立山とは
飛騨山脈の北部に位置する立山は、雄山(おやま)、大汝山(おおなんじやま)、富士の折立(ふじのおりたて)の三峰の総称で、その最高峰は標高3.015mの大汝山です。立山三山と言えば、別山、雄山、浄土山を指しています。立山という山名は、越中平野に立ちはだかる様に峻立することから付いたとされています。
立山連峰は、飛騨山脈(北アルプス)の北部の連峰群を呼ぶもので、黒部川の西側に連なる山域の群峰で、北は、僧ヶ岳から、南は、北ノ俣岳、黒部五郎岳を経て、三俣蓮華岳までです。東側の後立山連峰と対峙しています。
※ 富山県庁生活環境文化部自然保護課 TEL:076-444-3393
- 1. 立山の地図(位置)
- 2. 立山の立体的な位置関係を知ろう
- 3. 立山の山小屋
- 4. 立山のアクセス
- 5. 立山の登山コース概要
- 5.1. ① 室堂ターミナルから雄山(立山)ルート
- 5.1.1. 室堂ターミナルから雄山(立山)ルートの難易度
- 5.2. ② 立山縦走ルート
- 5.2.1. 立山縦走ルートの難易度
- 5.3. ③ 室堂ターミナルから浄土山・龍王岳ルート
- 5.3.1. 浄土山・龍王岳ルートの難易度
- 5.4. ④ 五色ヶ原から立山室堂ルート
- 5.4.1. 五色ヶ原から立山室堂ルートの難易度
- 5.5. ⑤ 立山から大日岳ルート
- 5.5.1. 立山から大日岳ルートの難易度
- 5.6. ⑥ 立山室堂ハイキングルート
- 5.6.1. 立山室堂ハイキングルートの難易度
- 5.7. ⑦ GW「雪の大谷ウォーク」と立山登山
- 5.7.1. GW「雪の大谷ウォーク」と立山登山の難易度
- 5.8. ⑧ 立山の紅葉ハイキング
- 5.8.1. 立山の紅葉ハイキングの難易度
- 6. 立山の温泉
- 7. 立山に泊まる
- 8. 黒部アルペンルート扇沢の近くに泊まる
- 9. 立山のカール地形ー山崎カール
- 10. 立山の有形文化財を巡る
- 10.1. 日本最古の山小屋・立山室堂
- 10.2. 玉殿の岩屋
- 11. 立山室堂ターミナル3Fの施設
- 11.1. 雄山神社 峰本社 旧社殿
- 11.2. 立山開山伝説
- 11.3. 「佐伯有頼」の像
- 12. 立山カルデラ
- 12.1. 立山カルデラに作られたの砂防堰堤の歴史
- 12.2. 立山カルデラの新湯から玉滴石が産出
- 13. 各種情報
- 13.1.1. 立山登山ツアー
- 13.1.2. 役場
- 13.1.3. 登山届提出
- 13.1.4. 登山地図のスマホアプリ
- 14. 立山山頂周辺の気温
- 15. 立山へ登るための装備と服装
- 16. 服装や装備品のチェックリスト
- 17. 立山開山の歴史
- 17.1. 日本三霊山
- 17.2. 山岳信仰の山・立山
- 18. 立山曼荼羅
立山の地図(位置)
立山の立体的な位置関係を知ろう
立山の山小屋
立山のアクセス
立山の登山コース概要
立山は、現在でも地獄谷から噴煙を上げる活火山で、氷河によって削り取られた複雑な地形がより魅力的な山容を作り出しています。
これらの山々と真砂岳、別山(べつざん)を縦走し、室堂へ戻るルートは鎖場などの危険個所は無く登山初心者でも安心して歩くことが出来るコースといえます。
室堂ターミナル周辺には散策ポイントが複数あり、そこを歩くだけでも十分楽しめます。特に3つある池(ミクリガ池、ミドリガ池、血の池)と噴煙が立ちこめる地獄谷、立山信仰の玉殿岩屋などは、ぜひ回ってみたい所です。
地獄谷周辺は有毒ガスの発生がある為、通行禁止となることもあります。詳しくは長野自然環境事務所へお問い合わせください。
① 室堂ターミナルから雄山(立山)ルート
室堂ターミナルから雄山(立山)までは、標高差553mと比較的小さく、簡単な岩場のある登山初心者向きルートです。
雄山神社峰本社が建つ雄山山頂(立山)には、室堂ターミナルから一ノ越(いちのこし)を経由して約2時間余りで登頂することが出来るため登山者ばかりではなく、一般の観光客もスニーカーで登れてしまうような山です。
しかし、そういった人々が装備不十分や体力不足、天候の急変などの理由により事故を起こすケースが増えているようです。
登山経験に自信がないなければ、無理せず往路を戻ることをおすすめします。
