日本アルプス登山ルートガイド > 南アルプス > 北岳
北岳登山ルート概要
甲府盆地の標高の高い所から見れば鳳凰三山と早川尾根の奥にその山頂だけが顔を覗かせています。 山域は山梨県南アルプス市芦安村に属しています。
広く高山帯にある北岳は日本有数の高山植物の宝庫で、各所にお花畑を作っています。
北岳固有種のキタダケソウは雪解けとともに開花し、6月下旬から7月上旬が見頃となります。北岳周辺の地質は、保水性と通気性を兼ね備えているため、数多くの高山植物を育んでいると言わています。
八本歯のコルルートを登れば、大樺沢(だいかんばさわ)源頭部に屏風のようにそそり立つ岩の壁が見えてきます。北岳の東側斜面を標高差600mで形作るロッククライミングで有名な北岳バットレスです。八本歯のコルの少し下から見ると岸壁をよじ登るクライマーが確認出来ます。
北岳へは芦安からバスで広河原に入り、入山するのが一般的で便利です。
芦安駐車場と広河原間のバスの本数は多く便利ですが、乗合タクシーなら9人集まれば即座に出発してくれ、バスより100円高いだけの料金ですから おすすめです。
登山コース案内
北岳へのルートは複数あり、その中で最も変化に富んでいて、おすすめなのが「八本歯のコル」を経由して登るルートです。
大樺沢 (おおかんばざわ)の雪渓を抜け、北岳バットレスと呼ばれる山頂から続く高さ約600メートルの岩壁を眺めつつ、木製の丸太梯子(傾斜はあまりきつくない)が連続する所を直上すると八本歯のコルに飛び出します。
八本歯のコルで森林限界を超え、山頂に連なる稜線の風衝草原にはキンロバイ、タカネイブキボウフウ、イワベンケイ、ハクサンイチゲなどの背の低い高山植物が高密度でお花畑を形成しています。簡単な岩稜の登りとともに、白鳳三山方面の展望を楽しませてくれます。
雪渓の通過は例年7月末辺りまでアイゼンが必要です。7月上旬辺りまでは12本歯のアイゼンとピッケルが必要でしょう。雪渓の状態は北岳山荘に問い合わせるとよいでしょう。
北岳山荘から八本歯ノコル方面に向かうトラバースルートはアップ・ダウンはほとんどなく、展望もよく高山植物が大変豊富な場所です。
当サイトで紹介している写真ほどの高度感はありませんので安心して行けるルートです。
しかし、雨の日などは梯子や橋が滑りやすくなってますから通過には注意してください。また、6月になると他の花々に先駆けて咲く北岳固有種のキタダケソウはこの周辺に生育しています。
北岳山荘から北岳山頂に向かう直登りルートは変化に富んだ岩稜の登りです。
登山道の傾斜は比較的緩く、昭文社の地図に危険マークがありますが、難しい所ではありません。しかし、丸太の梯子が一か所に架けられていて、雨天時などは滑りやすいですから、登下山には注意してください。
また、登山道沿いの岩場には色とりどりの背丈の低い高山植物(シコタンソウ、タカネシオガマ、タカネツメクサ、オヤマノエンドウ、チョウノスケソウ)などが大変見事な天然の花壇を作り出しています。 南アルプスの中でも最も綺麗なお花畑の場所だと思います。
また、草スベリコースと右俣コースを比べると、北岳の眺望やお花畑などの優劣を勘案すると右俣コースに軍配が上がるのではないでしょうか。右俣コースでは背丈が1m近くになる高茎草原が広がり、7月上旬から8月上旬にかけてハクサンフウロ、イブキトラノオ、シナノキンバイ、ミヤマハナシノブなどの高山植物が花を咲かせます。
北岳を日帰りするには朝5:10分に芦安バス停を出発すれば最終のバスに間に合います。しかし、標高差が1,663mとあり健脚者のみが可能でしょう。
山頂からは大パノラマが広がり、近くに間ノ岳、農鳥岳の尾根が続くのが見えます。鳳凰三山や甲斐駒ケ岳、塩見岳といった南アルプスの百名山や富士山、八ヶ岳、北アルプス、中央アルプスなど本州中部の主要な山々が一望出来ます。
登山届提出
山梨県側は山梨県警察。電子申請やFAXなどで対応
登山地図のスマホアプリ
山と高原地図のスマホアプリが昭文社から販売されています。月額版:料金月400円、通常版:地域1エリア500円。
北岳の歴史書
古から白根三山を甲斐ヶ根・甲斐峰(かいがね)または、甲斐の白根(白根・白嶺)と言い、北岳は白根山と呼ばれていました。『古今和歌集』巻二十に東歌の中にある次の二首「甲斐(かひ)が嶺(ね)をさやにも見しがけけれなく横ほり臥(ふ)せる小夜(さや)の中山」「かひがねをねこし山こし吹く風を人にもがもやことづてやらむ」が北岳について最も早く詠まれたものとされています。その後、「続後撰集」の蓮生法師、「新千載集」の 大江茂重などにより詠まれた歌が残っています。
