蝶ヶ岳とは

蝶ヶ岳は北アルプスの常念山脈の南にあり標高2,677mの山です。山容は丸く他の地点からはあまり目立ちません。

山頂は不明瞭で展望指示盤のある瞑想の丘は最高点ではなく、テント場の裏辺りが標高2,677mの最高点です。

蝶ヶ岳は北アルプスの入門コースで、その魅力は槍ヶ岳から穂高連峰にかけての絶景を堪能出来るところにあります。

蝶ヶ岳へは安曇野市側から入るルートと上高地から入るルートがあり、共に鎖場や梯子などの危険個所が無く初心者でも安心して登れる山と言っていいと思います。

蝶ヶ岳の魅力は何と言っても槍ヶ岳、穂高連峰の眺めでしょう。その眺めは常念山脈の中でも1、2を争うもので、また穏やか稜線上は夏になると常念山系屈指の高山植物の宝庫となり、魅力の一つになっています。

蝶ヶ岳の地図

蝶ヶ岳の東面に現れる「蝶の雪形」

前常念岳の東壁に出来る蝶の形をした雪形 安曇野市から撮影

山頂すぐ下に現れる雪形が山名になった山として有名です。左上方に飛行している姿で、”背筋”に黒いラインがくっきりと入って完成します。

現在、僅かにラインが出始めています。望見時期は4月下旬から6月初旬で、雪形が現れる期間が長いのが特徴です。

撮影日:5月22日 撮影場所:長野県安曇野市穂高牧

名前の由来

蝶ヶ岳の名の由来は、安曇野市豊科、穂高付近から見える雪形がチョウに似ていることからつけられたもので、例年雪解け時(5月~6月)頃にその姿を明瞭に見る事が出来ます。

雪形は、毎年その出方が違います。かつて安曇野の農民達はこの雪形を見て、種を蒔く時期を判断していたのです。

蝶ヶ岳の山小屋

北アルプス山小屋
蝶ヶ岳ヒュッテ
蝶ヶ岳ヒュッテ

蝶ヶ岳のアクセス

北アルプス登山口-アクセスと駐車場
一ノ沢(ヒエ平)登山口のアクセスと駐車場
一ノ沢(ヒエ平)登山口のアクセスと駐車場
北アルプス登山口-アクセスと駐車場
三股登山口のアクセスと駐車場
三股登山口のアクセスと駐車場
北アルプス登山口-アクセスと駐車場
上高地のアクセスと駐車場
上高地のアクセスと駐車場

大滝山から見た蝶ヶ岳

大滝山からの蝶ヶ岳
大滝山からの蝶ヶ岳

蝶ヶ岳↓の左手に穂高岳、右手に槍ヶ岳です。ここから見ても明瞭なピークと呼べるようなものはないですね。

この道は、槍ヶ岳開山を行った僧・播隆上人は、ガイド役の中田又重郎と共に登山道の無いハイマツ帯をゆっくりと下り、蝶ヶ岳を目指したと言われています。

蝶ヶ岳の登山コース概要

三股ルート

大滝山分岐からの常念岳
大滝山分岐からの常念岳

蝶ヶ岳の三俣ルートは 鎖場や梯子で登る困難な個所は無く、北アルプスを始めてチャレンジする登山初心者におすすめの登山ルートです。

三股を登山口とすれば、常念岳を巡る周回コースを設定することも可能です。蝶ヶ岳山頂近くには蝶ヶ岳ヒュッテ、常念岳の少し下には常念小屋があり、一泊二日で周回出来ます。両小屋共にテント場があり、水は小屋で有料にて買うことができます。

駐車場がある登山口までの 林道烏川線 (堀金烏川)は例年4月25日前後から12月2日前後までが夏季登山期間で、マイカーでのアクセスが可能です。冬季は、ほりでーゆ~四季前のゲートが締まり通行出来なくなります。

蝶ヶ岳の魅力は何と言っても穂高連峰から槍ヶ岳までの展望です。 三俣ゲートの駐車場には70台ほどが駐車でき、立派なトイレが完備しています。
三俣ゲートを出発し15分ほど林道を歩くと三俣に着きます。 三俣には公衆トイレや登山届が出来る建物があり、水の補給ができます。

10分ほど本沢に沿って歩き、つり橋を渡って登りが始まります。 「力水」と呼ばれるこのルートの最終水場を左に見送り、直進すると進路が90度方向を左に変え、一気に登りがきつくなります。

尾根状の登山道をジグザグに急登りが終わった所がベンチのある「まめうち平」で休憩の最適地となっています。

「まめうち平」からしばらくは緩斜面の登りとなり、登山道が方向を右に90度変えた辺りから再び急登となります。
右手方向に常念岳が見えてくる辺りの登山道にはナナカマドが群生し、秋には真っ赤な紅葉を楽しめます。

