谷川岳とは

谷川連峰は、上信越国立公園の東部に位置し、北側の清水峠から南西方向の三国峠へ連なる一大山塊を形成しています。谷川岳を盟峰(トマノ耳・オキノ耳)を中心として北方向に一ノ倉岳~茂倉岳~七ッ小屋山と続き、清水峠で馬蹄形に南進して朝日岳~笠ヶ岳~白毛門と続いています。また、南西方向には万太郎山~仙ノ倉山~平標山へ主稜線が走っています。

最高峰は仙ノ倉山の標高2026mで、中級山岳地帯と言えますが、本州の中央部を貫くように走る脊梁山脈の一部であるという特質から日本海側と太平洋側を分け、利根川、信濃川水系の分水嶺になっています。

谷川岳の山容の特徴

非対称山稜

越後側と上州側では著しい山容の違いが見られ、越後側は穏やかなすそ野を広げて草原地形を形成するのに対し、上州側では風雨や降雪による浸食作用が激しく、一ノ倉沢などの荒々しい岩稜がそそり立つ「非対称山稜」を形成しています。

ちょうど北アルプスの白馬岳に似ています。標高は2000m前後の山並みとはいえ、北アルプス・南アルプスの様なアルペン的景観を見せています。

700人超えの遭難者

一ノ倉沢やマチガ沢の急崖に挑むクライマー達から谷川岳が「魔の山」や「墓標の山」と恐れられるのは、大正以降で700人を超える遭難者が出たからにほかありません。世界的にみても特筆した遭難者数は、一般道で起こっているのではなく、岩場での墜落事故です。

谷川岳の大岩壁は、穂高連峰、剱岳と並んで日本三大岩場の一つであり、それが谷側岳の最大の魅力ともいえます。岩壁は、谷川岳の東面に一ノ倉沢、マチガ沢、幽ノ沢があり、一ノ倉沢が最大の標高差で、800から900m あるとされています。また、谷川本谷から北西方面へそそり立つ俎嵒(マナイタグラ)山稜にも岩壁が連なっています。

こうしたロッククライマーによる遭難続出に対して、群馬県では、昭和42年1月から谷川岳遭難防止条例が施行され、谷川岳登山指導センターに登山届を提出することが義務づけられました。

双耳峰の谷川岳

双耳峰の谷川岳

谷川岳の山頂部はトマの耳(標高1,963m)、オキの耳(標高1,977m)の双耳峰になっています。オキの耳には谷川富士の別名があります。これは、オキの耳に富士浅間神社の奥社に富士権現が祀られ、浅間岳と呼ばれていたことが由来です。

一方、トマの耳は薬師如来が祀られ薬師岳と呼ばれていたようです。上州側の田沼付近から望む谷川岳は、その双耳峰を称して「耳二つ」と呼ばれています。ちょうど犬や猫の耳の様に見える所からきているとされています。

谷川岳の地図

谷川岳のアクセス

谷川岳
谷川岳のアクセスと駐車場
谷川岳のアクセスと駐車場

谷川岳の山小屋

谷川岳
谷川岳肩の小屋
谷川岳肩の小屋

谷川岳の登山コース概要

谷川岳-天神尾根コース

天神尾根からオジカ沢の頭と川棚ノ頭
天神尾根からオジカ沢の頭と川棚ノ頭

JR上越線土合駅の地下ホームで電車を降り、湯檜曽川に沿って清水街道を歩き土合橋を渡り、防雪シェルターを抜けると、谷川岳ロープウェイ土合口駅に着きます。

JR上越新幹線「上毛高原」またはJR上越線「水上駅」から谷川岳ロープウェイ行きのバスを利用するのも便利です。マイカーの場合には谷川岳ベースプラザの大型駐車場を利用します。

谷川岳ロープウェイを使えば、標高750mの土合口駅から標高1,320mの天神平駅に一気に登ります。しかし、ハイシーズンの土日や紅葉の時期は、登山者ばかりではなく観光客も多く訪れるため、ロープウェイ乗り場は大混雑となります。余裕を持った行動をするためには始発に乗ることをお薦めします。