そして、「平家物語」にも登場します。一ノ谷合戦に破れて捕えられた平重衡(たいらのしげひら)が梶原景時(かじわらかげとき)に送られて鎌倉へ護送される途中、駿河の手越にさしかかったくだりに、「宇津の山辺の蔦の道、心細くも打越えて、手越を過ぎて行けば、北に遠ざかって雪白き山あり。問えば甲斐の白峰といふ。その時三位の中将落る涙を抑えつつ、惜しからぬ命なれども今日までぞつれなき甲斐の白根をも見つ」。更に、鎌倉時代の紀行である「海道記」にも記述が見られます。
開山の歴史
北岳は、日本第2の高さを誇る高峰にもかかわらず、その立地条件上、余りにも奥深く古から山岳信仰の対象にはなっていなかったようです。前述したように古い書物にも遠くから眺めて詠ったものばかりで、登山をしたというような記述は見つかりません。確実な記録があるのは明治2年(明治4年説もある)、芦安村の行者名取直衛によって登山道が作られ、山頂に甲斐ヶ根神社本宮(奥宮)を祀り、御池の下の中宮、夜叉神峠に前宮(里宮)を建立したとされています。その後、参拝する人が少なく登山道は荒廃していったようです。
明治時代の後期に、日本アルプスの父と讃えられる英国人宣教師ウォルター・ウェストン師が明治35年8月(1902年)と37年に大樺沢から登頂を果しています。明治37年は、陸地測量部の吉村武雄氏が北岳山頂に三等三角点を設置した年でもありました。そして近代登山の幕開けとなりました。
参照;名山の文化史
北岳山頂周辺の気温
山頂気温 | 1月 |
2月 |
3月 |
4月 |
5月 |
6月 |
7月 |
8月 |
9月 |
10月 |
11月 |
12月 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
最高気温 | -10.4 |
-8.9 |
-4.6 |
2.1 |
6.8 |
9.8 |
13.0 |
14.5 |
10.2 |
4.4 |
-1.7 |
-7.4 |
平均気温 | -16.1 |
-15.0 |
-11.2 |
-5.0 |
0.4 |
4.2 |
7.7 |
8.4 |
4.5 |
-1.9 |
-8.3 |
-13.4 |
最低気温 | -21.8 |
-21.1 |
-17.3 |
-11.9 |
-5.5 |
-0.5 |
3.5 |
4.0 |
0.0 |
-7.3 |
-14.1 |
-18.7 |
北岳へ登るための装備と服装
用具・装備 | 1月 |
2月 |
3月 |
4月 |
5月 |
6月 |
7月 |
8月 |
9月 |
10月 |
11月 |
12月 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ツェルト | × |
× |
× |
× |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
× |
× | ストック | △ |
△ |
△ |
△ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
△ |
スパッツ | ○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
△ |
△ |
× |
× |
× |
× |
○ |
手袋 | ◎ |
◎ |
◎ |
◎ |
◎ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
◎ |
◎ |
サングラス | ◎ |
◎ |
◎ |
◎ |
◎ |
△ |
△ |
△ |
○ |
○ |
○ |
◎ |
軽アイゼン | × |
× |
× |
× |
× |
× |
○ |
× |
× |
× |
× |
○ |
12本歯アイゼン | ◎ |
◎ |
◎ |
◎ |
◎ |
◎ |
○ |
× |
× |
× |
× |
◎ |
ピッケル | ◎ |
◎ |
◎ |
◎ |
○ |
○ |
△ |
× |
× |
× |
△ |
◎ |
テント | ◎ |
◎ |
◎ |
◎ |
◎ |
◎ |
× |
× |
× |
× |
◎ |
◎ |
ヘルメット | ○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
△ |
× |
× |
× |
× |
× |
○ |
装備 | チェック | ワンポイントアドバイス |
ストック | □ | 折り畳み式を購入すること。持ち手がTの字のタイプが最もお薦め。特に、下山時に使うと膝への負担が軽減されます。 |
アイゼン | □ | 大樺沢の雪渓は、7月中旬でも12本歯のアイゼンを必要とする年があります。 |
ピッケル | □ | 12本歯のアイゼンを使用する時に併用すると更に安全は高まります。 |