室堂ターミナル(ホテル立山)にはレストラン、売店、喫茶室、トイレなどがあるので登山前に利用するとよいでしょう。また、ザ・ノースフェイス・ホテル立山店が併設されているので登山用具を忘れた場合に便利です。
ターミナルを出ると直ぐに「立山玉殿の湧水」と書かれた石碑が目に飛び込んできます。 全国名水百選にも選ばれた湧出量が豊富なおいしい水です。
一ノ越(いちのこし)までは石畳の遊歩道を約1時間ほど歩きます。傾斜が次第にきつくなった所に小さな祠・祓堂が祀られています。祓堂はその昔、修験者達がここで身を清めて登ったとされる場所です。小休止にちょうどよい所です。
一ノ越は十字路になっている峠で、歴史とロマンの峠・ザラ峠へ向かう稜線が南方向に伸びています。ザラ峠は戦国時代の武将佐々木成政が厳冬期に越えたと伝わる峠です。
一ノ越山荘前の広場にある公衆トイレの脇からキツイ岩登りのルートになります。約20分ほどで休憩最適地の平らな所に到着します。
振り返ると室堂平、大日岳、龍王岳の展望が広がっています。 岩場の傾斜は相変わらずきつくペンキマークを頼りに登ると雄山神社が建つ雄山(立山)山頂に到着します。
10月初旬に山頂付近で約5cmの初冠雪を記録する年があります。高山なので登山装備を怠らないことが重要です。
コースタイム
- 登山:室堂ターミナル→雄山(立山) 2時間00分
- 下山:雄山(立山)→室堂ターミナル 1時間30分
室堂ターミナルから雄山(立山)ルートの難易度
難易度 1/10
体力 1/10 (日帰り)
② 立山縦走ルート
標高3,003 m 雄山(おやま)、標高3,015 m 大汝山(おおなんじやま)、標高2,999 m 富士ノ折立(ふじのおりたて)の三つのピークを総称して立山と呼んでいます。別山、立山、浄土山の三山を合わせて立山三山と呼ばれることもあります。
立山室堂から見上げる立山の稜線は概ね平坦に見えます。三山間の縦走路は、実際の歩行時間は30分ほどの行程で、さほどのアップダウンもなく、危険個所はありません。
雄山から出発します。 大汝山へは稜線の西側をトラバースします。 室堂側の斜面の傾斜は緩く、十分な幅の登山道があるため高度感はありません。 登山道からは常に室堂側の展望が開けた状態です。
左手眼下の御前沢雪渓にはスコップですくった様なおわん型の地形、山崎カールが確認出来ます。山崎カールは幅約400メートル、長さ約600メートルの圏谷で、西暦1905年(明治38年)に地質学者山崎直方博士が発見したのです。この発見により、日本に氷河時代が存在したことが証明されました。
大汝山山頂直下には大汝休憩所があり、軽食を摂ることができます。 また、バイオトイレが完備していますので女性登山者にはありがたい存在です。
大汝山から平坦な稜線を15分ほど進むと富士ノ折立です。 富士ノ折立から左方向に一気に下っていきます。
9月末でも残雪がある内蔵助カールを右下に見ながら真砂岳の鞍部まで下ります。
鞍部には室堂(雷鳥沢)方面に下る「大走り」分岐があります。今回は、別山まで足を伸ばさずに 真砂岳をピストンし、「大走り」を雷鳥沢に向け下ります。
「大走り」は、かつて立山信仰に詣でた修験道の行者達が雄山・大汝山・富士ノ折立を巡る山駆けの下山道として使用されていたようです。 昭文社の山と高原地図には「大走り」の登山道が整備不良とありますが、通行には支障はありません。 ただし、雷鳥沢付近で登山道が不明瞭の所があり、濃霧時は要注意です。
室堂から出発して立山を縦走し、雷鳥沢に下山して、室堂に戻る周回コースのコースタイムは5時間40分ほどでなので、十分日帰りが可能です。
コースタイム
- 立山雄山→雷鳥沢キャンプ場 2時間40分
- 参考:室堂~立山縦走~雷鳥沢~室堂 5時間40分
立山縦走ルートの難易度
難易度 1/10
体力 2/10 日帰り
③ 室堂ターミナルから浄土山・龍王岳ルート
浄土山は立山室堂ターミナルから右手に見える山で、立山連峰の南縁に位置し、その奥に龍王岳があります。
浄土山までは立山室堂から約1時間10分のコースタイムです。 そしてさらに10分ほど歩くと富山大学立山研究所が建つ、龍王岳分岐です。
室堂から石畳の道を歩き、室堂山・浄土山への登山口を目指します。室堂山の先にある展望台までは、良く整備された遊歩道になっていて40分ほどの行程です。
展望台からは五色ヶ原や薬師岳方面の眺望が素晴らしく、ハイキングコースとして人気があります。
