケイ酸を多く含有した温泉が谷間を流れ、野趣あふれる天然温泉の露天風呂が5種類あります。

内湯は3つあり、疲労回復、リューマチ、神経痛、冷え性のほか美肌効果があり、 飲泉(館内飲泉にて)することにより胃腸病にも効果があります。

那須ロープウェイまで1.4km、徒歩18分です。

アクセス

宿泊者は那須塩原駅または黒磯駅より那須方面へ向かう路線バスを往復500円で利用可。

日帰り入浴

  • 日帰り入浴:AM11:30-PM2:30まで受付(PM3:00終了)
  • 料金:大人1,000円 子供(3歳~小学生)700円
  • ※日帰り入浴が休業となる日があり。

三本槍岳の名前の由来

三本槍岳の名前の由来
三本槍岳

三本槍岳の名前の由来は、江戸時代、会津藩、那須藩、黒羽藩の三藩の領地争いによるもので、山頂部の境界が明確ではなかったため、定期的に槍を立てて自分の領地を主張したことにちなんでいると言わています。

こういった事は江戸時代にはあちこちで見られたことで、北アルプスの白馬岳では、越中・越後・信濃の分岐点にあった為、加賀藩は毎年「奥山廻り」という検分を行って「金沢御領」と書かれた立て札を立てて加賀藩領であることを他の藩に示したとされた事や中央アルプスの木曽駒ヶ岳においては木曽側の尾張徳川家と伊那側の高遠藩との間で同様な事が起こっていました。

那須岳の天気の特徴

那須連山
那須連山

夏の那須岳は晴天の確率がやや低い

夏は比較的暖かいで、適度な雨量がありますが、冬は非常に寒く、大量の降雪があります。 春から秋は通常、気温が穏やかで適度な雨量がありますが、天候はかなり変わることがあります。

夏は山頂付近でも摂氏10度前後になることがあります。那須高原の1か月の降水量は5月180.8mm、6月220.5mm、7月305.7mm、8月303.9mm、9月305.3mm、10月212.6mmです。

山の天気予報は難しい
山の天気予報は難しい

お薦めの天気予報

テレビで流れる天気予報やネットで得られる無料の天気予報は、一般的に平地を対象としたものです。 そのため、晴れの天気予報が出ていても、山ではガスってしまうことはよくあることです。 

そこで、おすすめなのがtenki.jpの有料バージョン(+more)です。これは、月間100円と安いですが、高層天気の予報のため精度が高いです。また、山の天気予報(月額300円)を併用すると更に精度が高まります。

各種情報

那須岳登山ツアー

  • 那須岳|登山・トレッキングツアー

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登山地図のスマホアプリ

  • 山と高原地図のスマホアプリ
    昭文社から販売されています。山と高原地図ホーダイ - 登山地図ナビアプリ 定額(500円/月 or 4800円/年)で61エリアの「山と高原地図」が使い放題。山と高原地図[地図単品購入版]地図1エリア 650円。

噴火速報アプリ

那須岳山頂周辺の気温

最高気温平均気温最低気温
1月-4.7-8.2-11.8
2月-4.2-8.0-11.8
3月-0.4-4.8-9.0
4月6.41.4-3.6
5月11.17.21.2
6月13.89.75.7
7月17.313.49.9
8月18.714.611.0
9月14.610.77.3
10月9.35.01.0
11月4.2-0.3-4.5
12月-1.2-5.2-8.9

那須岳へ登るための装備と服装

軽アイゼン12本歯アイゼンピッケルサングラスツェルト
1月×
2月×
3月×
4月
5月×××
6月××××
7月××××
8月××××
9月××××
10月××××
11月××
12月
必須:◎ あった方が良い:○ あったら良い:△ 必要ない:× 

