会津駒ヶ岳とは

福島県南会津郡檜枝岐村に位置する会津駒ヶ岳(標高2,133m)の山頂部は丸みを帯び、なだらかな山稜を広げた山です。駒の池大池周辺から中門岳(ちゅうもんだけ)にかけての稜線は、山上の楽園と形容出来るほどで、尾根に沿って高層湿原が広がり、駒の池大池や中門大池などをはじめ大小の池塘(ちとう)が点在しています。

会津駒ヶ岳は、尾瀬北東部に位置し、尾瀬を代表する山(燧ケ岳、至仏山)とともに日本百名山に選定されています。

中腹にはブナの原生林が、登るにつれてオオシラビソの林が広がります。稜線に上がると尾瀬のシンボルともいわれる至仏山や燧ケ岳などの山々ばかりではなく、南に男体山、日光白根山などの素晴らしい眺望が得られます。

会津駒ヶ岳の山小屋

会津駒ヶ岳
会津駒の小屋
会津駒の小屋

会津駒ヶ岳の山小屋

会津駒ヶ岳
会津駒の小屋
会津駒の小屋
尾瀬
御池ロッジ-尾瀬
御池ロッジ-尾瀬

会津駒ヶ岳の雪解けの目安

7月の雪解け状況

駒の大池-7月の第三週

尾瀬を取り囲む山の中でも豪雪地帯として知られ、雪解けの時期は、会津駒の小屋ベンチ前の「駒の大池」では7月第三週を過ぎた頃に姿を現します。7月2日では完全に雪に埋まっています。

会津駒の小屋より下部

7月初旬でルート上に残雪はあるものの、登山に支障はなく、高山植物も咲き始めます。

会津駒ヶ岳から中門岳

会津駒ヶ岳から中門岳の稜線の雪解けが始まり高層湿原に池糖が現れるのは、7月15日以降を目安にすればよいと思います。

燧ヶ岳から望む会津駒ヶ岳

6月5日燧ヶ岳から望む会津駒ヶ岳。燧ヶ岳においては池塘が出ていましたが、会津駒ヶ岳の雪解けはまだ先のようです。

会津駒ヶ岳の地図

会津駒ヶ岳の登山コース概要

会津駒ヶ岳-滝沢登山口コース

会津駒の小屋から会津駒ヶ岳
会津駒の小屋から会津駒ヶ岳

国道352号線沿いの駒ヶ岳登山口(桧枝岐村)から徒歩5分ほどの所にあるグランドの駐車場には、約30台可能で、トイレ・水道があります。 駒ヶ岳登山口(桧枝岐)へのアクセスは、会津高原尾瀬口駅から会津乗り合いバスが一日6本走ります。また、このバスは停留所以外でも好きな場所で降りることができます。

駒ヶ岳登山口から川に沿って少し登った所に公衆トイレがあります。さらに車道を10分ほど登った所から登山道に入ります。 樹林帯の登りが20分ほど続いた後、再び車道に入り、その先に12台ほど停められる駐車スペースがあります。駐車スペースのある場所で、一般車は進入禁止となり、 ゲートを越え、車道を3分ほど歩くと滝沢登山口に到着です。

滝沢登山口で木製階段を登るところから樹林帯の中の登りが会津駒の小屋直下まで続きます。 滝沢登山口から1時間30分ほど登った所に憩ポイントがあり、そこから約2分下った所に水場があります。 水場は、ほとんど涸れることはないそうですが、連続した天気が続くと涸れる場合がまれにあるので要注意です。

水場を過ぎた辺りから針葉樹林帯へと樹相が変わり、約1,800m地点辺りから7月上旬時点で残雪が姿を現します。 その後、更に残雪の量は増えていきますが、アイゼンは必要ありませ。

会津駒ヶ岳が右手に見えてくる辺りから次第に傾斜が緩み、木道を進んだ所にベンチが設置された休憩ポイントがあります。ここまで来ると会津駒の小屋まであと少しです。 会津駒の小屋の周辺には高層湿原が広がり、雪解けとともに池塘が出現し、高山植物が咲き出します。 会津駒の小屋直前のきつい登りには、まだ沢山の雪がありましたがアイゼンは無くても登れます。

会津駒の小屋は、30人ほど入ると一杯になってしまう小さな山小屋で、食事提供はありません。 7月第三週頃になると会津駒の小屋正面には、雪で隠された「駒の大池」が姿を現します。