展望台の少し手前の浄土山分岐からは一般の登山道になりゴロゴロした岩場を過ぎた辺りから次第に傾斜が増します。そして急傾斜の岩場を登り上げると浄土山山頂に飛び出します。
浄土山山頂には軍人霊碑が祭られている石組があります。浄土山から稜線を歩くと龍王岳手前の分岐に到着します。 ここには富山大学立山研究所の建物があり、龍王岳へは10分ほどで往復できます。
龍王岳分岐から一ノ越に向け下ります。 鞍部には一ノ越山が建ち、その横には公衆トイレが完備しています。
コースタイム
- 登山:室堂→浄土山→龍王岳→一ノ越 1時間50分
- 参考:室堂~浄土山・龍王岳~立山三山縦走~雷鳥沢~室堂 6時間20分
浄土山・龍王岳ルートの難易度
難易度 1/10
体力 1/10 日帰り
④ 五色ヶ原から立山室堂ルート
五色ヶ原は薬師岳から立山に向かう縦走路の途中にあります。池塘が点在し、雪解けと共にハクサンイチゲ、チングルマなど多くの高山植物が百花繚乱のお花畑を作ります。
五色ヶ原の木道を進み、歴史あるロマンの古道が通っていたザラ峠に下り、獅子岳に登り返します。
獅子岳上部の岩場がこのルートの核心部と言え、梯子や鎖場があります。しかし、さほど高度感は無く初心者でも通過は可能です。獅子岳の急登を過ぎると比較的平坦な道が続きます。すると、突如として鬼岳や龍王岳の岩峰群が目の前に大迫力で迫ります。素晴らしいの一言です。
龍王岳の南斜面をトラバースしながら登ると浄土山に至ります。浄土山から少し下ると直ぐに立山室堂のホテル立山が見えてきます。
五色ヶ原山荘から立山室堂までのコースタイムは約4時間を見ておけば大丈夫です。
コースタイム
- 五色ヶ原→立山室堂 3時間50分
五色ヶ原から立山室堂ルートの難易度
難易度 3/10
体力 1/10 (泊)
⑤ 立山から大日岳ルート
立山室堂ターミナルから奥大日岳~中大日岳~大日岳と縦走し、称名滝に下山するコースです。
縦走路全体に渡って展望に優れ、大日平の湿原、称名川に流れ落ちる不動滝や称名滝など見どころ豊富です。
奥大日岳からの下りに鎖や梯子が架る岩場があります。又、コースの終了近くの牛首尾根の下りはスリップや転倒に注意が必要な所です。それ以外は特に危険な場所はなく、登山初心者でも十分可能なルートと言えます。
剱岳から立山・薬師岳に向かって南北に伸びる山脈から西に派生しているのが大日尾根で、複数のピークからなる大日山塊を形成しています。
今回は、長野県側から入るルートを紹介します。立山黒部アルペンルートで室堂に入り、雷鳥荘に前夜泊します。
奥大日岳~中大日岳~大日岳と縦走し、称名滝に下山します。称名滝バス停から立山黒部貫光バスに乗り、富山地方鉄道立山駅に行きます。立山駅から立山ケーブルカーに乗り美女平で立山高原バスに乗り替え、弥陀ケ原バス停で途中下車します。弥陀ケ原を散策し、立山室堂に戻ります。
余裕を持って大日平山荘に山中泊する行程で計画を組みました。縦走路全体に渡って展望に優れ、地獄谷から火山ガスが立上る立山の荒涼とした風景、早月尾根を長く伸ばし、尖った山頂を天に突き上げる鋭鋒・剱岳は圧巻です。
高山植物が豊富なことも魅力の一つと言えます。又、コース終了近くになって現れるラムサール条約に登録された大日平の湿原、称名川に流れ落ちる不動滝や称名滝など見どころ豊富です。
コースタイム
立山から大日岳ルートの難易度
難易度 3/10
体力 2/10 泊
⑥ 立山室堂ハイキングルート
扇沢から関電トンネルトロリーバスに乗り黒部ダムに行きます。2億立方平方メートルの貯水量がある黒部湖では黒部湖遊覧船「ガルベ」に乗ることもできます
黒部湖の標高は1,448mあり、日本で最も高い所を航行する遊覧船です。ハイキングコースとして黒部湖畔遊歩道が整備されています。黒部湖の西岸に片道25分ほどの歩きやすい平坦な道が遊覧船乗船場近くのカンパ谷橋から展望休憩所間にあり、観光客にお手ごろな散策路になっています。
黒部ダムから毎秒10~15トンの大量に放出された観光放水が風に巻き上げられ、しぶきとなりダム上部に作られた遊歩道まで舞い上がってきます。黒部ダムは通称くろよんダム。7年に渡る工事の末、西暦1963年(昭和38年)に完成。 高さ186m、堤長492メートルのアーチ式ドーム越流型ダムです。
くろよん記念室が黒部ダムレストハウスの3階にあります。入館は無料で開館時間は7時30分~17時です。ダムの縮尺模型、断面立体図の他、大量の地下水が吹き出した破砕帯の岩などを展示しています。トンネル掘削工事の現場を模した映写室では、ダム建設の記録映画「くろよん物語」が常時上映されています。
