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北アルプス登山ルート概要
北アルプスとは
北アルプスは南北に150km、東西25kmの広大な山岳域を形成し、そのほとんどの部分が中部山岳国立公園に指定されています。
北アルプスという呼び名は通称で、飛騨山脈(ひださんみゃく)というのが正式名称です。
最高峰は奥穂高岳の3,190mです。
日本国内の3,000mを越える高山は21座、その内10座が北アルプスにあり、そして槍ヶ岳・穂高岳に8座と、
最も多く集中しています。
北アルプスは造山運動が古くから起こり、南アルプスに比べ浸食が進んでいます。
そのため山容は急峻となり、多くの登山者を魅了してやみません。
北アルプスは概ね次の3つのエリア(「槍ヶ岳・穂高連峰」、「立山・白馬岳・剣岳(剱岳)」、「御嶽山・乗鞍岳」)に分かれています。
南部の「槍ヶ岳・穂高連峰」の領域は北アルプスの核心部とも言え、日本屈指の切り立った岩稜帯が続きます。
特に槍ヶ岳と北穂高岳の間にある大キレットはスパット切れ落ちた高度感のある岩稜帯の通過があり、中でも長谷川ピーク、飛騨泣きは北アルプス縦走路の中にあって最大の核心部といって良いでしょう。
次いで北穂高岳から穂高岳山荘へ抜ける縦走ルートも高度感のある鎖場の通過で緊張感を覚える所です。
槍ヶ岳・穂高連峰の山域は北アルプス北部に比べ比較的降雪量は少なく、夏の残雪量も少ないので、梅雨前線が消えたころから夏山シーズンが始まります。
10月に入ると涸沢や槍沢は紅葉に染まり、ナナカマドは赤、ダケカンバ・シラカバは黄、カラマツは金に輝き、まさに錦繍の山々という言葉がぴったりです。
北部の「立山・白馬・剣岳(剱岳)」の領域は積雪量が最も多く、高山植物が多いことでも知られています。
早い年では、9月に初冠雪を観測し、10月に降る雪はそのまま根雪となることが多いといわれています。
剣岳(剱岳)はこの山域で最も険しいルートで、一般道とは言え、体力・技術の必要な名峰といえるでしょう。
北アルプスの主稜線の東側を南北に並走する山域は常念山脈と呼ばれ、北の唐沢岳から始まり餓鬼岳、燕岳、大天井岳、常念岳、霞沢岳へと続いています。
最高峰は大天井岳の標高2,922mで大半が2,600m台の標高を持ち、おおらかな山容のため北アルプスの初心者コースとしてうってつけです。
中房温泉をスタート地点として燕岳〜大天井岳〜喜作新道〜槍ヶ岳へと向かうルートは表銀座縦走コースと呼ばれています。
表銀座と名が付くだけあって登山者の数は多く、シーズン中の山小屋の混雑は大変なものです。
一方、高瀬ダムをスタート地点として烏帽子岳〜野口五郎岳〜鷲羽岳〜三俣蓮華岳〜双六岳から西鎌尾根を経て槍ヶ岳へと向かうコースは裏銀座縦走コースと呼ばれ、比較的すいていて静かな山行を楽しむ事が出来るルートです。
北アルプスのルート難易度を10段階で表示していますので参考にしてください。
登山届提出
長野県:長野県のホームページ
岐阜県:岐阜県北アルプス山岳遭難対策協議会事務局
富山県:富山県警察
登山地図のスマホアプリ
山と高原地図のスマホアプリが昭文社から販売されています。月額版:料金月400円、通常版:地域1エリア500円。
北アルプスのお薦め絶景ポイント
広範囲に渡る北アルプスの中でも外せない絶景ポイントを紹介します。
三俣蓮華岳から北アルプス最深部の黒部源流の山々、右手から鷲羽岳、水晶岳
三俣蓮華岳から北アルプスの最深部、黒部源流の山々(右手から鷲羽岳、中央奥が水晶岳)。右下に小さく赤い屋根の三俣山荘が見えます。
白馬大雪渓
白馬岳のメインルート。白馬大雪渓から立ち上る霧の先に杓子岳が日の光に照らされて浮かび上がる姿は筆舌に尽くしがたい。
小蓮華岳から白馬岳の稜線
小蓮華岳から白馬岳への稜線。どっしりと構えた白馬岳の山体と岩礫の穏やかな道は、まさに天空散歩。
剱岳(剣岳)のカニノヨコバイ
剱岳のカニノヨコバイに入る所です。カニノヨコバイが難所と言われるのは足場の岩棚が見えないことがその理由です。一歩目さえ確保出来れば後は難しくありません。「平蔵の頭(へいぞうのずこ)」の尖った頂きが剱岳を象徴しています。