手袋 | □ | 八本歯ノコルの登攀に三点支持で登る時に使います。革製の手袋がベストですが、軍手でもOKです。 |
サングラス・ゴーグル | □ | 高山では紫外線が強いので目を守るためにあると快適です。特に雪のある時期には照り返しが強く、目を痛めます。 |
ツェルト | □ | 簡易テント:道間違いや怪我などによる遭難時、ツェルトに身を包んで救助隊が来るまで寒さをしのぎます。やや重たくなるの難点ですが、持っていれば安心です。 |
服装・装備 | ギア |
チェック |
---|---|---|
◎ |
登山地図 登山地図は必帯です。昭文社の山と高原地図があすすめです。 |
□ |
◎ |
登山靴 長時間歩くため軽量で、靴底が比較的硬いゴムで出来た滑りにくい材質のものを選択すること。 |
□ |
◎ |
上着(シャツ) ポリエステル等の吸汗速乾性素材(ダクロンQDなど)の新素材のもの。綿はなかなか乾か無いため不可。 |
□ |
◎ |
ズボン 速乾性で伸縮性のある化繊、ウールまたは両者混紡の長ズボンかニッカーズボン。ジーパンは伸縮性が不足することと、なかなか乾か無いため不可。 |
□ |
◎ |
アンダーウェア 撥水性があり、速乾性のものでダクロンQDなど保温性のあるもの。綿はなかなか乾か無いため不可。 |
□ |
◎ |
靴下 厚手の靴下。 | □ |
◎ |
レインウェア セパレートタイプの通気性と防水性を兼ね備えたゴアテックスがベストです。防寒着としても使えます。 |
□ |
◎ |
帽子 大樺沢二俣で森林限界を超えます。日よけ用のつばが広く軽く、収納する時に丸めて小さく出来るものをお奨めします。寒さが厳しい春先や秋の終わりには、耳を覆うニット製。冬山ではフルフェイスタイプをお奨めします。 |
□ |
◎ |
防寒着 薄手のフリース,セーター、軽いダウンジャケット。日本第2の標高を誇る北岳では、7〜8月でも最低気温が3度ほどに下がることがあります。軽くて保温性の高いものを選びます。防寒着を着てもまだ寒い時にはゴアテックスのレインウェアをその上に着ると保温性が高まります。 |
□ |
◎ |
日焼け止め 森林限界を超えると平地よりも更に強く直接日光が降り注ぐため、紫外線量が増します。手や首の裏などにも忘れずに付けてください。 |
□ |
○ |
耳栓 山頂近くの山小屋(北岳山荘/北岳肩の小屋)では大部屋です。混雑時には1部屋に数十人が就寝します。中にはいびきをかく人が必ずいます。耳栓の効果は絶大です。 |
□ |
◎ |
飲料水 例)広河原から北岳ピストン 体重60キロの人の場合:約5リットル必要です。 途中に水場もありますが、北岳山荘では宿泊者には無料で提供しています。北岳肩の小屋では有料です。 |
□ |
○ |
カメラ 北岳への登山は、最短でも一泊2日が必要です。そのため荷物が多くなります。出来るだけ軽いタイプの一眼レフカメラが向いています。ウエストポーチに収納出来る大きさであることが望ましいです。 |
□ |
○ |
ティッシュペーパー/ポケットティッシュ 登山中いきなりもよおした場合など、万が一の時のために必帯です。就寝時、ポケットティッシュを水で濡らし耳栓として使うのも一法です。 |
□ |
◎ |
救急薬品 「靴擦れ」にはキズパワーパッドが有効です。擦り傷などに絆創膏、虫刺され薬品、トクホンのような筋肉痛に効く貼り薬。 |
□ |
○ |
ビニール袋 荷物を分別して収納するのに便利です。例)「ごみ入れ」、「使用前の下着や上着」、「使用後の下着や上着」など用に7〜8個あると便利です。 |
□ |
◎ |
保険証(コピー) 事故や遭難時に必要です。 |
□ |
○ |
ヘッドランプ 北岳山頂で御来光を迎える登山者には必要です。 |
□ |
◎ |
バックパック 一泊2日の二食付山小屋泊での登山が可能なのでザックの大きさは30〜40L。 |
□ |
◎ |
パックカバー ザックが濡れないようにするためのザックカバーは雨に日には絶対必要です。ザックカバーも雨衣と同様に防水性が衰えてきます。時折、防水スプレーをするなどのメンテナンスが必要です。 |
□ |
◎ |
行動食 パン・ナッツ類・野菜ジュース、飲むヨーグルトなど立ち休憩で食べられるもの。山小屋の食事では新鮮な野菜が不足しがちです。コンビニでサラダなどを多めに購入して持って行くことをお薦めします。 |
□ |
○ |
シュラフカバー 遭難時に潜り込んだり、混雑時の北岳山荘や北岳肩の小屋(一つの布団に2人以上詰め込まれることがあります。)で役に立ちます。毛布2枚を床に敷きゴアテックス製のシュラフカバーに入ります。 |
□ |
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