天神平から天神山を巻くようにトラバース道がありますが、天神平からさらにリフトで天神山に登り、稜線を歩くコースを取ります。

天神山には多くの観光客がハイキング目的で訪れ、天神山展望台からの景色を楽しんでいます。その近くに天満宮が祀られています。江戸時代には谷川温泉の富士浅間神社で身を清め、保登野沢を遡上し天神峠を経て谷川岳を目指したと言われています。

天神山から北西方向に天神尾根が谷川岳に伸びています。峻嶺峨々として聳える谷川岳は、多くの遭難者が眠る「魔の山」として恐れられていますが、ロープウェイを使って登ることが出来る天神尾根コースは、簡単な鎖場はあるものの、登山初心者や中高年向きのルートと言えます。

天神山から展望の開けた稜線を進み、樹林帯へと下りて行きます。樹林帯を下り切った所で、天神平からのルートと合わせ、樹林帯の緩い登りが続きます。
樹林帯の中の登山道は良く整備され、とても快適に歩けます。谷側が崩落しかけている所には安全確保用に鎖が付けられていますが、特に危険ではない為、あまり使われていないようです。

いわお新道分岐には10人ほど入ると一杯となる広さの熊穴沢避難小屋があります。
熊穴沢避難小屋から次第に樹層が変わり、登山道の周辺が背の低い樹木に変わるにつれ登山道の傾斜は増し、岩場が現れてきます。
ロープや鎖が架けられた岩場がありますが、高度感は無く、雨天時などのスリップ防止用に付けられた物で、難易度は決して高くありません。

岩場の通過が終わると、辺り一面笹の葉で覆われている中の登りでます。
「天狗の留まり場」と名付けられた岩を過ぎると、木道が「谷川岳肩の小屋」まで続きます。

「谷川岳肩の小屋」から標高1,963mトマノ耳へは数分で到着です。
トマノ耳からは360度の大パノラマが広がり、オジカ沢ノ頭から川棚ノ頭へと南西に伸びる俎嵒山稜や西黒尾根の稜線は格別の美しさです。万太郎山の遠方に苗場山、北方向にはオキノ耳・一ノ倉岳・朝日岳、更にその遠方に巻機山、東方面には至仏山・上州武尊山・赤城山・皇海山などの日本百名山の名だたる山々を見渡せます。

トマノ耳からオキノ耳へ向け稜線を進むと10分ほどで、谷川岳の最高峰である標高1,977mオキノ耳に到着します。

コースタイム

  • 登山:天神山⇒オキノ耳 2時間25分
  • 下山:オキノ耳⇒天神山 1時間50分

難易度 1/10

体力  1/10  日帰り

谷川岳-西黒尾根コース

西黒尾根で谷川岳
西黒尾根で谷川岳

谷川岳ロープウェイ土合口から車道を歩くと登山指導センターがあり、水場、登山届、トイレなどが完備されています。 さらに車道を5分ほど登ると西黒尾根登山口です。

西黒尾根コースは、1931年(昭和6年)にJRの清水トンネルが出来ると、交通の便が一気に良くなり、夜行列車を利用した登山者が列を成すほどのメインコースでした。 谷川岳ロープウェイが出来ると人気は天神尾根ルートに取って代わりましたが、北アルプス烏帽子岳のブナ立尾根、南アルプス甲斐駒ヶ岳の黒戸尾根と並ぶ日本三大急登の一つとして現在でも根強い人気のあるルートです。

登山口から樹林帯の中の単調の急坂が2時間ほど続きます。

樹林帯を抜けた辺りから西黒尾根は次第に稜線が狭くなり、同時に素晴らしい展望が開けてきます。
西黒尾根と東尾根との間に作られた絶壁に、東方向に刻まれたマチガ沢の絶景は、このコースの醍醐味です。

稜線が狭くなると同時に、岩場の傾斜が増し、「ラクダの背」と呼ばれる小ピークの下に三か所の鎖場があります。
特に最初に現れる鎖場が核心部で、8mほどの長さがありますが、高度感はさほどなく、難易度は高くありません。 しかし、岩がツルツルして滑るため下山時は要注意です。