会津駒の小屋から会津駒ヶ岳へは約20分の行程です。 残雪を抜け、滑りやすい木道を登ると会津駒ヶ岳山頂です。山頂は丸く低い木々により展望はありません。

7月上旬時点で、中門岳への稜線は雪で覆われています。池塘が出現し、高山植物が花を咲かせるには、少なくてもあと2週間は必要なようです。

コースタイム

  • 登山:駒ヶ岳登山口→会津駒ヶ岳→中門岳 4時間00分
  • 下山:中門岳→会津駒ヶ岳→駒ヶ岳登山口 3時間20分

難易度 1/10 積雪期

体力  3/10  日帰り

② 会津駒ヶ岳-尾瀬御池コース

木道の先に会津駒ヶ岳
木道の先に会津駒ヶ岳

尾瀬御池登山口は、尾瀬へのアクセスの拠点となっている尾瀬御池ロッジから5分ほど車道を歩いた所にあります。

ブナ林の巨木が生い茂る中を登り、針葉樹林帯へと樹相が変わって来ると間もなく標高1,922mの大杉岳です。しかし、山頂からの展望はまったくありません。

大杉岳から針葉樹林帯の中をゆっくりと下り、登り返します。7月上旬に於いて、この辺りからまだ多くの残雪はありますが、2週間前に赤テープが新たに付けられ、ルートを見失う心配はありません。振り返れば、燧ケ岳がすぐそこに聳えているのが見えています。
小ピークを越えた所に発電避難小屋が建っています。発電避難小屋は一般の登山者には解放されていません。

発電避難小屋から木道を進み、残雪を横切り、樹林帯へと入ります。小ピークを二つ越え、登り返すと展望が開け、大津岐山の南側を通過します。この先にキリンテに下る大津岐峠がありますが、残雪期には指導標が雪に埋もれている為、分岐点の確認には十分な注意が必要な所です。

大津岐山で、大杉林道から富士見林道と名前が変わります。富士見林道に入ると展望が効く快適な稜線歩きが続き、会津駒ケ岳が稜線の先にはっきり確認できるようになります。富士見林道には7月上旬時点で、高山植物のハクサンコザクラやシラネアオイが多く咲いていました。

小さな小ピークを三つ越えて進むと、会津駒の小屋に到着します。 会津駒の小屋周辺から上部はまだ残雪が多く、駒の大池はまだ雪の下です。会津駒の小屋から残雪の中を進み、木道を登ると会津駒ケ岳山頂です。

コースタイム

  • 登山:尾瀬御池登山口→会津駒ヶ岳 5時間20分
  • 下山:会津駒ヶ岳→尾瀬御池登山口 4時間30分

難易度 1/10

体力  5/10

会津駒ヶ岳に咲く高山植物

高層湿原を彩るように7月の雪解け共にチングルマやイワイチョウなどの高山植物が咲きはじめ、なかでもハクサンコザクラは会津駒ヶ岳を代表する花として有名です。

尾瀬を取り囲む山の中でも豪雪地帯として知られ、雪解けの時期は、会津駒の小屋より下部では7月初旬でルート上に残雪はあるものの、登山に支障はなく、高山植物も咲き始めます。

会津駒の小屋ベンチ前の「駒の大池」は7月の第三週頃に姿を現し、周辺にはチングルマ、ハクサンコザクラ、イワイチョウ、ミツガシワ、ワタスゲなどが可憐な花を咲かせます。

会津駒ヶ岳の日帰り登山は出来る?

会津駒ヶ岳の最短コースは滝沢登山口コースです。コースタイムは会津駒ヶ岳を超えて中門岳まで行っても登山4時間00分、下山3時間20分なので日帰り出来ます。

会津駒ヶ岳の登山口近くの温泉

会津駒ヶ岳の登山口近くに小豆温泉や尾瀬檜枝岐温泉があります。湯量豊富な天然温泉の露天風呂が楽しめます。

小豆温泉 花木の宿

 露天風呂は二つあり「木の湯 露天風呂」と「石の湯 露天風呂」。離れ(別棟)には部屋付き露天風呂があります。

泉質は単純温泉(低張性弱アルカリ性高温泉)、62.1℃、300リットル/分の湯量です。

食事は南会津の四季折々の旬の素材を生かした懐石料理です。

4名以上で会津鉄道の会津高原尾瀬口駅から送迎あり。

登山口の御池まで車で26分。

アクセス

会津高原尾瀬口駅~駒ヶ岳登山口~御池~沼山峠 花木の宿前下車。

旅館ひのえまた

旅館ひのえまたの温泉は総ひのきの露天風呂、泉質はアルカリ性単純泉(無色無臭)、64.7℃(気温16.4℃時)で湧出量は280㍑/min(動力揚湯)。

代表的な山人料理の他、 地元で採れた山菜やきのこ、岩魚・山椒魚などの山川の幸、会津の名産品であるエゴマをまぶしたお餅「はっとう」、檜枝岐の手打ちそばを独自の調理方法でいただけます。登山やハイキングなにはおにぎり弁当も。

