北アルプスは概ね次の5つのエリア(「後立山連峰」「槍ヶ岳・穂高連峰」「黒部源流域( 薬師岳・黒部五郎岳・鷲羽岳・水晶岳)」「立山連峰」「常念山脈」「御嶽山・乗鞍岳」)に分かれています。
登山初心者は、まず鎖場がない常念山脈から経験を積んで槍ヶ岳、穂高岳、剱岳などを目指すと良いでしょう。
後立山連峰
槍ヶ岳・穂高岳(穂高連峰)
黒部源流域( 黒部五郎岳・鷲羽岳・水晶岳)
立山・剱岳 (立山連峰)
常念山脈
乗鞍岳・御嶽山
一度は行きたい北アルプスの絶景ポイント
北アルプスの中でも特に記憶に残る絶景をピックアップしました。
三俣蓮華岳から鷲羽岳、水晶岳

三俣蓮華岳から北アルプスの最深部、黒部源流の山々(右手から鷲羽岳、中央奥が水晶岳)。右下に小さく赤い屋根の三俣山荘が見えます。
白馬大雪渓

白馬岳のメインルート。白馬大雪渓から立ち上る霧の先に杓子岳が日の光に照らされて浮かび上がる姿は筆舌に尽くしがたい。
小蓮華岳から白馬岳の稜線

小蓮華岳から白馬岳への稜線。どっしりと構えた白馬岳の山体と白ザレの岩礫の穏やかな道は、まさに天空散歩。
剱岳・剣岳カニノヨコバイ

剱岳のカニノヨコバイに入る所です。カニノヨコバイが難所と言われるのは足場の岩棚が見えないことがその理由です。一歩目さえ確保出来れば後は難しくありません。「平蔵の頭(へいぞうのずこ)」の尖った頂きが剱岳を象徴しています。
龍王岳の東側の岩璧

龍王岳の東側の岩璧は大迫力。右手側に見えるピークは立山・雄山です。立山におけるロッククライミングのゲレンデとして人気の高い龍王岳主峰南陵リッジ群の中央のバットレスC稜に取り付くクライマー達。
黒部五郎岳カール

男性的で雄大な黒部五郎のカールは、まさに天上の庭園と呼ぶににふさわしく、日本百名山の著者・深田久弥は「青天井の大伽藍」と称賛しています。
槍沢から望む槍ヶ岳

長い槍沢ルートの最後に槍の穂先が姿を現します。北アルプスにおいてランドマーク的存在の槍ヶ岳を目の前にすると感動が込み上げます。
天狗池に写る「逆さ槍」

天狗池は雪渓に覆われて、その姿を現すのは8月に入ってからで、その全容が現れるのはお盆明け10日後が目安です。9月末になるとナナカマドが紅葉し、逆さ槍とのコラボレーションが美しい景観を作り出します。
穂高岳の涸沢の紅葉

北アルプスの最も美しいと言われている涸沢の紅葉。北アルプスばかりではなく日本屈指の紅葉の名所と言っても過言ではありません。紅葉の見頃は9月末から10月上旬。
蝶ヶ岳から望む槍ヶ岳

常念山脈の南に位置する蝶ヶ岳から望む槍ヶ岳から穂高連峰にかけての展望は、まさに絶景です。
鏡池に写る逆さ槍

新穂高温泉を登山口とする鏡平一帯は沼が点在した平坦地で、その中でも鏡池に写る槍ヶ岳や穂高岳の絶景を求め多くの登山者が訪れます。
燕岳山頂の花崗岩の奇岩群

常念山脈のほぼ北の端に位置して、表銀座コースの拠点ともなる燕岳は、花崗岩が天然のオブジェを作り出しています。
乗鞍山麓五色ヶ原の布引滝

布引滝は、伏流水が断崖で一気に噴き出したものです。五色ヶ原のツアーにはシラビソコース、カモシカコースの二つがあり、共に9000円です。各コースとも一日100名を入山の上限として自然環境の保護に努めています。ツアー期間は:5月20日~10月31日です。
北アルプスの山岳温泉
北アルプスの中で歩かなければたどり着けない温泉を中心にピックアップしました。
白馬鑓温泉小屋の露天風呂

白馬鑓温泉小屋の源泉の湧き出し口が雪崩の巣になっているため、7月中旬~9月下旬の期間限定でプレハブの山小屋が出現します。露天風呂は男女混浴ですが、男女別の内湯もあります。登山口の猿倉から山道を約4時間30分歩く必要があります。
白馬岳蓮華温泉ロッジの露天風呂

白馬岳蓮華温泉ロッジの露天風呂は、仙気の湯の他にそれぞれ泉質が違う薬師湯、三国一の湯、黄金湯の四つがあります。天気の良い日には、背景に雪倉岳・朝日岳・五輪山などの北アルプスの山々を眺めながらの入浴が出来ます。
湯俣温泉晴嵐荘の内風呂

