聖岳とは
聖岳は長野県飯田市と静岡県静岡市との境界に位置し、日本における3000メートル級の山では最南端です。山頂は広大で、西峰の前聖岳(標高3013m )と東峰の奥聖岳(標高2982m)からなっていますが、一般に前聖岳を聖岳と呼んでいます。重厚感溢れる山容の中に女性的優美さを兼ね揃えた山と言えるでしょう。
聖岳は高山植物の豊富さや赤色チャートなどの魅力が沢山あり、日本百名山に名を連ねるに値する名峰です。
登山口へのアクセス注意点
畑薙第一ダムからは東海フォレストの送迎バスがハイシーズンには一日5往復でています。聖岳登山口で下車する事は可能ですが、乗車は出来ません。
井川観光協会の送迎バスも民宿や山小屋を利用すれば無料で利用する事が出来ます。詳しくは椹島へのアクセスのページをご覧ください。
又、長野県飯田市側から入る場合、国道152号線から林道赤石線の終点の登山口、易老渡・便ヶ島(たよりがしま)までは、通行止めになることが多いので信州遠山郷のホームページを確認することをお薦めします。
登山口まで公共交通機関がないでマイカーかタクシーとなります。 タクシーならJR飯田駅→便ヶ島は約1時間40分・約18,000円、JR 飯田線平岡駅からなら約1時間20分・12,000円です。
- 1. 登山口へのアクセス注意点
- 2. 聖岳の地図
- 3. 聖岳の山小屋
- 4. 聖岳のアクセス
- 5. 聖岳の登山コース概要
- 5.1. ① 聖沢(東俣林道)ルート
- 6. 聖岳の日帰り登山は出来る?
- 7. 聖岳の登山口近くの温泉
- 8. 聖岳の天気の特徴
- 9. 聖岳の魅力
- 9.1. 前聖岳と奥聖岳間のお花畑
- 9.1.1. 前聖岳と奥聖岳間の二重山稜の凹地に大きなお花畑
- 9.2. 聖岳に咲く数々の高山植物
- 10. 聖岳の名前の由来
- 11. 赤色チャート層
- 11.1. 聖沢のラジオラリヤチャート岩盤
- 11.2. 聖岳のラジオラリヤチャート岩盤
- 12. 聖平植物復元活動
- 12.1. 植生変化の原因と対策
- 13. 各種情報
- 13.1.1. 聖岳登山ツアー
- 13.1.2. 観光協会
- 13.1.3. 登山届提出
- 13.1.4. 登山地図のスマホアプリ
- 14. 聖岳山頂周辺の気温
- 15. 聖岳へ登るための装備と服装
- 16. 服装や装備品のチェックリスト
- 17. 大井川鉄道
聖岳の地図
聖岳の山小屋
聖岳のアクセス
聖岳の登山コース概要
① 聖沢(東俣林道)ルート
大井川上流の赤石ダム近くが聖沢登山口です。杉やヒノキの林の急登から登山が始まります。急登が終わると歩きやすいトラバースがしばらく続きますが、その後桟橋が連続するトラバースです。危険はさほどありませんが、所々で桟橋が不安定に見える所があり、やや危険を覚えます。
聖沢吊り橋を過ぎると広葉樹林帯の急登があります。架線小屋跡からは広い尾根筋を登ります。途中、乗越と呼ばれる場所まで来ると聖岳が大きく見え、休憩するのにはもってこいの場所です。
その後、ガレ場のトラバースの通過があり、ややスリップしやすいため注意が必要です。岩頭滝見台からは聖沢を隔てて奥聖岳の山腹から流れ落ちる二本の細長い滝を見ることが出来ます。
聖沢の源頭部が近づくと次第に傾斜が緩み、橋で2回聖沢を渡ると聖平小屋です。聖平小屋から木道を200mほど歩くと上河内岳から茶臼岳へ通じる登山道と聖岳へ向かう登山道が分岐します。
薊畑辺りまで登ると大きく展望が開けます。ダケカンバの林を抜けた辺りで森林限界を超え、富士山まで視界に入ります。小聖岳まで登ると目の前に大きく存在感を示すように聖岳が聳えています。
小聖岳からガレ場の縁の痩せ尾根を登るため滑落に要注意です。そして前聖岳へは砂礫の大斜面を登って行きます。前聖岳の山頂に立つと360度の展望が開け、南方面には上河内岳、茶臼岳、光岳へ通じる稜線が、東方向には笊ヶ岳を主峰とする稜線が南北に走り、その先に富士山が見えています。北方向に目を転ずると赤石岳から悪沢岳への縦走路がよく見えます。更には南アルプスの北部の山々が幾重にも重なって見えています。北西方面には中央アルプス、そしてその右手奥に北アルプスも確認出来ます。