滝沢登山口まで2.6km、車で7分です。

アクセス

会津高原尾瀬口駅~駒ヶ岳登山口~御池~沼山峠 檜枝岐中央バス停下車、徒歩1分。

日帰り入浴

  • 入浴時間:12時~15時
    ※休止することもあり
  • 料金:大人600円

会津駒ヶ岳の天気の特徴

7月上旬の会津駒ヶ岳

夏の会津駒ヶ岳は7月でも豊富な残雪

春 6月では2mを超える雪が残っています。 気温は4度程度に下がることもあります。で、天気は変わりやすく、雨や曇りの日が多いです。

夏7月の上旬では残雪が多く山頂周辺の池塘は出現していません。会津駒ヶ岳は7月下旬からの登山がお薦めです。

登山口の桧枝岐村の1か月の降水量は5月89.5mm、6月121.8mm、7月207.4mm、8月166.9mm、9月160.1mm、10月155.1mmです。

山の天気予報は難しい
山の天気予報は難しい

お薦めの天気予報

テレビで流れる天気予報やネットで得られる無料の天気予報は、一般的に平地を対象としたものです。 そのため、晴れの天気予報が出ていても、山ではガスってしまうことはよくあることです。 

そこで、おすすめなのがtenki.jpの有料バージョン(+more)です。これは、月間100円と安いですが、高層天気の予報のため精度が高いです。また、山の天気予報(月額300円)を併用すると更に精度が高まります。

樹海ラインの開通で発展した檜枝岐村

かつて、平家の落人が住みついた”秘境”と言われるほど奥深い山村であった檜枝岐村は、伊南川に沿って樹海ラインと呼ばれる国道352号が通り大変走りやすいアクセスを提供しています。それにより会津駒ヶ岳登山も容易になりました。

戦後間もない頃までは、幅1メートルほどの道しかなく、冬には2メートルを超える豪雪地帯のため完全に閉ざされた秘境というイメージが付いてしまいましたが、樹海ラインの開通と共にそういった負のイメージは払拭され、伝統文化の息吹を感じることが出来る遺産が数多く残っています。

歴史民俗資料館を尋ねれば、先人の暮らしぶりを知ることが出来ます。そして、六地蔵、板倉、橋場のばんばなど歴史的価値のあるものを体感することが出来ます。

京訛りの言葉が残るこの地域では、平家の末裔を物語る「星」、「平野」、「橘」の姓が多いと言います。その歴史の一端に、愛宕神社・鎮守神社の重要無形民俗文化財に指定されている舞台において5月12日、8月18日、9月第1土曜日に古典歌舞伎である檜枝岐歌舞伎が奉納されます。

同所に鎮守神(駒形大明神と燧大権現)、疱瘡神が祀られています。また、村人たちは会津駒を女山と呼び、弘仁7年(西暦816年)山上に駒嶽大明神を祀り、山岳信仰の対象としていました

各種情報

会津駒ヶ岳登山ツアー

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登山地図のスマホアプリ

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    昭文社から販売されています。山と高原地図ホーダイ - 登山地図ナビアプリ 定額(500円/月 or 4800円/年)で61エリアの「山と高原地図」が使い放題。山と高原地図[地図単品購入版]地図1エリア 650円。

会津駒ヶ岳周辺の気温

最高気温平均気温最低気温
1月-6.7-10.5-14.5
2月-6.6-10.3-14.7
3月-2.3-7.1-11.6
4月5.1-1.2-6.2
5月11.74.9-1.2
6月15.19.13.9
7月18.512.78.2
8月18.913.69.0
9月15.09.45.2
10月8.93.0-1.6
11月3.0-2.6-6.9
12月-3.1-7.5-11.5

会津駒ヶ岳登山のための装備と服装

軽アイゼン12本歯アイゼンピッケルサングラスツェルト
1月×
2月×
3月×
4月×
5月×
6月×
7月×××
8月××××
9月××××
10月××××
11月××
12月
必須:◎ あった方が良い:○ あったら良い:△ 必要ない:× 