龍王岳の東側の岩璧
龍王岳の東側の岩璧は大迫力。右手側に見えるピークは立山・雄山です。立山におけるロッククライミングのゲレンデとして人気の高い龍王岳主峰南陵リッジ群の中央のバットレスC稜に取り付くクライマー達。
五色ヶ原と薬師岳
ザラ峠を隔てて広大な台地・五色ヶ原の先に聳える薬師岳。ピンク色の屋根の五色ヶ原山荘がアクセントになっています。
黒部五郎岳カール
男性的で雄大な黒部五郎のカールは、まさに天上の庭園と呼ぶににふさわしく、日本百名山の著者・深田久弥は「青天井の大伽藍」と称賛しています。
槍沢から槍ヶ岳
長い槍沢ルートの最後に槍の穂先が姿を現します。北アルプスにおいてランドマーク的存在の槍ヶ岳を目の前にすると感動が込み上げます。
天狗池に投影される「逆さ槍」
天狗池は雪渓に覆われて、その姿を現すのは8月に入ってからで、その全容が現れるのはお盆明け10日後が目安です。9月末になるとナナカマドが紅葉し、逆さ槍とのコラボレーションが美しい景観を作り出します。
穂高岳・涸沢の紅葉
北アルプスの最も美しいと言われている涸沢の紅葉。北アルプスばかりではなく日本屈指の紅葉の名所と言っても過言ではありません。紅葉の見頃は9月末から10月上旬。
蝶ヶ岳からの槍ヶ岳
常念山脈の南に位置する蝶ヶ岳から望む槍ヶ岳や穂高連峰は、まさに絶景です。
鏡池に写る逆さ槍
鏡平一帯は沼が点在した平坦地で、その中でも鏡池に写る槍ヶ岳や穂高岳の絶景を求め多くの登山者が訪れます。
燕岳の花崗岩
常念山脈のほぼ北の端に位置して、表銀座コースの拠点ともなる燕岳は、花崗岩が天然のオブジェを作り出しています。
乗鞍岳山麓の五色ヶ原に落ちる布引滝
この滝は、伏流水が断崖で一気に噴き出したものです。五色ヶ原のツアーにはシラビソコース、カモシカコースの二つがあり、共に9000円です。各コースとも一日100名を入山の上限として自然環境の保護に努めています。ツアー期間は:5月20日〜10月31日です。
北アルプスの山岳温泉
北アルプス山中の山岳温泉を紹介。
白馬岳蓮華温泉ロッジの露天風呂 仙気の湯
白馬岳蓮華温泉ロッジの露天風呂は、仙気の湯の他にそれぞれ泉質が違う薬師湯、三国一の湯、黄金湯の四つがあります。天気の良い日には、背景に雪倉岳・朝日岳・五輪山などの北アルプスの山々を眺めながらの入浴が出来ます。
白馬鑓温泉小屋の露天風呂
白馬鑓温泉小屋の源泉の湧き出し口が雪崩の巣になっているため、7月中旬〜9月下旬の期間限定でプレハブの山小屋が出現します。登山口の猿倉から山道を約4時間30分歩く必要があります。
みくりが池温泉
みくりが池温泉は、黒部立山アルペンルートの室堂から徒歩15分の位置にあります。地獄谷(カジヤ地獄東)から350m引き湯してそのまま浴槽にそそがれています。内風呂のみで露天風呂はありません。
みくりが池温泉の内風呂
みくりが池温泉の内風呂からは大日三山がよく見えます。
雷鳥沢温泉(雷鳥沢ヒュッテ)
雷鳥沢温泉は、黒部立山アルペンルートの室堂ターミナルから徒歩40分の位置にあります。
雷鳥沢温泉(雷鳥沢ヒュッテ)の露天風呂
露天風呂からは立山の眺めが最高です。窓枠にはガラスが入っていないので、自然の風が入り、開放感に溢れています。
湯俣温泉晴嵐荘の内風呂
湯俣温泉晴嵐荘は以前は露天風呂がありましたが、現在は内風呂のみです。野趣溢れる露天風呂を楽しみたければ、下記の湯俣温泉晴嵐荘から墳湯丘方面へ10分で素掘り露天風呂があります。
湯俣温泉
湯俣温泉晴嵐荘から湯俣川を10分ほど遡ると、川沿いのいたる所から温泉が湧き出しています。適当な湯船を作り入浴する事が出来ます。
ウィリアム・ガウランドとウォルター・ウェストンの功績
ウィリアム・ガウランド(ゴーランド)は、明治政府が大阪造幣寮(現在の造幣局)にイギリスより招聘した化学兼冶金技師です。登山家でもあった彼は、明治14年(西暦1881年)に出版された「日本旅行案内」の中で、現在の北アルプスを中心に記述を担当し、その中で北アルプスを"Japanese Alps"と言う表現を用いて紹介しました。当サイトのサイト名にもなっている「日本アルプス」の命名者ということが出来ます。