三か所の鎖場を登り切ると「ラクダの背」に到着します。「ラクダの背」はザックをおろして休めるほどの広さがあり、しばらく谷川岳のトマノ耳とオキノ耳の絶景を楽しんでから出発します。

「ラクダの背」から少し下った所を「ガレ沢のコル」と呼び、ここで右方向に巌剛新道を分けます。 「ガレ沢のコル」から稜線を進み、少し登った所からごつごつした岩場の登りになります。 岩場には長い鎖が架かっていますが、傾斜は緩く高度感はありません。

岩場を登り切ると再び谷川岳のオキノ耳、トマノ耳が姿を見せ、左上にはザンゲ岩が見えてきます。 狭い岩場の稜線を進み、ザンゲ岩下部にあるツルツルと滑る一枚岩を慎重に登ると、山頂はあと少しです。

十字架の様に見えるケルンの上に作られた指導標が見えると、長かった西黒尾根も終わりです。
ケルンの下に立つ西黒尾根指導標の看板には、「初心者下山不向き、中級者以上(健脚者向き)」と書かれています。

コースタイム

  • 登山:谷川岳ロープウェイ山麓駅⇒オキノ耳 4時間20分
  • 下山:オキノ耳⇒谷川岳ロープウェイ山麓駅 3時間30分

難易度 4/10

体力  4/10 日帰り

谷川岳-一ノ倉沢コース

一ノ倉沢
一ノ倉沢

国道291号線(谷川岳登山指導センター下 ~ 一ノ倉沢)の 全長約3㎞ 区間は通行規制が年間を通じ行われています。マイカーやタクシーで入ることはできません。

谷川岳ロープウェイ土合口駅ロータリーと一ノ倉沢出合間に電気バスが運行されています。
みなかみ町では一ノ倉沢までハイキングすることを推奨していますが、無料(ガイド料500円徴収)で、群馬県の委託を受けて関越交通が電気バスを走らせています。1日7往復で、1回について8人まで乗車出来る小さなバスなので、基本的には歩いて行くことが原則です。

一ノ倉沢周回ハイキングコースを湯檜曽川にかかる土合橋脇の車道を入る所から案内します。 新道は土合橋脇を入り100mほど車を進めると通行止めになっています。
湯桧曽川の増水により林道が崩壊した為で、6台ほど駐車可能なスペースに車を停め、林道を進みます。

20分ほど林道を歩くと東屋が建つ広い駐車可能なスペースがあり、本来ならここまで車で来ることができるはずです。
東屋の先から登山道となり、直ぐに新道と旧道(谷川岳ロープウェイ土合口駅から続く車道)への分岐に出ます。 ここでは旧道に向かい、傾斜のきつい上り坂を20分ほど上がると車道へ出ます。

平坦な車道を進むと、ほどなくしてベンチが設置されたマチガ沢に着きます。 そのすぐ先の巌剛新道の登山口を左に見送り、20分ほどで一ノ倉沢です。一ノ倉沢出会には30台ほどの駐車場と水洗トイレが完備し、ベンチが複数設置されています。

一ノ倉沢正面の岩場が「一ノ倉」と呼ばれる理由は、当地の方言では岩や岩壁のことを「クラ」と呼び、谷川連峰随一というに相応しい壮絶極まりない岸壁に誰しもが圧倒されることからこの名が付けえられた様です。
また、この岩場は世界的に見ても登攀困難(グレード6級)で、北アルプスの剱岳、穂高岳と並んで日本三大岩場として知られています。

一ノ倉沢出会から先はゲートがあり、一般車は入れません。
ゲートからは舗装のされない林道が続き、幽ノ沢出会を過ぎた所には「ブナのしずく」と呼ばれる水場があり、冷たい水が滴り落ちています。