前聖岳から奥聖岳へは片道15分もあれば着く事が出来ます。途中の二重山稜になっている凹地には7月から8月上旬であれば高山植物が見事なお花畑を作っています。又、赤色チャート層も広範囲に露出していますから見る価値は十分にあります。奥聖岳山頂からの眺望も前聖岳同様にありますから、ここでゆっくり休むのもお薦めです。
コースタイム
- 登山:聖沢登山口(東俣林道)⇒聖平小屋 5時間10分 聖平小屋⇒前聖岳 2時間15分 合計7時間25分
- 前聖岳⇔奥聖岳 往復30分
- 下山:前聖岳⇒聖沢登山口(東俣林道) 5時間40分
難易度 2/10
体力 7/10 日帰り
聖岳の日帰り登山は出来る?
登山口の椹島ロッジの標高は1,100mで、聖岳の標高は3,013mm、獲得標高は2,000mを超えます。しかも、森林限界が2,700mぐらいの高さにある為、針葉樹林帯の中の単調な登りを約6時間以上強いられます。
椹島から聖沢(東俣林道)ルートで登った場合、ピストンの往復でコースタイムが13時間35分かかります。椹島ロッヂ発の最終バスが14:00なので健脚者であっても日帰り登山は不可能と言えます。
また、便ヶ島を登山口とした場合でもコースタイムはほぼ一緒です。標準的な登山者は途中の聖平小屋に宿泊し、翌朝に備えるのが賢明でしょう。
聖岳の登山口近くの温泉
赤石温泉白樺荘
素泊まりプラン¥4110~
どのお部屋でも一人(中学生以上)¥4110
食事2食付きプラン¥6990~
宿泊料金一人(中学生以上)朝・夕食付で¥6990
日帰り入浴
4月~11月 午前10:00~午後6:00
12月~3月 午前10:00~午後5:00
中学生以上 510円
小学生 200円 小学生以下無料
聖岳の天気の特徴
聖岳は北部に比べてやや晴天率が低い
南アルプスの南部に位置する聖岳の山域は、日本海側特有の冬型気候の影響を受けにくいため積雪量は多くありません。
また、南アルプスの中では北部に比べてやや晴天率が低い傾向にあることが特徴に挙げられます。
夏山シーズンの期間:7/13 ~ 10/10までは登山口の椹島ロッヂまで送迎バスが運行されています。
7月の梅雨明けまでは晴天の確率は低いですが、梅雨開けと共に晴天がしばらく続きます。また、秋も比較的晴天に恵まれます。しかし、10月上旬で初冠雪を見る年もあり、雨天だけではなく、強風などにも天候には十分な注意が必要です。
聖岳の魅力
前聖岳と奥聖岳間のお花畑
前聖岳と奥聖岳間の二重山稜の凹地に大きなお花畑
前聖岳と奥聖岳間は二重山稜の凹地になっていて、チングルマ、コイワカガミ、キバナシャクナゲ、イワツメクサ、ミヤマシオガマなどの高山植物が色とりどりの花を咲かせます。
また、赤色チャート層も顕著に認められます。
聖岳に咲く数々の高山植物
シラビソの針葉樹林帯を抜けるとお花畑が出迎えてくれます。特に山頂から東方に伸びる聖岳東尾根と薊畑から聖平に至る稜線上に高山植物が豊富に分布しています。
聖岳の名前の由来
山名は聖岳の南東を流れる聖沢が、肘を曲げた様な形をしていることから「ヒジル」から転訛したと言わています。
写真は、冬季ルートに使われる聖岳東尾根の右下に流れるのが聖沢です。遠くに富士山も見えます。
赤色チャート層
聖沢のラジオラリヤチャート岩盤
赤石山脈の名前の由来ともなったラジオラリヤチャート岩が聖沢に多数点在しています。
聖岳のラジオラリヤチャート岩盤
聖岳の北西部に当たる所の兎岳の鞍部「聖兎のコル」と呼ばれる奥赤石沢の源頭部周辺には赤色チャート盤岩露出地が広範囲にあります。
聖平植物復元活動
聖平は、かつてニッコウキスゲを中心としたお花畑が広がっていましたが、現在はお花畑とは言い難い草原となっています。 このままの状況で推移すると、聖平は裸地部が拡大し、バイケイソウやイネ科、カヤツリグサ科を中心とした単純な植生に変化すると推測されてます。