森林限界を超えたあたりで大滝山分岐を左に見送るりハイマツの間を5分ほど登ると蝶ヶ岳山頂です。

山頂からは西には左から穂高岳、大キレット、槍ヶ岳と続く北アルプスの主稜線が梓川を挟んで聳え、東には安曇野市を一望できます。

コースタイム

  • 登山:三股→蝶ケ岳 5時間10分
  • 下山:蝶ケ岳→三股 3時間10分

三股ルートの難易度

難易度 1/10

体力  3/10 日帰り

上高地・徳沢ルート

最高点近くからの蝶ヶ岳ヒュッテ
最高点近くからの蝶ヶ岳ヒュッテ

上高地バスターミナルから2時間の所に建つ徳沢園の右手から長塀尾根登山道が始まります。長塀山経由で蝶ヶ岳へ至るルートです。

長塀尾根の急登りが3時間30分ほど続きます。樹林帯の中なので展望はありませんが、登山道はよく整備され鎖場などの危険箇所はなく登山初心者でも難なく登れます。

上高地バスターミナルから蝶ヶ岳までのコースタイムが長いですが、徳沢に1泊すれば三股ルートより体力を必要としません。

標高2,565mの長塀山(ながかべやま)に到着する直前には小さな池があり、次第に風景が変化してきます。長塀山山頂はあまり展望は効かず、わずかに木々の間から槍・穂高連峰をのぞき見できるくらいです。

長塀山からは傾斜の緩い稜線に沿って登ると、わずかに周辺は展望が開け右下には小さな水溜りが見えてきます。小さな池を過ぎると再び樹林帯の中に入ります。樹林帯が終わりハイマツ帯に入る直前に妖精ノ池が右手に見えます。
妖精ノ池を過ぎハイマツ帯を登り切ると一気に展望が開け槍ヶ岳から繋がる穂高連峰か目に飛び込んできます。常念岳に通じる稜線の先に、赤い屋根の蝶ヶ岳ヒュッテが見えてきます。

蝶ヶ岳山頂は明瞭なピークはなく、蝶ヶ岳ヒュッテの少し手前のところが最高点となっています。

コースタイム

  • 登山:上高地バスターミナル→蝶ケ岳 6時間40分
  • 下山:蝶ケ岳→上高地バスターミナル 5時間00分

上高地・徳沢ルートの難易度

難易度 1/10

体力  4/10 日帰り

鍋冠山~大滝山ルート

蝶ヶ岳↓の右手に槍ヶ岳、さらにその右手に常念岳です。
蝶ヶ岳↓の右手に槍ヶ岳、さらにその右手に常念岳です。

蝶ヶ岳へのコースの中で、ほとんど使われていないルートです。しかし、登山道はしっかりと整備され、快適に歩くことが出来ます。

安曇野市から鍋冠山を経て大滝山へ到るこのルートは、江戸時代に作られた飛騨新道の一部を元にして作られたもので、1826年僧・播隆上人が槍ヶ岳開山のために辿ったロマンの道でもあります。

登山口となる三郷スカイライン展望台へのアクセスはマイカーかタクシーのみとなります。

鍋冠林道の退屈な歩きが1時間ほど続きます。更に、冷沢用水のある大滝山登山口からも針葉樹林帯の中で、展望の効かない退屈なルートが常念山脈の稜線に上がる直前まで続きます。

昭文社の地図において、鍋冠山と大滝山間が登り4時間、下り3時間と記載されていますが、これは明らかに違いで、登りは半分の2時間ほど見れば十分です。下りは1時間もかからずに降りることが可能です。

大滝山から蝶ヶ岳への稜線は概ね展望の効く爽快なルートです。ここも昭文社の地図ではそれぞれ1時間45分と記載されていますが、かなり多めです。実際にはそれぞれ約1時間のコースタイムです。

蝶ヶ岳ヒュッテが混雑しているときは、ハイシーズンであっても1人布団一枚が必ず確保される大滝山荘に宿泊するのもいいかと思います。

コースタイム

  • 登山:三郷スカイライン展望台→蝶ケ岳 5時間55分
  • 下山:蝶ケ岳→三郷スカイライン展望台 3時間45分

鍋冠山~大滝山ルートの難易度

難易度 1/10

体力  4/10 日帰り

蝶ヶ岳は日帰り登山が出来る?