黒部ダムから立山連峰の山腹に架けられた黒部ロープウェイが大観峰に伸びているのが確認できます。
黒部ダムの上部を歩き黒部ケーブルカー乗り場へ向かいます。黒部ケーブルカーを降りた黒部平の小平地は、黒部平庭園が広がりベンチや湧き水があります。
東側を望むと黒部湖を挟んでそそり立つ針ノ木岳、スバリ岳、赤沢岳といった後立山連峰の展望が雄大です。黒部平駅2階にレストラン黒部平、1階に売店があり、待ち時間や昼食などに利用価値が高いです。
黒部平から全長1,700mの立山ロープウェイに乗り、大観峰で再びトロリーバスに揺られれば標高2,450メートルの室堂ターミナルに到着します。
室堂平には国の天然記念物に指定されている地獄谷やミクリガ池、ミドリガ池、血の池などの火山の噴火後に出来た湖を見物するだけでも立山の自然を満喫することが出来ます。
室堂ターミナルから石畳の遊歩道を10分ほど歩けばミクリガ池、ミドリガ池に着きます。みくりが池温泉前の階段を下った所が地獄谷です。
地獄谷は周囲1.5kmの爆裂口で、いたるところから高温の噴煙を上げています。有毒ガスも含まれている為、遊歩道から出ない事、火山ガスが大量に出ている箇所は素早く通過することなどの注意を促す看板が目を引きます。
火山活動が活発になると地獄谷の遊歩道は通行禁止になることがあります。詳しくは長野自然環境事務所へお問い合わせください。
また、みくりが池温泉、雷鳥沢ヒュッテは日帰り入浴が出来ます。白く濁った硫黄泉を楽しんでください。
地獄谷や血の池などと恐ろしい名前が付いているのは、浄土と地獄を対照的に表現して、立山信仰を広めることを目的としたからではないでしょうか。
室堂ターミナルの近くに立山自然保護センターがあります。 ライチョウ王国へ入るための入国パスポートが発行されます。世界各国の雷鳥を案内するブースや立山の豊かな自然や動植物を紹介しています。また、ナチュラリスト(自然解説員)による自然観察ツアーが行われています。
コースタイム
- 室堂ターミナル駅からみどりが池、みくりが池、エンマ台展望台、雷鳥平、地獄谷の周回コース 約2時間30分
立山室堂ハイキングルートの難易度
難易度 1/10
体力 1/10
⑦ GW「雪の大谷ウォーク」と立山登山
世界的にも知れ渡った「立山の雪の大谷ウォーク」は、黒部アルペンルートの開通に先駆けて20メートルを超える雪山を切り開き4月中旬にオープンします。
快晴の天気でも、雪の壁に挟まれた遊歩道の気温は0℃程になり、十分な防寒対策をしていかれることをお薦めします。
ゴールデンウィークに入る少し前の4月24日の平日でしたが、予想に反し、黒部アルペンルートは大混雑していました。その9割以上は中国からの観光客で、中国人パワーをまざまざと見せ付けられる思いでした。
黒部ダムは、まだこの時期氷に覆われ、黒部湖遊覧船「ガルベ」の運行や観光放水は見られず、まだ冬の装いです。
ゴールデンウィークの雄山は、一ノ越から上部には全く雪が付いておらず、アイゼンの必要はありませんでした。一方で、室堂から一ノ越までは多くの残雪があり、早朝はアイスバーンになり、12本歯アイゼン及びピッケルまたはストックが必要です。特に浄土山の北側斜面をトラバースする箇所の谷側の傾斜がきつく、滑落の危険があります。
トラバースをクリアすると夏山ならばジグザグに切られた登山道をゆっくりと登れば良いのですが、雪山は真直ぐに登って行くために想像以上にきつい登りとなります。やはり、靴の前方に歯のある12本歯アイゼンが必要でしょう。昼の10時を過ぎると雪が柔らかくなり、軽アイゼンでも問題無く登ることが出来るでしょう。
一ノ越山荘前に建つ公衆トイレは雪に埋もれて使用出来ません。一ノ越山荘はゴールデンウィーク少し前の土曜日から営業が開始されます。
前述の通り、一ノ越から雄山山頂までのルート上には残雪はほとんど無く、アイゼンの必要はありませんでした。もっとも年によって残雪の状態は異なりますので冬山装備(アイゼン・ピッケル携帯)で行くことをお薦めします。又、残雪が無いということは強い季節風で雪を吹き飛ばしてしまうためで、山頂に近づくにつれて強風が吹き荒れることも想定しておく必要があります。又、ゴールデンウィークのこの時期、天候が急変すると一気に冬山へ逆戻りしますので油断は禁物です。