服装や装備品のチェックリスト

登山地図必須 会津駒ヶ岳は分岐は多くありませんが、コースタイムが長いの道迷いを起こすと大変です。登山地図を持って行かないと命のリスクもあります。
レインウェア必須 山の天候は急変します。天気予報で晴が出ていてもレインウェアは必須です。
また、防寒着としても使えます。セパレートタイプの通気性と防水性を兼ね備えたゴアテックスがベストです。
帽子必須 会津駒ヶ岳の稜線では直射日光が強烈に降り注ぎます。日よけ用のつばが広く軽いものをお奨めします。寒さが厳しいときは、耳を覆うニット製、冬山ではフルフェイスタイプをお奨めします。
日焼け止め必須 標高2,133mの会津駒ヶ岳ですが、 会津駒ヶ岳では樹林帯を抜け森林限界を超えると紫外線が強いので必帯です。
飲料水必須 天気の良い日は少し多めに持って行きましょう。
会津駒ヶ岳では滝沢登山口ルートに水場が1っか所あるだけです。各登山口で確保していきましょう。
ヘッドランプ必須 アクシデントで暗くなってからの行動を強いられた場合には必携です。また、暗い内から山頂まで登り、御来光を拝むためにも必要です。
行動食必須 登山のコースタイムが長いので多めに持っていきましょう。パン・ナッツ類・野菜ジュース、飲むヨーグルトなど立ち休憩で食べられるものがお薦めです。会津駒の小屋に宿泊するなら食事提供がないので、夕食・朝食も必要です。
パックカバー必須 ザックが濡れないようにするためのザックカバーは雨に日には絶対必要です。ザックカバーも雨衣と同様に防水性が衰えてきます。時折、防水スプレーをするなどのメンテナンスが必要です。
救急薬品必須 切り傷、擦り傷にカットバン、絆創膏を持っていくと良いでしょう。虫刺され薬品も。トクホンのような筋肉痛に効く貼り薬もあると助かります。
ティッシュペーパー必須 登山中いきなりしたくなってしまった場合など、止血用などの万が一の時のために必帯です。
防寒着必須 薄手のフリース,セーター、軽いダウンジャケット。
会津駒ヶ岳では、7~8月でも最低気温が8度近くまで下がることがあります。
軽くて保温性の高いものを選びます。ゴアテックスのレインウェアを
その上に着ると更に保温性が高まります。
手袋あったら良い
耳栓あったら良い 会津駒の小屋に宿泊する場合、大部屋です。耳栓があると他人のイビキの音に悩まされません。
カメラあったら良い 360度の大パノラマや高山植物、紅葉など山旅の思い出にぜひどうぞ。ウエストポーチに収納出来る大きさであることが望ましいです。
ビニール袋あったら良い ごみ入れとして、使用前の下着入れ、使用後の下着入れとして5~6個あると便利です。
保険証(コピー)あったら良い 事故や遭難時に必要です。
サブザックあったら良い 会津駒の小屋に荷物を置いて、サブザックで会津駒ヶ岳や中門岳のピストンが出来ます。水、カッパなど必要最低限が入る軽いコンパクトなものを使用すること。
シュラフカバー不要

名前の由来

「ひうち」は「火打ち」を意味し、全国各地に存在する「火打」と同様、まさに活火山であることから転訛したと考えられています。

また、他の説として深田久弥は「日本百名山」の中で「燧という名前は、俎嵓北東面に鍛冶鋏の形をした残雪が現れるから」だと言います。

また、日本山岳会の「新日本山岳誌」では「檜枝岐村から火打鋏の白い雪形を望むことが出来る。」と記されています。つまり、雪形が名前の由来になったと言うのです。

開山の歴史

尾瀬を横切る道は中世以前から人と物資が行き交っていたと言わています。しかし、燧ヶ岳を霊山として修験者が山駆けをしたり、禅定者が列をなして登拝するといったことは無く、あくまでも燧ヶ岳の北麓の檜枝岐村の人々による素朴な信仰であった様です。

「檜枝岐村史」に次のような一節があります。吹雪のある寒い夜、火種を絶やして困っている杣人の家に老人が一夜の宿色を求めて訪ねてきます。杣人は「火がなく寒いですが、それでもよければどうぞお入りください。」と老人を家に招き入れます。老人は「赤い石」を杣人に授け、火を起こすように促します。暖炉に火が灯ると、いつの間にか老人はいなくなります。村人たちは、「赤い石」を火打石(燧石)と呼び、老人を燧大権現様として山上に祀ったと言います。

名前の由来ともなった逸話ですが、実際に俎嵓山頂には燧大権現を祀った祠が建てられています。これは尾瀬の開山者として有名な平野長蔵が19歳の時、西暦1889年(明治22年)に山上に祀ったものです。平野長蔵は、燧ヶ岳に登山道を作ると共に尾瀬の最古の山小屋・長蔵小屋を開き、尾瀬に一生を捧げた人物です。まさに燧ヶ岳の開山は、平野長蔵によるものと言うことが出来るでしょう。

参考文献:名山の民俗史