最もコースタイムの短い登山口の三股の標高は約1,350mで、蝶ヶ岳までの標高差は1,327mです。従って、十分日帰りピストンは可能です。

体力に自信のない方は蝶ヶ岳ヒュッテに宿泊すると良いでしょう。蝶ヶ岳は登山初心者にとって北アルプス入門コースと言えます。

蝶ヶ岳の登山口近くに沸く温泉

常念岳・蝶ヶ岳の麓に温泉が沸く

免疫力や自然治癒力を高める天然温泉(ラドン)です。 大浴場のほか、庭園式露天風呂や高温サウナ、ジャグジーもあり、心身ともにリフレッシュできます。

安曇野蝶ヶ岳温泉ほりでーゆ〜四季の郷

ほりでーゆ〜四季の郷

安曇野蝶ヶ岳温泉ほりでーゆ〜四季の郷の露天風呂から北アルプス常念岳を眺め、季節の食材を使った和食会席でゆったりと。

JR穂高駅から送迎あり 約10分。東京から毎日あるぺん号が玄関前まで来ています。

ほりでーゆから三股登山口まで8.8kmの距離があり、 約1時間40分林道を歩くか、事前にタクシーを予約します。

毎日あるぺん号

上高地温泉ホテル

上高地温泉ホテル

梓川に沿って建つ上高地温泉ホテルは、登山基地として使用しても大変便利です。

文政年間(1830年代)に開湯され、三つの自家源泉を持つ源泉かけ流しの温泉です。温泉の効能により、湯上り後長時間に渡って体がポカポカし、心地よい眠気に誘われます。

中の湯温泉旅館

中の湯温泉旅館

松本駅の無料送迎が利用できます。(予約制)
焼岳の新中の湯登山口すぐのところにあります。

夏季
(4月下旬~11月中旬)上高地へのマイカー規制をしています。
4月下旬~11月中旬には、要望に応じて毎朝1便上高地までの送迎あり。(要予約)

冬季
上高地に行かれる方は釜トンネルゲートまで随時送迎があります。
また旅館周辺でもスノーシューで散策できます。
スノーシューの無料レンタルあり、(通常スノーシューレンタル一日分1500円)

蝶が岳登山口の上高地に泊まる

上高地帝国ホテル

上高地帝国ホテル

上高地の中で最も高級なホテルです。 1泊2食付で1室2名で利用した場合の最低の部屋の料金は一人40000円以上です。

自宅(東京都内)と上高地間を帝国ホテルハイヤーにて送迎するプランもあります。中型車(クラウン・シーマ)で 210,000円です。

蝶ヶ岳の天気

山の天気予報は難しい
山の天気予報は難しい

お薦めの天気予報

テレビで流れる天気予報やネットで得られる無料の天気予報は、一般的に平地を対象としたものです。 そのため、晴れの天気予報が出ていても、山ではガスってしまうことはよくあることです。 

そこで、おすすめなのがtenki.jpの有料バージョン(+more)です。これは、月間100円と安いですが、高層天気の予報のため精度が高いです。また、山の天気予報(月額300円)を併用すると更に精度が高まります。

蝶ヶ岳の魅力

槍ヶ岳・穂高岳の絶好の展望地

常念山脈一角である蝶ヶ岳からは、上高地を流れる梓川を隔てて並走する穂高岳から槍ヶ岳の北アルプス主稜線の眺めは格別です。

左写真が穂高連峰で左手奥に焼岳も見えます。右写真が蝶ヶ岳ヒュッテと槍ヶ岳。

高山蝶の生息地

蝶ヶ岳や常念岳は高山蝶が生息している事で知られています。夏の盛りになるとタカネヒカゲ、ミヤマモンキチョウ、ベニヒカゲ、クモマベニヒカゲなどが天気の良い風のない日に飛んでいるのが見られるかもしれません。

各種情報

蝶ヶ岳登山ツアー

  • 蝶ヶ岳|登山・トレッキングツアー

役場

温泉宿の問い合わせ

登山届提出

登山地図のスマホアプリ

  • 山と高原地図のスマホアプリ
    昭文社から販売されています。山と高原地図ホーダイ - 登山地図ナビアプリ 定額(500円/月 or 4800円/年)で61エリアの「山と高原地図」が使い放題。山と高原地図[地図単品購入版]地図1エリア 650円。

蝶ヶ岳山頂周辺の気温

最高気温平均気温最低気温
1月-8.3-13.6-18.7
2月-7.4-13.0-18.5
3月-2.9-9.0-14.5
4月4.1-2.5-8.7
5月9.12.6-3.2
6月12.36.62.0
7月15.99.66.2
8月17.211.26.9
9月12.57.02.9
10月6.50.5-4.3
11月0.9-5.3-10.3
12月-5.0-10.5-15.4

蝶ヶ岳へ登るための装備と服装

軽アイゼン12本歯アイゼンピッケルサングラスツェルト
1月×
2月×
3月×
4月×
5月
6月×××
7月×××
8月×××
9月×××
10月×××
11月××
12月
必須:◎ あった方が良い:○ あったら良い:△ 必要ない:× 