林道からJR見張小屋に向け急坂を下りると、湯桧曽川沿いを走る新道と交差し、その左手にはJR見張小屋が建っています。
新道を右方向に向えば土合方面です。

途中、湯桧曽川沿いを歩く所があり、増水についての注意書きが各所に張られています。2000年8月6日に鉄砲水が発生し、31人が巻き込まれ、13人が流され、1人死亡、10人が軽傷を負う事故が発生しました。上流部で雨が降っていたこと、流木や土石の決壊、雪渓の決壊などが原因と考えられています。湯檜曽川では毎年3、4回の鉄砲水が出ると言うことで、水上町では新道沿いに複数の立て札を立てて注意を喚起しています。

三つの沢を越えると東屋の建つ広い場所に戻ります。

コースタイム

  • 周回: 3時間00分

難易度 1/10

体力  1/10  日帰り

谷川岳の氷河地形

氷河の跡
氷河の跡

西黒尾根のザンゲ岩のすぐ下に氷河の跡と呼ばれる一枚岩があります。その岩に同じ方向に削られたキズが出来ています。擦痕と呼ばれるこのキズは、氷河と共に流れる岩が付けたものであることが判明しています。

又、一ノ倉沢・マチガ沢・幽ノ沢には氷河によって削り取られた堆積物の高まりであるモレーンが確認されています。最近の研究により、谷川岳に氷河が存在した事は間違いない事実となっています。

谷川岳の日帰り登山は出来る?

谷川岳ロープウェイを使えば 天神尾根のピストンでゆっくり歩いても 4時間30分のコースタイムです。 西黒尾根から登っても 約8時間あれば下山できます。 従って 谷川岳の日帰り登山は十分可能です。

谷川岳の登山口近くの温泉

谷川岳の北東に位置する 宝川温泉は 湯量豊富でたくさんの露天風呂を楽しむことができます。また、谷川岳ロープウェイ近くのゆびそ温泉は登山口 までのアクセスが大変便利です。

ゆびそ温泉 ホテル湯の陣

ゆびそ温泉 ホテル湯の陣

川沿いの露天風呂「龍の湯」は魅力的で、弱アルカリ性低張性高温泉の露天風呂は思いのほかすいています。

マイカーで谷川岳ロープウェイまで約5分です。大勢の宿泊者がいるからでしょうか、バイキング料理のメニューの種類がすこぶる豊富です。

アクセス

水上駅より路線バス。10分、ゆびそ温泉バス停下車、徒歩2分。

日帰り入浴

  • 料金:大人980円 小人680円

宝川温泉・汪泉閣

約100畳の広さの混浴露天風呂・摩訶の湯
約100畳の広さの混浴露天風呂・摩訶の湯

湯量豊富なので 源泉かけ流しの大きな露天風呂が川沿いに2つあります。 映画「 テルマエロマエ」の撮影地になったことでも 知られています。 近年は海外からの旅行客が増えています。

宝川温泉・汪泉閣は、武尊山の西に位置する温泉です。昭和38年に宝川温泉・汪泉閣が発行した「藤原風土記」には次の様な記載があります。

「日本武尊が奥州へ東征した際、武尊山の西側に流れる川を遡上し、途中の滝で21日間の水垢離をした後、武尊山へ登った。しかし、日本武尊は登山後、疲労と病気で窮地に陥ったが、白鷹に導かれて温泉を発見し、湯治により全快した。」と記しています。

それが宝川温泉であり、古くは「白鷹の湯」と呼ばれていたというのです。また、日本武尊がこの川や滝を自分の名前一つ「尊」の字を付けて「武尊川」「裏見ノ滝」と名付けたということになっています。

谷川岳ロープウェイまで約16km 車で25分。

アクセス

水上駅より路線バス。1,150円 宝川入口下車。

日帰り入浴

  • 入浴料1500円、休憩処、売店、食堂などもあります。
  • 営業時間 10:00~16:30(最終受付16:00)

谷川岳の天気の特徴

秋の谷川岳
秋の谷川岳

夏の谷川岳は晴天の確率がやや低い

谷川岳は、気候の境界に位置するため、冬季には季節風の影響により大量の雪が降ります。登山に際して、関東平野はよく晴れていても、日本海側の気候の影響を受けるので新潟県の天気予報も要注意です。