雄山へ登る人の半数が、スキーヤーやスノーボーダーです。山頂から滑り降りるとのことです。過去に雪崩により死者も出ているので、室堂ターミナル内の入山安全相談窓口で登山届及びビーコンの携帯は必須です。
山頂の雄山神社峰本社社務所(授与所)はすっかり雪に埋もれて閉ざされていました。山頂からの眺めは雄大で、白馬岳から針ノ木岳に至る後立山連峰、北アルプスのランドマーク槍ヶ岳、その右には穂高岳、別山方面に稜線を辿るとひときわ鋭く尖った剱岳など360度の銀世界が広がります。
この年、雄山から大汝山、富士ノ折立、別山方面へ行く縦走路にも雪があまり付いていないように見えました。しかし、稜線の東側斜面にはまだ多くの残雪がありました。
コースタイム
- 登山:立山室堂→雄山 1時間50分
- 下山:雄山→立山室堂 1時間30分
GW「雪の大谷ウォーク」と立山登山の難易度
難易度 1/10
体力 1/10
⑧ 立山の紅葉ハイキング
この写真は9月28日時点、雷鳥沢キャンプ場近くから撮影したものです。
立山の紅葉のベストポイントは、雷鳥沢キャンプ場から一ノ越に至るルートの途中、山崎カール直下周辺です。たくさん自生しているナナカマドが綺麗に発色します。
コースタイム
- 立山室堂から雷鳥沢キャンプ場周回 2時間00分
立山の紅葉ハイキングの難易度
難易度 1/10
体力 1/10
立山の温泉
地獄谷の温泉
地獄谷では高圧蒸気が噴煙を上げ、硫黄を含んだ白く濁った高温の温泉が湧き出ています。温泉は引き湯管で付近の山小屋へ引かれています。
みくりが池温泉
みくりが池温泉は室堂ターミナルから徒歩15分の所にある日本最高所の天然温泉です。左手の三角形の屋根の建物が、眼下の地獄谷から引湯管を利用して350mを引湯しています。源泉温度54.3度、毎分80Lの湧出量の硫黄を含んだ白く濁った温泉です。
加水、加温は行われず、源泉から引き上げられた湯が常時浴槽に注がれています。 内風呂のみで露天風呂はありませんが、標高2,500mで入る硫黄泉は大変魅力的です。
背後は立山の一角別山です。その左後ろに、剱岳の山頂と稜線が僅かに見えています。
雷鳥荘
雷鳥荘は室堂ターミナルから徒歩30分の所にあります。源泉かけ流しの温泉は噴煙が立ち昇る地獄谷から引き湯しています。内湯のみで露天風呂はありません。
地獄谷から山小屋に引かれる温泉は、乳白色の硫黄の温泉です。日帰り入浴が出来ますから、時間が許せば立ち寄ってみる価値はあります。
背景に見えるのは大日岳です 。
立山に泊まる
ホテル立山
営業期間:4月中旬から11月下旬。
ホテル立山は、立山黒部アルペンルートの終点である室堂ターミナルに併設されているため大変便利です。
毎日夕方4時頃から、ホテルスタッフによる周辺の『散策案内』、夕食後は、立山の四季などを撮影したスライドやビデオ上映会、夜9時頃からの星空観察会などが催されています。
弥陀ヶ原ホテル
営業期間:4月10日前から11月上旬。
弥陀ヶ原ホテルは立山道路に面して建ち、ラムサール条約に登録された弥陀ヶ原を展望できる好立地です。
ホテル前にはバス停がありますが、立山室堂から遊歩道を下って2時間弱で歩くことも可能です。
また、ホテルから立山カルデラ展望台までの所要時間は往復で約40分です。
立山高原ホテル
営業期間:4月下旬から11月上旬。
立山高原ホテルは立山道路の(標高約2,300m)天狗平バス停近くに位置しています。
立山室堂まで遊歩道を歩けば約40分程で着きます。立山室堂周辺の山小屋・ホテルが一杯の時でも空いているかもしれません。
黒部アルペンルート扇沢の近くに泊まる
ANAホリデイ・インリゾート信濃大町くろよん
黒部アルペンルートの扇沢駅まで9km、12分の立地です。
葛温泉から引いたかけ流しの天然温泉の露天風呂があります。
JR信濃大町駅までは無料シャトルバス(予約制、定期便)あります。
立山のカール地形ー山崎カール
山崎カールとは
山崎カール(山崎圏谷)は、幅約400メートル、長さ約600メートルの圏谷で、西暦1905年(明治38年)に地質学者山崎直方博士が発見したのです。この発見により、日本に氷河時代が存在したことが証明されました。
山崎圏谷(カール)は、8~7万年以降、立山西面に繰り返し発達した氷河により山体が削られて出来たものです。