鹿の食害によってニッコウキスゲは完全に絶滅したと言わています。ニッコウキスゲの復元を目指して静岡県の委託により南アルプス高山植物保護ボランティアネットワークによって柵が設置されています。
植生変化の原因と対策
- 人為(無断採取や踏み荒らし)による裸地化
- ニホンジカの菜食圧の影響による植生変化(トリカブト、キオン、マルバダケブキ等の一部の不嗜好植物などはあまり影響を受けていません。)
- ニホンジカの踏圧により表土の流失
- 積雪量の減少等による乾燥化傾向
対策として登山道の整備(木道)、 登山道の新浸食防止、ニホンジカの掘り返し跡の植生還元、ニホンジカの採食圧の実態調査などが行われています。
各種情報
聖岳登山ツアー
- 聖岳|登山・トレッキングツアー
観光協会
- 伊那市観光協会 電話:0265-96-8100
- 静岡市観光協会 電話:054-251-5880
- 南信州ナビ 電話:0265-28-1747
- 川根本町まちづくり観光協会 電話:0547-59-2746
- 大鹿村観光協会 電話:0265-39-2381
登山届提出
- 静岡県は静岡県警察
- 山梨県側は山梨県警察
- 長野県は長野県県庁のホームページ
登山地図のスマホアプリ
- 山と高原地図のスマホアプリ
昭文社から販売されています。山と高原地図ホーダイ - 登山地図ナビアプリ 定額(500円/月 or 4800円/年)で61エリアの「山と高原地図」が使い放題。山と高原地図[地図単品購入版]地図1エリア 650円。
聖岳山頂周辺の気温
最高気温 | 平均気温 | 最低気温 | |
1月 | -9.5 | -15.7 | -20.7 |
2月 | -7.9 | -13.8 | -20.0 |
3月 | -3.4 | -9.7 | -16.3 |
4月 | 3.1 | -3.7 | -11.0 |
5月 | 7.9 | 1.5 | -4.6 |
6月 | 10.8 | 5.3 | 0.6 |
7月 | 14.1 | 8.7 | 4.9 |
8月 | 15.5 | 9.5 | 5.2 |
9月 | 11.1 | 5.5 | 1.2 |
10月 | 5.5 | -0.7 | -6.2 |
11月 | -0.4 | -7.0 | -13.0 |
12月 | -6.2 | -12.4 | -17.7 |
聖岳へ登るための装備と服装
軽アイゼン | 12本歯アイゼン | ピッケル | サングラス | テント | |
1月 | × | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
2月 | × | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
3月 | × | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
4月 | × | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
5月 | × | ◎ | ○ | ○ | ○ |
6月 | ○ | △ | × | △ | ○ |
7月 | × | × | × | △ | × |
8月 | × | × | × | △ | × |
9月 | × | × | × | △ | × |
10月 | × | × | × | △ | × |
11月 | × | × | △ | △ | ◎ |
12月 | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
服装や装備品のチェックリスト
登山地図 | 必須 聖岳山頂は広いので濃霧時には登山地図を忘れると道迷いの原因に! 登山地図を持って行かないのは命取りと言えます。 |
レインウェア | 必須 聖岳の天候は急変します。天気予報で晴が出ていても レインウェアは必須です。また、防寒着としても使えます。 セパレートタイプの通気性と防水性を兼ね備えたゴアテックスがベストです。 |