夏の谷川岳はガスが入り易いですが、秋には快晴の日が増えます。

みなかみ町の1か月の降水量は5月114.5mm、6月152.0mm、7月215.8mm、8月210.6mm、9月199.9mm、10月140.5mm、11月90.9mmです。

山の天気予報は難しい
山の天気予報は難しい

お薦めの天気予報

テレビで流れる天気予報やネットで得られる無料の天気予報は、一般的に平地を対象としたものです。 そのため、晴れの天気予報が出ていても、山ではガスってしまうことはよくあることです。 

そこで、おすすめなのがtenki.jpの有料バージョン(+more)です。これは、月間100円と安いですが、高層天気の予報のため精度が高いです。また、山の天気予報(月額300円)を併用すると更に精度が高まります。

各種情報

谷川岳登山ツアー

  • 谷川岳|登山・トレッキングツアー

お問い合わせ

登山届提出

登山地図のスマホアプリ

  • 山と高原地図のスマホアプリ
    昭文社から販売されています。山と高原地図ホーダイ - 登山地図ナビアプリ 定額(500円/月 or 4800円/年)で61エリアの「山と高原地図」が使い放題。山と高原地図[地図単品購入版]地図1エリア 650円。

谷川岳周辺の気温

最高気温平均気温最低気温
1月-5.7-9.5-12.8
2月-5.0-9.2-12.8
3月-1.4-6.2-9.9
4月6.30.1-5.1
5月11.85.60.1
6月15.19.65.2
7月18.713.49.5
8月20.214.610.7
9月15.410.46.9
10月9.44.20.3
11月3.8-1.6-5.6
12月-2.1-6.8-10.0

谷川岳登山のための装備と服装

軽アイゼン12本歯アイゼンピッケルサングラスツェルト
1月×
2月×
3月×
4月
5月××
6月××××
7月××××
8月××××
9月××××
10月×××
11月××
12月
必須:◎ あった方が良い:○ あったら良い:△ 必要ない:× 

服装や装備品のチェックリスト

登山地図必須 登山地図を忘れると道迷いの原因に!谷川岳ロープウェイから山頂をピストンするだけならほぼ道迷いはありませんが、他のルートを使う場合には分岐が多く登山地図は必携です。 登山地図を持って行かないと命のリスクもあります。
レインウェア必須 山の天候は急変します。天気予報で晴が出ていてもレインウェアは必須です。
また、防寒着としても使えます。セパレートタイプの通気性と防水性を兼ね備えたゴアテックスがベストです。
帽子必須 谷川岳ロープウェイ山頂駅に降りると直射日光が強烈に降り注ぎます。日よけ用のつばが広く軽いものをお奨めします。寒さが厳しいときは、耳を覆うニット製、冬山ではフルフェイスタイプをお奨めします。
日焼け止め必須 仙ノ倉山の標高2026mが谷川岳の最高峰ですが、 稜線では日光を遮る木々が一切ありません。夏季は紫外線が強いので必帯です。
飲料水必須 天神尾根コース、西黒尾根コースともに水場はありません。ただし谷川岳肩の小屋で飲料水を購入できます。天気の良い日は少し多めに持って行きましょう。登山行程に合わせて水の量を調整するとよいでしょう。
ヘッドランプ必須 アクシデントで暗くなってからの行動を強いられた場合には必携です。また、谷川岳肩の小屋に宿泊し暗い内から登山をする場合にも必要です。
行動食必須 天神尾根コースのコースタイムはさほど長くありません。パン・ナッツ類・野菜ジュース、飲むヨーグルトなど立ち休憩で食べられるものがお薦めです。
パックカバー必須 ザックが濡れないようにするためのザックカバーは雨に日には絶対必要です。ザックカバーも雨衣と同様に防水性が衰えてきます。時折、防水スプレーをするなどのメンテナンスが必要です。
救急薬品必須 切り傷、擦り傷にカットバン、絆創膏を持っていくと良いでしょう。虫刺され薬品も。トクホンのような筋肉痛に効く貼り薬もあると助かります。
ティッシュペーパー必須 登山中いきなりしたくなってしまった場合など、止血用などの万が一の時のために必帯です。
防寒着必須 薄手のフリース,セーター、軽いダウンジャケット。
谷川岳では、7~8月でも最低気温が10度近くまで下がることがあります。
軽くて保温性の高いものを選びます。ゴアテックスのレインウェアを
その上に着ると更に保温性が高まります。
手袋あったら良い
耳栓あったら良い 谷川岳肩の小屋に泊まる場合、大部屋となります。耳栓があると他人のイビキの音に悩まされません。
カメラあったら良い 360度の大パノラマや高山植物、紅葉など山旅の思い出にぜひどうぞ。ウエストポーチに収納出来る大きさであることが望ましいです。
ビニール袋あったら良い ごみ入れとして、使用前の下着入れ、使用後の下着入れとして3~4個あると便利です。
保険証(コピー)あったら良い 事故や遭難時に必要です。
サブザック不要
シュラフカバー不要