湯俣温泉晴嵐荘には以前、山小屋前に露天風呂がありましたが、現在は内風呂のみです。野趣溢れる露天風呂を楽しみたければ、湯俣温泉晴嵐荘から墳湯丘方面へ10分歩くと素掘り露天風呂があります。
北アルプス登山ルート概要
北アルプスは南北に150km、東西25kmの広大な山岳域を形成し、そのほとんどの部分が中部山岳国立公園に指定されています。
北アルプスという呼び名は通称で、飛騨山脈(ひださんみゃく)というのが正式名称です。
最高峰は奥穂高岳の3,190mです。
日本国内の3,000mを越える高山は21座、その内10座が北アルプスにあり、そして槍ヶ岳・穂高岳に8座と、 最も多く集中しています。
北アルプスは造山運動が古くから起こり、南アルプスに比べ浸食が進んでいます。
そのため山容は急峻となり、多くの登山者を魅了してやみません。
北アルプスは概ね次の3つのエリア(「槍ヶ岳・穂高連峰」、「立山・白馬岳・剣岳(剱岳)」、「御嶽山・乗鞍岳」)に分かれています。
南部の「槍ヶ岳・穂高連峰」の領域は北アルプスの核心部とも言え、日本屈指の切り立った岩稜帯が続きます。
特に槍ヶ岳と北穂高岳の間にある大キレットはスパット切れ落ちた高度感のある岩稜帯の通過があり、中でも長谷川ピーク、飛騨泣きは北アルプス縦走路の中にあって最大の核心部といって良いでしょう。
次いで北穂高岳から穂高岳山荘へ抜ける縦走ルートも高度感のある鎖場の通過で緊張感を覚える所です。
槍ヶ岳・穂高連峰の山域は北アルプス北部に比べ比較的降雪量は少なく、夏の残雪量も少ないので、梅雨前線が消えたころから夏山シーズンが始まります。
10月に入ると涸沢や槍沢は紅葉に染まり、ナナカマドは赤、ダケカンバ・シラカバは黄、カラマツは金に輝き、まさに錦繍の山々という言葉がぴったりです。
北部の「立山・白馬・剣岳(剱岳)」の領域は積雪量が最も多く、高山植物が多いことでも知られています。
早い年では、9月に初冠雪を観測し、10月に降る雪はそのまま根雪となることが多いといわれています。
剣岳(剱岳)はこの山域で最も険しいルートで、一般道とは言え、体力・技術の必要な名峰といえるでしょう。
北アルプスの主稜線の東側を南北に並走する山域は常念山脈と呼ばれ、北の唐沢岳から始まり餓鬼岳、燕岳、大天井岳、常念岳、霞沢岳へと続いています。
最高峰は大天井岳の標高2,922mで大半が2,600m台の標高を持ち、おおらかな山容のため北アルプスの初心者コースとしてうってつけです。
中房温泉をスタート地点として燕岳~大天井岳~喜作新道~槍ヶ岳へと向かうルートは表銀座縦走コースと呼ばれています。 表銀座と名が付くだけあって登山者の数は多く、シーズン中の山小屋の混雑は大変なものです。
一方、高瀬ダムをスタート地点として烏帽子岳~野口五郎岳~鷲羽岳~三俣蓮華岳~双六岳から西鎌尾根を経て槍ヶ岳へと向かうコースは裏銀座縦走コースと呼ばれ、比較的すいていて静かな山行を楽しむ事が出来るルートです。
北アルプスのルート難易度を10段階で表示していますので参考にしてください。
登山届提出
長野県:長野県のホームページ
岐阜県:岐阜県北アルプス山岳遭難対策協議会事務局
富山県:富山県警察
登山地図のスマホアプリ
- 山と高原地図のスマホアプリ
昭文社から販売されています。山と高原地図ホーダイ - 登山地図ナビアプリ 定額(500円/月 or 4800円/年)で61エリアの「山と高原地図」が使い放題。山と高原地図[地図単品購入版]地図1エリア 650円。
北アルプスの近代登山の歴史
ウィリアム・ガウランドとウォルター・ウェストンの功績