服装や装備品のチェックリスト

登山地図必須 登山地図を忘れると道迷いの原因に!那須岳は那須ロープウェイ山頂駅からのピストンならほぼ道迷いはありませんが、那須連山を縦走する場合には必携です。 登山地図を持って行かないと命のリスクもあります。
レインウェア必須 山の天候は急変します。天気予報で晴が出ていてもレインウェアは必須です。
また、防寒着としても使えます。セパレートタイプの通気性と防水性を兼ね備えたゴアテックスがベストです。
帽子必須 那須岳は那須ロープウェイ山頂駅を降りたところはすでに森林限界を超え、お鉢巡りでは直射日光が強烈に降り注ぎます。日よけ用のつばが広く軽いものをお奨めします。寒さが厳しいときは、耳を覆うニット製、冬山ではフルフェイスタイプをお奨めします。
日焼け止め必須 標高1915mの茶臼岳ですが、 山頂周辺では日光を遮る木々が一切ありません。森林限界を超えると紫外線が強いので必帯です。
飲料水必須 天気の良い日は少し多めに持って行きましょう。
那須岳の水場は延命水と三斗小屋温泉にあります。共に水量が太い水場です。
登山行程に合わせて水の量を調整するとよいでしょう。
ヘッドランプ必須 アクシデントで暗くなってからの行動を強いられた場合には必携です。また、暗い内から山頂まで登り、御来光を拝むためにも必要です。
行動食必須 登山のコースタイムはさほど長くありません。パン・ナッツ類・野菜ジュース、飲むヨーグルトなど立ち休憩で食べられるものがお薦めです。
パックカバー必須 ザックが濡れないようにするためのザックカバーは雨に日には絶対必要です。ザックカバーも雨衣と同様に防水性が衰えてきます。時折、防水スプレーをするなどのメンテナンスが必要です。
救急薬品必須 切り傷、擦り傷にカットバン、絆創膏を持っていくと良いでしょう。虫刺され薬品も。トクホンのような筋肉痛に効く貼り薬もあると助かります。
ティッシュペーパー必須 登山中いきなりしたくなってしまった場合など、止血用などの万が一の時のために必帯です。
防寒着必須 薄手のフリース,セーター、軽いダウンジャケット。
那須岳山頂では、7~8月でも最低気温が10度近くまで下がることがあります。
軽くて保温性の高いものを選びます。ゴアテックスのレインウェアを
その上に着ると更に保温性が高まります。
手袋あったら良い
耳栓あったら良い 三斗小屋温泉に宿泊する場合、隣の部屋の声が筒抜けです。耳栓があると他人のイビキの音に悩まされません。
カメラあったら良い 360度の大パノラマや高山植物、紅葉など山旅の思い出にぜひどうぞ。ウエストポーチに収納出来る大きさであることが望ましいです。
ビニール袋あったら良い ごみ入れとして、使用前の下着入れ、使用後の下着入れとして3~4個あると便利です。
保険証(コピー)あったら良い 事故や遭難時に必要です。
サブザック不要
シュラフカバー不要

殺生石

殺生石

那須湯本温泉(鹿の湯)の北には、火山によって噴出した石が散乱する所に木道で一周出来るようになっています。地蔵が沢山祀られ、地獄に例えられて「賽ノ河原」と呼ばれています。

そこは今でも火山性の有毒ガスが噴出する荒涼たる場所で、白面金毛九尾の狐が「玉裳の前」という美女に化けたという伝説にちなむ「殺生石」が観光名所となっています。

かつて松尾芭蕉もこの地を訪れ、16泊しています。「奥の細道」に殺生石について「石の香や 夏草赤く 露暑し」と句を詠んでいます。又、その近くに鎮座する温泉神社を訪れて「湯をむすぶ誓ひも同じ石清水」という句も残しています。

温泉神社

東北自動車道那須ICより那須ロープウェイに向かい20分ほど車を走らせると那須湯本温泉の街があります。温泉街のはずれに鹿の湯があります。鹿の湯は舒明(じょめい)天皇の時代(西暦629年から641年)に狩野三郎によって開湯されたといわれ、那須温泉郷の中で最も古い温泉です。

「那須記」によると、「狩野三郎は大きな白い鹿を射止めたが、鹿は負傷したまま山中に逃げ込むみ、見失ってしまった。老翁「ゆぜん様」の導きで温泉に入っている鹿を発見する事が出来た。そこで、狩野三郎は鹿の湯を開湯するとともに、その近くに「ゆぜん様」を祀った温泉神社を建立した」と記されています。

温泉神社は「平家物語」にも登場します。那須与一が小舟に立てられた「扇の的」を一矢で射落すくだりは、よく知られた名場面です。

那須岳の開山の歴史

役行者が初めて登ったという言い伝えがあります。しかしこの地には、弘法大使が茶臼岳を中心とした三山大権現を祀ったのが最初だという言い伝えも残っています。いずれにせよ、これらは伝説に過ぎず史実とは言いがたいものです。

しかし、那須地方の人々は那須岳を山岳信仰の対象としており、出羽三山信仰(月山・羽黒山・湯殿山)の修験道の流れをくむものであった可能性があります。かつて茶臼岳を月山と呼び、更にその南の南月山には南月神社の祠が祀られています。