谷川岳の登山史

信仰の山、生活の山から「近代スポーツの山・谷川岳」への転機は1920年(大正9年)のことでした。谷川岳縦走から東面の岩場へ目が向けられ、1927年(昭和2年)大島享吉が集中的にそそいだ情熱は谷川岳登山隆盛の発端となりました。 1931年(昭和6年)の清水トンネルの開通は更に多くのクライマー・登山者を惹きつけ、尊い犠牲を出しながら現在の登攀ルートが開拓されました。

大島の「主として谷川岳の岩璧の下調べに行きたるなり、すべては尚研究を要すべし。近くて良い山なり」(慶応山岳部報、登高行7号)は、1930年の谷川岳登攀史上記念すべき年を迎えさせ、天才クライマー、東北帝大の小川登喜雄らの登場となる。7月小島ら(青学大)が二ノ沢左俣を一ノ倉沢初登攀に成功すると、数日後小川パーティーは初見参で3ルンゼを初登攀し、幽ノ沢、マチガ沢と初登攀を重ね、冬季初登攀も次々と成功させました。

虹芝寮をベースとした成蹊高校の渡辺、高木コンビは1933年十二月、2ルンゼの冬季初登攀後吹雪の中で下降路を誤り、幽ノ沢に迷い込み左俣大滝を雪崩と共に墜落するも、奇跡の生還を果たす。大戦後社会人山岳会の活動が再開し、コップ状岩壁の初登攀競争が埋め込みボルトの日本初使用で終了し、1959年(昭和34年)8月不可能視されていた一ノ倉沢の象徴、日本の大岩壁を代表する衝立岩が南、藤パーティーに陥落され、谷川岳周辺の岩場も尾根も大盛況となりました。

谷川岳開山の歴史

古代から中世にかけての谷川岳山岳信仰の史実はよくわかっていません。少ない資料の中から一ノ倉沢などの大岩壁が修験者たちの山岳信仰の霊場として賑わっていたことが伝えられています。

オキの耳には富士権現を祀る富士浅間神社の奥宮が鎮座しています。谷側温泉近くにある里宮の創建は、康暦2年(西暦1380年)である為、富士浅間信仰と結びつき、中世後期から谷川岳へ参拝者がいたと思われます。

参考:名山の文化史

清水越新道

清水峠を越える道は、群馬県と新潟県を結ぶ交易路として、古くから使われていました。戦国時代の武将・上杉謙信がこの峠を越えたことが文献に記されていたり、江戸時代になってからの文献(越後国細見図)にもこの名前が登場します。

江戸時代には、歩く人もあまり多くなかった清水峠越えの道は、1881年(明治14年)に、清水街道として着工され、1855年(明治18年)に完成しています。当時の主要交通機関は馬車で、その通行には十分な幅の道であった様です。しかし開通後、土砂崩れで通行止めとなり、豪雪地帯ゆえの雪崩の多さのため道は寸断されてしまい、廃道の一途を辿る運命となりました。

そして、現在でもその名残として国道291号線が清水街道してと名前を留めています。少し混乱しますが、地図に書かれている「新道」が清水峠を越える古くからの道で、旧国道(清水街道)と書かれているのが、前述した明治18年に完成した道のことです。