上高地のウォルター・ウェストンのレリーフ
ウォルター・ウェストンは、英国人宣教師で、3回来日し、延べ15年に渡って日本に滞在しました。その間、日本全国の山を登り、明治29年(西暦1896年)に「日本アルプスの登山と探検」を出版し、世界各国に日本の山を紹介しました。
我が国に近代的な登山意識をもたらし、日本山岳会結成のきっかけを作りました。その功績により、山開きの時期に合わせ、日本各地ではウェストン祭が開催されるようになりました。
ウィリアム・ガウランド
ウィリアム・ガウランド(ゴーランド)は、明治政府が大阪造幣寮(現在の造幣局)にイギリスより招聘した化学兼冶金技師です。登山家でもあった彼は、明治14年(西暦1881年)に出版された「日本旅行案内」の中で、現在の北アルプスを中心に記述を担当し、その中で北アルプスを"Japanese Alps"と言う表現を用いて紹介しました。当サイトのサイト名にもなっている「日本アルプス」の命名者ということが出来ます。
北アルプス開山の歴史
立山の開山
北アルプスにおいて最も古く開山されたのは立山です。奈良時代には既に開山されていたようで、その後、立山信仰が盛んになっていきます。一方で、その東に位置する後立山連峰は山岳信仰や修験道の霊山として開山されませんでした。江戸時代になっても、松本藩や加賀藩が国境警備や森林伐採した木材の密売を取り締まるため入山を禁じていました。
槍ヶ岳の開山
槍ヶ岳や穂高岳周辺は、主に上高地から入るルートがあり、飛騨新道が江戸時代の西暦1835年に完成しています。このルートは現在の安曇野市三郷小倉と新穂高温泉郷中尾とを結ぶもので、途中、鍋冠山~大滝山、上高地~中尾峠、中尾峠~新穂高温泉を通っていました。
また、現在の松本市安曇島々から島々谷を遡上し、徳本峠から上高地へ抜けるルートがありました。このルートは、戦国時代には既に開通していたと思われます。
槍ヶ岳は、播流上人によって江戸時代の西暦1828年に開山されています。
その後、明治時代になり、明神池の畔に山小屋を建てた上條嘉門次が、ウェストンや鵜殿正雄などの山岳案内人となっています。小林喜作は、燕岳から槍ヶ岳に至る喜作新道(現在の表銀座コース)を開拓し、殺生小屋を作りました。
北アルプス後立山連峰の地質
後立山連峰の回転隆起地形

爺ヶ岳の南峰と中央峰の白沢のコル(峰と峰の鞍部)付近では、カルデラ湖内に水平に堆積した火山灰層が、回転隆起のために垂直に近い傾斜になっている様子が観察出来ます。このことは回転隆起の何よりの証拠です。
写真中央の山が爺ヶ岳で、山頂部は三つのピーク(左から南峰・中央峰・北峰)で構成されています。右手の双耳峰は鹿島槍ヶ岳です。
後立山連峰の火山による大地の変化
後立山連峰は、今から180万年前頃の火山のカルデラ湖にたまった岩石です。マグマの上昇や横からの圧力によって数十万年かけて回転しながら隆起してきた山なのです。
- 180~160万年前
火山活動によって出来たカルデラ湖内に、細かな火山灰層が水平に堆積しました。 - 160~80万年前
回転・隆起を続けた山地では、カルデラ内の水平な地層も直立してしまいました。 - 80万年前以降
回転隆起が一層激しくなり、北アルプス一帯は次第に今の様な姿になりました。
大町山岳博物館
常設展示は、「北アルプスの自然と人」がメインテーマです。自然科学・人文科学の両視点から、後立山連峰を中心とした北アルプスを総合的に紹介しています。後立山連峰を中心に大町市や、それを取り巻く台地の成り立ち、そこに生息・生育する動物と植物の生活、北アルプスにおける過去から現在までの山と人との関わりを知ることが出来ます。
併設された図書館には、山岳関係の蔵書が豊富にあります。
基本情報
- 名称:大町山岳博物館
- 住所:〒398-0002 長野県大町市大町8056-1
- TEL,FAX:0261-22-0211.0261-21-2133
- 開館時間:午前9時~午後5時 (※入館は午後4時30分迄)
- 休館日:毎週月曜日、祝日の翌日、年末年始 (※月曜が祝日の場合は開館、翌日休館 7月 8月は無休)
- 観覧料金:小学生200円、高校生300円、大人400円
【大町山岳博物館の展示内容】
■針ノ木峠の歴史
- 中世 佐々成政による冬の北アルプス越えの伝承
- 近世 加賀藩の御縮山と奥山廻り御用-国境見分・信仰・森林資源開発の道
- 近代 明治時代 信越連帯新道(針ノ木新道)-物資交流の道
- 現代 昭和・平成時代 立山黒部アルペンルート-電源開発・山岳観光の道
■山岳信仰
- 先史時代 自然崇拝
- 古代・中世 立山信仰の始まりと広がり
- 近代 信州の立山講と立山登拝の裏参道、播隆の槍ヶ岳登拝信仰
■北アルプスと人との関わり-近代登山
- 大町山岳人列伝-山岳文化を育んだ大町周辺の人々
- 日本の近代登山
- 山小屋の変遷
- 登山の道具