山崎カールには3段のモレーンがあります。下位モレーンは3万年前に鹿児島湾で起こった巨大カルデラ噴火の火山灰(姶良丹沢火山灰)に覆われています。このため、下位モレーンは3万年前よりも古い時代に立山主稜線付近から標高2500m 付近まで発達した氷河によって形成されたと考えられています。
氷河は、その後、2万年前に中位モレーン、1万年前に上位モレーンを作り、やがて消滅して今の山崎カールが残りました。
立山の有形文化財を巡る
日本最古の山小屋・立山室堂
室堂山荘の隣に「室堂小屋」或いは「立山室堂」と呼ばれていた日本最古の山小屋があります。切妻造りの屋根で、柱はタテヤマスギの太い角材が使われ、頑丈な造りになっています。
建物は北屋と南屋の2棟に分かれ、1992年から1994年の解体調査後に復元されたものです。
立山は修験道の聖地とされ、多くの修験者が宿泊したのでしょう。現在の建物は享保11年(西暦1,726年)に加賀藩により建てられたものですが、最初のものは14世紀に建てられたと考えられています。
現在、国の重要文化財に指定され資料館となって、解体調査で出土した陶器などが展示され、有料で一般公開されています。
玉殿の岩屋
立山火山が噴火して溶岩が冷却する過程で出来た板状節理の二つの洞窟を玉殿岩屋と呼んでいます。
立山開山の伝説がある玉殿の岩屋は、立山室堂山荘から東側の斜面を10分ほど下った所にあります。
立山室堂の宿泊施設が出来る前は修験者の寝泊まりにも使用されていたと言わる洞窟です。洞窟の天井は低く、奥行き約4メートルほどの狭い空間です。現在、石仏が数体安置されています。又、隣接する場所に虚空蔵窟があり、石地蔵や十六羅漢像が祀られています。
立山を開山した佐伯有頼が熊を追ってこの洞窟に入ったところ、 熊は実は阿弥陀如来の化身で、佐伯有頼に立山を開山することで人々を導くように命じたという伝説が残っています。
立山室堂ターミナル3Fの施設
雄山神社 峰本社 旧社殿
雄山山頂の雄山神社・峰本社は1995年(平成7年)に135年ぶりに建て替えられました。
雄山山頂にあった旧社殿は、万延元年(1860年)に加賀藩が寄進したもので、総重量7トン、高さ2.9m、幅3メートル、奥行き1.8mの総ケヤキ造りの立派なものでしたが、痛みが激しくなったため作り替えれました。
復元された旧社殿が立山室堂ターミナル3Fの雄山神社峰本社旧社殿展示室に無料で一般公開されています。
公開時間:8:30~17:00。
立山開山伝説
佐伯有頼の立山開山伝説
伝説によると文武天皇の勅命により奈良時代の大宝元年(西暦七〇一年)に佐伯有頼(後に出家して慈興上人となる)が開山したとされています。慈興上人は立山を開く為に一生をささげ、山麓に上記の芦峅寺、岩峅寺を建って立山信仰の拠点を作ったとされています。
玉殿岩屋には次の様な伝説が残っています。
佐伯有頼は、父が大切に育てていた白鷹が逃げてしまい、その白鷹を追って立山山中へと分け入ります。
すると、途中でクマに襲われます。佐伯有頼はとっさに持っていた矢を放つと熊の胸に命中しました。
クマは血を流しながら芦峅寺を経て山中深くへと逃げて行きました。すると、そこに黄金のイノシシが現れます。
イノシシの背に跨り称名川を渡り、血の跡をたどりながら、クマを追い続けました。
佐伯有頼はその熊を追ってゆくと、立山室堂の洞窟に着きました。洞窟(現存する玉殿岩屋)の中から血を流した阿弥陀如来が現れました。
熊の姿に身を変え、佐伯有頼をこの場所まで導いたのです。 阿弥陀如来は佐伯有頼へ向かって立山を開山せよと命じました。佐伯有頼は出家し、慈興と名を改めました。
「佐伯有頼」の像
立山室堂ターミナル3F雄山社峰本社旧社殿展示室の階段踊り場に「佐伯有頼」の像があります。
この像は、郷土史家「広瀬誠」の発願によって富山市呉羽山山頂に建立された銅像のレプリカです。
立山カルデラ
立山カルデラとは
立山カルデラは、立山連峰の南西に広がる東西約6.5km、南北約4.5km の大規模な窪地です。
このカルデラは10万年以上前に活動した弥陀ケ原火山が地震や大雨などによって侵食されて出来た「浸食カルデラ」です。
周辺には、跡津川断層をはじめ、いくつもの活断層が走り、地下の深いところまで非常に脆い地質となっています。
1858年安政の飛越地震では、大鳶山、小鳶山などが崩れ、カルデラ内に土砂が厚く堆積しました。その時の莫大な土砂は現在でも不安定な状態で残っています。
立山室堂ターミナルから50分ほど登ったところに室堂山があり、その少し先に360°のパノラマが展開する立山カルデラ展望台があります。