服装や装備品のチェックリスト

登山地図必須 登山地図を忘れると道迷いの原因に!蝶ヶ岳~常念岳の周回縦走路には多くの分岐があります。登山地図を持って行かないのは命取りと言えます。
レインウェア必須 山の天候は急変します。天気予報で晴が出ていても
レインウェアは必須です。また、防寒着としても使えます。
セパレートタイプの通気性と防水性を兼ね備えたゴアテックスがベストです。使用頻度が増すと撥水性が無くなるので定期的なメインテナンスも重要です。
帽子必須 大滝山分岐で森林限界を超えます。そして、稜線に上がると直射日光が強烈に降り注ぎます。蝶ヶ岳~常念岳の周回縦走路では展望が開けています。日よけ用のつばが広く軽いものをお奨めします。
日焼け止め必須 蝶ヶ岳~常念岳の縦走路では日光を遮る木々がありません。
森林限界を超えると紫外線が強いので必帯です。
飲料水必須 天気の良い日は少し多めに持って行きましょう。ただし、稜線上では常念小屋、蝶ヶ岳ヒュッテで水の確保は可能です。
ヘッドランプ必須 何かの原因で夜の行動を余儀なくされた場合や早朝、 日が昇る前に常念小屋や蝶ヶ岳ヒュッテを出発する時などにはには必要です。
行動食必須 三股からの日帰りピストンの場合にはあまり多くを必要としませんが、縦走路を行く場合には多めに持っていくことをお勧めします。
パックカバー必須 ザックが濡れないようにするためのザックカバーは雨に日には絶対必要です。ザックカバーも雨衣と同様に防水性が衰えてきます。時折、防水スプレーをするなどのメンテナンスが必要です。
救急薬品必須 切り傷、擦り傷にカットバン、絆創膏を持っていくと良いでしょう。虫刺され薬品も。縦走周回路を歩く場合には筋肉痛に備えてトクホンを持参すると助かります。
ティッシュペーパー必須 登山中いきなりしたくなってしまった場合など、万が一の時のために必帯です。
防寒着必須 薄手のフリース,セーター、軽いダウンジャケット。
蝶ヶ岳山頂では7月8月でも9°c近くまで下がることがあります。それに相当した防寒着を持っていくと良いでしょう。
手袋あったら良い 革製の手袋がベストですが、軍手でもOKです。
カメラあったら良い 山旅の思い出にぜひどうぞ。目の前に広がる槍ヶ岳や穂高連峰のパノラマを写真に収めてください。
ビニール袋あったら良い ごみ入れとして、汗を大量にかいた時の使用前の下着入れ、使用後の下着入れとして数個あると便利です。
保険証(コピー)あったら良い 事故や遭難時に必要です。

飛騨新道 僧・播隆上人が辿ったロマンの道

松本駅前の播隆上人像
松本駅前の播隆上人像

蝶ヶ岳を通る飛騨新道の歴史

安曇野市三郷小倉から三郷スカイラインを通り、鍋冠山を経由して大滝山、蝶ヶ岳へ到る登山ルートは、江戸時代後期に飛騨新道として松本から飛騨へ抜ける最短ルートとして開発されたものを元にして作られたものです。

当時、松本と飛騨を結ぶ交易路は安房峠を越える鎌倉街道、更に南を迂回する野麦峠を越える野麦街道の二本がありました。

鎌倉街道は、難所が多く使用禁止となり、松本・飛騨間の交易は大変不便を強いられていました。

そこで、岩岡村(現安曇野市)の庄屋・伴次郎が私財をなげうって西暦1,820年(文政三年)に飛騨新道の開削工事に入り、15年の歳月を掛けて飛騨地方との交易路を完成させました。この時、協力したのが槍ヶ岳の開山を行った僧・播隆のガイド役を務めた小倉村(現安曇野市)の中田又重郎でした。

西暦1826年(文政9年)中田又重郎のガイドにより僧・播隆は、大滝山まで既に完成していた飛騨新道を辿ります。大滝山で飛騨新道から別れ、稜線づたいにハイマツ帯を掻き分け蝶ヶ岳に向かいました。僧・播隆の槍ヶ岳開山についての詳細は、槍ヶ岳のページをご覧ください。

飛騨新道は、松本平~小倉村~鍋冠山~八丁ダルミ~大滝山~蝶ヶ岳~徳澤~上高地~焼岳・中尾峠~飛騨高山間の道でしたが、崩壊による通行止めが多発します。松本藩の資金的な協力が得られず、伴次郎の私財も底を突いたことなどから26年余りで、廃道となる運命を辿りました。