帽子 | 必須 稜線に上がると直射日光が強烈に降り注ぎます。小聖岳辺りで森林限界を超えます。日よけ用のつばが広く軽いものをお奨めします。寒さが厳しいときは、耳を覆うニット製、冬山ではフルフェイスタイプをお奨めします。 |
日焼け止め | 必須 聖岳は3,013mあり稜線では日光を遮る木々が一切ありません。森林限界を超えると紫外線が強いので必帯です。 |
飲料水 | 必須 天気の良い日は少し多めに持って行きましょう。 聖平小屋に水場があります。また、聖沢(東俣林道)ルートでは2か所の水場があります。 登山行程に合わせて水の量を調整するとよいでしょう。 |
ヘッドランプ | 必須 夜になると電気を落としてしまう山小屋もあります。そんな時トイレに行くのが不自由です。また、暗い内から山頂まで登り、御来光を拝むためにも必要です。 |
行動食 | 必須 聖岳登山ではコースタイムが長いので多めに持っていくと良いでしょう。パン・ナッツ類・野菜ジュース、飲むヨーグルトなど立ち休憩で食べられるものがお薦めです。 |
パックカバー | 必須 ザックが濡れないようにするためのザックカバーは雨に日には絶対必要です。ザックカバーも雨衣と同様に防水性が衰えてきます。時折、防水スプレーをするなどのメンテナンスが必要です。 |
救急薬品 | 必須 切り傷、擦り傷にカットバン、絆創膏を持っていくと良いでしょう。虫刺され薬品も。聖岳、荒川岳や赤石岳の周回ルートでは行程が長く体力を必要とするところが多いので、トクホンのような筋肉痛に効く貼り薬。 |
ティッシュペーパー | 必須 登山中いきなりしたくなってしまった場合など、止血用などの万が一の時のために必帯です。ポケットティッシュを水で濡らし耳栓として使う場合にも有効です。 |
防寒着 | 必須 薄手のフリース,セーター、軽いダウンジャケット。 赤石岳山頂では、7~8月でも最低気温が5度近くまで下がることがあります。 軽くて保温性の高いものを選びます。ゴアテックスのレインウェアを その上に着ると更に保温性が高まります。 |
手袋 | あったら良い 革製の手袋がベストですが、軍手でもOKです。 |
耳栓 | あったら良い 聖岳登山コースは山中の山小屋で最低でも一泊するのが一般的です。山小屋では大部屋が基本です。就寝時に いびきをかく人が必ずいます。耳栓の効果は絶大です。 |
カメラ | あったら良い 赤色チャートの撮影や高山植物が豊富なので山旅の思い出にぜひどうぞ。ウエストポーチに収納出来る大きさであることが望ましいです。 |
ビニール袋 | あったら良い ごみ入れとして、使用前の下着入れ、使用後の下着入れとして8~9個あると便利です。 |
保険証(コピー) | あったら良い 事故や遭難時に必要です。 |
サブザック | あったら良い 前聖岳にザックを置いて、サブザックで身軽な状態で奥聖岳をピストンすることが出来ます。水、カッパなど必要最低限が入る軽いコンパクトなものを使用すること。 |
シュラフカバー | あったら良い 遭難時や混雑している山小屋(一つの布団に2人)で役に立ちます。毛布2枚を床に敷きゴアテックス製のシュラフカバーに入ります。 |
大井川鉄道
大井川鉄道は JR 東海道本線の金谷駅を起点として千頭駅までの39.5kmの区間を走る大井川本線と千頭駅から井川駅までの25.5kmの区間を走る井川線(南アルプスあぷとライン)により構成されています。
大井川本線はSLが走り、トーマス号・ジェームス号などテレビでおなじみの車両の運行もなされています。千頭駅では「きかんしゃトーマスフェア」が開催され、間近で写真撮影などが出来るようになっています。 SLの乗車は事前予約制となっています。
南アルプスあぷとラインは、大井川水系の井川ダム発電所建設のために材運搬用トロッコとして作られたのが始まりで、ダムの完成に伴って大井川鉄道に経営が委託されました。 大井川上流の渓谷を縫うように走る小さな列車で、時速30キロほどの低速のため時を忘れる旅になります。急勾配の箇所では日本唯一の「アプト式軌道」(歯車を使って登る)、接岨峡、関の沢鉄橋など見どころ豊富です。