五色ヶ原近くのザラ峠からの立山カルデラです。
立山カルデラ内を流れる常願寺川の源頭部です。
富山地方鉄道立山線の終点駅である立山駅近くに富山県立立山カルデラ砂防博物館があり、砂防工事の歴史を学ぶことが出来ます。
立山カルデラに作られたの砂防堰堤の歴史
富山平野を守るため、立山カルデラからの土砂の流出に備えて、常願寺川やその支流に多くの砂防堰堤が作られています。明治時代には人力によって工事用物資の輸送が行われていましたが、 砂防工事のための物資運搬の輸送力増強のために、1927年(昭和2年)より砂防工事専用軌道(トロッコ)の工事が着工されました。
1965年(昭和40年)には千寿ヶ原から水谷までの延長18km (標高差640m )が全線開通しました。樺平の18段スイッチバック(標高差200m )は、歴史的価値が認められ、2006年(平成18年)7月28日に国の登録記念物に指定されました。
立山カルデラの新湯から玉滴石が産出
立山カルデラ内にある新湯から玉滴石が産出されています。親湯は常願寺川の源頭部にあり、水蒸気爆発によって出来た火口湖です。
直径は約30mの円形で、水深は約5m、水温が約64度~70度の強い酸性を示した温泉です。新湯はオパールの一種である鉱物「玉滴石」の国内有数の産出地として有名です。
新湯の玉滴石は、お湯の中に豊富に含まれるシリカの球状体が岩片に吸着してマントルを形成し、大きく成長して球状で透明になったものです。2013年10月17日に国の天然記念物に指定されました。
各種情報
立山登山ツアー
- 立山|登山・トレッキング・温泉ツアー
役場
- 立山町役場 電話:076-463-1121
登山届提出
登山地図のスマホアプリ
- 山と高原地図のスマホアプリ
昭文社から販売されています。山と高原地図ホーダイ - 登山地図ナビアプリ 定額(500円/月 or 4800円/年)で61エリアの「山と高原地図」が使い放題。山と高原地図[地図単品購入版]地図1エリア 650円。
立山山頂周辺の気温
最高気温 | 平均気温 | 最低気温 | |
1月 | -11.3 | -15.3 | -19.2 |
2月 | -10.4 | -15.1 | -19.2 |
3月 | -5.8 | -11.2 | -16.0 |
4月 | 2.1 | -4.9 | -10.8 |
5月 | 7.5 | 0.3 | -5.8 |
6月 | 10.9 | 4.3 | 0.8 |
7月 | 14.2 | 7.6 | 3.3 |
8月 | 15.9 | 9.1 | 4.2 |
9月 | 10.8 | 4.9 | 0.4 |
10月 | 4.6 | -1.6 | -6.4 |
11月 | -1.7 | -7.3 | -11.8 |
12月 | -8.1 | -12.6 | -16.2 |
立山へ登るための装備と服装
軽アイゼン | 12本歯アイゼン | ピッケル | サングラス | テント | ヘルメット | |
1月 | * | * | * | * | * | * |
2月 | * | * | * | * | * | * |
3月 | * | * | * | * | * | * |
4月 | × | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | ○ |
5月 | ○ | ◎ | ○ | ◎ | × | ○ |
6月 | △ | × | × | △ | × | × |
7月 | × | × | × | △ | × | × |
8月 | × | × | × | △ | × | × |
9月 | × | × | × | △ | × | × |
10月 | × | × | × | △ | × | × |
11月 | △ | × | × | ○ | ○ | × |
12月 | * | * | * | * | * | * |
* 黒部アルペンルートの開通期間は4月~11月です。スノーシューは4月、5月に有ると良い。
服装や装備品のチェックリスト
登山地図 | 必須 登山地図を忘れると道迷いの原因に! |
レインウェア | 必須 セパレートタイプの通気性と防水性を兼ね備えたゴアテックスが ベストです。防寒着としても使えます。 |
帽子 | 必須 立山室堂では森林限界を超えているため、草木などの日差しを 遮るものが何もありません。夏山のハイシーズンでは日よけ用の つばが広く軽いものをお奨めします。 |