ウォルター・ウェストンは、英国人宣教師で、3回来日し、延べ15年に渡って日本に滞在しました。その間、日本全国の山を登り、明治29年(西暦1896年)に「日本アルプスの登山と探検」を出版し、世界各国に日本の山を紹介しました。
我が国に近代的な登山意識をもたらし、日本山岳会結成のきっかけを作りました。その功績により、山開きの時期に合わせ、日本各地ではウェストン祭が開催されるようになりました。
上高地のウォルター・ウェストンのレリーフ
上高地の梓川沿いにあるこのウェストン碑は、日本山岳会が昭和12年にウェストンの喜寿(77歳)を祝って作ったもので、昭和40年にかけなおされています。毎年6月第1日曜日にはレリーフ前でウェストン祭が開催されます。
北アルプス開山の歴史
北アルプスにおいて最も古く開山されたのは立山です。奈良時代には既に開山されていたようで、その後、立山信仰が盛んになっていきます。一方で、その東に位置する後立山連峰は山岳信仰や修験道の霊山として開山されませんでした。江戸時代になっても、松本藩や加賀藩が国境警備や森林伐採した木材の密売を取り締まるため入山を禁じていました。
槍ヶ岳や穂高岳周辺は、主に上高地から入るルートがあり、飛騨新道が江戸時代の西暦1835年に完成しています。このルートは現在の安曇野市三郷小倉と新穂高温泉郷中尾とを結ぶもので、途中、鍋冠山〜大滝山、上高地〜中尾峠、中尾峠〜新穂高温泉を通っていました。
また、現在の松本市安曇島々から島々谷を遡上し、徳本峠から上高地へ抜けるルートがありました。このルートは、戦国時代には既に開通していたと思われます。
槍ヶ岳は、播流上人によって江戸時代の西暦1828年に開山されています。
その後、明治時代になり、明神池の畔に山小屋を建てた上條嘉門次が、ウェストンや鵜殿正雄などの山岳案内人となっています。小林喜作は、燕岳から槍ヶ岳に至る喜作新道(現在の表銀座コース)を開拓し、殺生小屋を作りました。
北アルプス後立山連峰の回転隆起
後立山連峰は、今から180万年前頃の火山のカルデラ湖にたまった岩石です。マグマの上昇や横からの圧力によって数十万年かけて回転しながら隆起してきた山なのです。
爺ヶ岳白沢のコルのカルデラ湖堆積物
爺ヶ岳の南峰と中央峰の白沢のコル(峰と峰の鞍部)付近では、カルデラ湖内に水平に堆積した火山灰層が、回転隆起のために垂直に近い傾斜になっている様子が観察出来ます。このことは回転隆起の何よりの証拠です。
写真中央の山が爺ヶ岳で、山頂部は三つのピーク(左から南峰・中央峰・北峰)で構成されています。右手の双耳峰は鹿島槍ヶ岳です。
大町山岳博物館
常設展示は、「北アルプスの自然と人」がメインテーマです。自然科学・人文科学の両視点から、後立山連峰を中心とした北アルプスを総合的に紹介しています。後立山連峰を中心に大町市や、それを取り巻く台地の成り立ち、そこに生息・生育する動物と植物の生活、北アルプスにおける過去から現在までの山と人との関わりを知ることが出来ます。
併設された図書館には、山岳関係の蔵書が豊富にあります。
大町山岳博物館
1951年(昭和26年)、行政主導型ではなく、地域の住民運動によって生み出された博物館です。全国的に見てもユニークな存在であると言えます。
大町山岳博物館常設展示−山の恵みと山村の暮らし
山村の民具−被り物、雨具・防寒具、履物・手袋、除雪具など。山村の伝統食。山村の屋敷などが展示されています。
大町山岳博物館常設展示−山奥の恵みと生業
狩猟−カモシカと熊猟、イワナ釣り。採集−伐木と運材、岩石と鉱物、薬草、温泉などの展示。
北アルプス各所の岩石を展示
矢沢石
爺ヶ岳の東に位置する白沢天狗岳を作っている溶結凝灰岩です。爺ヶ岳の火山岩と同じように、回転・隆起の証拠が残されています。柱状に割れる性質を利用して、山麓の縄文時代の人々は、これを用いた環状列石を残しました。
後立山連峰は、今から180万年前頃の火山のカルデラ湖にたまった岩石です。マグマの上昇や横からの圧力によって数十万年掛けて回転しながら隆起した山です。
次はどこの山へ行こうかな。行きたい山がすぐに見つかる。
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