日焼け止め | 必須 登山口の立山室堂は森林限界を超えています。 森林限界を超えている立山では、直接日光がダイレクトに 降り注ぐため紫外線が強いので必帯です。 |
飲料水 | 必須 例)室堂から雄山ピストン 体重60キロの人の場合:1.41リットル 室堂ターミナルを出ると 「立山玉殿の湧水」が湧き出しています。 |
ヘッドランプ | 必須 雄山で御来光を迎えるために、暗いうちから登るために必要です。 |
行動食 | 必須 コンビニでいくつか買っていくと便利です。 |
パックカバー | 必須 雨が降った時に備えてザックが雨に濡れ無い様に するためにカバーするものです。ザックカバーもレインウェアーと 同様に防水性が衰えてきます。時折、防水スプレーをするなどの メンテナンスが必要です。 |
救急薬品 | 必須 切り傷、擦り傷にカットバン、絆創膏を、虫刺され薬品、 トクホンのような筋肉痛に効く貼り薬を持っていくと良いでしょう。 |
ティッシュペーパー | 必須 登山途中で急にしたくなった時に便利です。 |
防寒着 | 薄手のフリース,セーター、軽いダウンジャケット。雄山頂では、 7~8月でも最低気温が4度ほどに下がることがあります。 軽くて保温性の高いものを選びます。ゴアテックスの レインウェアをその上に着ると更に保温性が高まります。 |
アイゼン | 4月末から5月上旬のゴールデンウィーク辺りで登山する場合、 まだ多くの残雪があるため12本歯のアイゼンが必要です。 年により一ノ越から雄山までに雪が付いていない場合もあります。 |
手袋 | 岩登り用に手をケガしないために必要です。 |
耳栓 | あったら良い 室堂の山小屋では混雑時には大部屋になることがあります。 (立山ホテルは個室のみです。)就寝時に いびきをかく人が必ずいます。耳栓の効果は絶大です。 |
カメラ | あったら良い 室堂や地獄谷、雄山山頂からの大展望などを撮影スポットが満載です。 |
ビニール袋 | あったら良い ゴミ袋として重宝します。 使用前の下着入れ、使用後の下着入れとして4~5枚あると便利です。 |
立山開山の歴史
日本三霊山
越中の立山は駿河の富士山、
加賀の白山とともに「日本三霊山」の一つです。立山についての文献で最初の記録は、奈良時代に大伴家持が万葉集の中で、立山連峰を「太刀山」と形容し、「太刀山に降りおける雪を常夏に見れども飽かずかむからならし」という歌を詠んでいます。「かむからならし」とは「神様がお住まいになる」という意味です。
山岳信仰の山・立山
立山の開山は、名もなき狩人
(修験者達)によって開かれたとするのが正しいようです。その時期は、8世紀に泰澄大師により開かれた白山の50年後に当ります。その後、平安時代の歌謡集の中に立山が第1の霊山として記述されています。
立山信仰が盛んになったのは、地獄・極楽信仰が広まったからで、人々は来世の世界として立山権現の本地仏、阿弥陀如来を極楽浄土として、極楽往生を願いう一方で、地獄へ落ちる事を恐れる気持ちが、地獄谷周辺の荒涼とした地形から連想され、多くの人々の好奇心を抱かせたものと言われています。
信仰登山ルートは、現在の富山地方鉄道岩峅寺駅近くにある岩峅寺を起点とし、立山博物館近くの芦峅寺を経由し、弥陀ヶ原(みだがはら)を遡る登杯路が出来ていました。 「立山仲語」と呼ばれる地元のガイドに案内されて苦行に耐え、立山を目指しました。しかし、明治時代になると神仏分離、廃仏毀釈によって立山信仰は次第に衰えて行くという歴史があります。
参考文献:名山の日本史 より
立山曼荼羅
江戸時代の登山
江戸時代になると信仰登山者ばかりではなく観光目的の登山者や文人も多く訪れたようです。
江戸時代後期には岩峅寺・芦峅寺の御師たちが「立山曼荼羅」を持ち歩き諸国をめぐり、衆徒を前に、立山に登れば堕地獄の罪も許されると説き、信仰を広めていきました。
「立山曼荼羅」に描かれた景色は架空のものではなく、立山に現実に存在したところが衆徒の心を強く動かしたのでしょう。
屏風図の右手の浄土山の上に日輪、左手の剱岳の上に月輪、中央に立山が配置されています。
※御師(おし/おんし)とは- 特定の寺社に所属して、その社寺へ参詣者を案内し、参拝・宿泊などの世話をした僧または神職のこと
※衆徒(しゅと)とは- 大きな寺院で、警備や雑用などをする下級の僧。又は多数の僧を指すこともあります。